感染対策の基礎知識

介護施設の感染リスク

近年、介護施設の施設数、および定員数も、全国的に増加傾向にあります。
また、介護施設でも感染リスクのあるご利用者様の介護を担うケースが増えています。これは高齢化による国の医療費増加に伴って、医療的処置を要する方が急性期病院だけでなく、療養病床や介護施設、在宅へと移行しているためです。
 
抵抗力の弱いご高齢者は感染のリスクが高く、病院や介護施設におけるインフルエンザノロウイルスの集団感染の例も後を絶ちません。ご利用者様に安心で快適な生活送っていただくために、徹底した感染対策が求められます。

老人ホームの施設数・定員の年次推移(有料老人ホーム含む)

有料老人ホームを含む老人ホームの施設数・定員の年次推移のグラフ。平成20年度から28年度にかけて施設数、定員ともに年々増加していることがわかる。

有料老人ホームを含む老人ホームの施設数・定員の年次推移のグラフ。平成20年度から28年度にかけて施設数、定員ともに年々増加していることがわかる。

有料老人ホームを含む老人ホームの施設数・定員の年次推移のグラフ。平成20年度から28年度にかけて施設数、定員ともに年々増加していることがわかる。

参考資料
厚生労働省 平成28年度 福祉行政報告例の概況、平成24年度 福祉行政報告例の概況
厚生労働省 平成22年 社会福祉施設等調査、平成28年 社会福祉施設等調査

感染経路と標準予防策(スタンダード・プリコーション)

介護施設の感染対策では、日常的に標準予防策を実施し感染経路を遮断することが重要です。
インフルエンザやノロウイルスが発生するのは、施設の外部から持ち込まれるケースが多いといわれています。
感染症に対する予防としては、「感染源の排除」「感染経路の遮断」「宿主(感染を受ける人)の抵抗力の向上」が挙げられますが、ここでは「感染経路の遮断」に着目してみましょう。

主な感染経路と原因微生物

感染経路

特徴

主な原因微生物

接触感染
(経口感染含む)

手指・食品・器具を介して伝播する頻度の高い伝播経路である。

ノロウイルス
腸管出血性大腸菌
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
(MRSA)
緑膿菌 など


飛沫感染

咳・くしゃみ・会話などで、飛沫粒子(5μm以上)により伝播する。
1m以内に床に落下し、空中を浮遊し続けることはない。

インフルエンザウイルス
ムンプスウイルス
風しんウイルス
レジオネラ属菌 など


空気感染

咳・くしゃみなどで、飛沫粒子(5μm以下)により伝播する。
空中に浮遊し、空気の流れにより飛散する。

結核菌
麻しんウイルス
水痘ウイルス など


血液媒介感染

病原体に汚染された血液や体液、分泌物が、釘刺し事故等で体内にはいることにより感染する。

B型肺炎ウイルス
C型肺炎ウイルス
ヒト免疫不全ウイルス(HIV) など


感染経路の遮断には、「病原体を持ち込まない・持ち出さない・広げない」――この3つが有効です。その中でも「病原体を持ち込まない」対策を意識しましょう。感染対策の知識を深めるために勉強会や感染対策委員会を設けるなど、組織的な取り組みも必要です。

感染経路の遮断について

■主な感染経路
・空気感染 ・飛沫感染 ・接触感染(経口感染含む) ・血液媒介感染

 感染経路の遮断を表した図。高齢者介護施設内では、職員・入所者間で病原体を持ち出さないこと、設備・物品を通して感染を拡げないこと、また、委託業者や面会者などの外部環境から施設へ病原体を持ち込まないことが表されている。

 感染経路の遮断を表した図。高齢者介護施設内では、職員・入所者間で病原体を持ち出さないこと、設備・物品を通して感染を拡げないこと、また、委託業者や面会者などの外部環境から施設へ病原体を持ち込まないことが表されている。

 感染経路の遮断を表した図。高齢者介護施設内では、職員・入所者間で病原体を持ち出さないこと、設備・物品を通して感染を拡げないこと、また、委託業者や面会者などの外部環境から施設へ病原体を持ち込まないことが表されている。

参考:厚生労働省 高齢者介護施設における感染対策マニュアル

また、感染対策の基本となる方針に標準予防策(スタンダード・プリコーション)があります。

■標準予防策(スタンダード・プリコーション)とは?
標準予防策(スタンダード・プリコーション)とは1996年に米国疾病予防管理センター(CDC)が提唱した感染予防策です。「すべての患者の血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、創傷皮膚、粘膜血液などは、感染の危険性があるものとして取り扱わなければならない」という考え方が基本となっています。CDCは1985年に院内感染対策のガイドラインとしてユニバーサル・プリコーションを発表しましたが、スタンダード・プリコーションはこれを拡大し整理したものです。

標準予防策はもともと院内感染対策として考案されたものですが、介護施設の感染対策にも有効です。
嘔吐物・排泄物、血液、体液、分泌物(喀痰・膿み)などや、これらに触れた手指で取り扱った食品、介護に使用した物品、汚染された環境などが感染源となる可能性があります。
具体的には手指衛生の徹底や個人防護具(手袋、マスク、エプロン・ガウンなど)の着用、環境衛生などが感染対策に有効とされています。


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手指衛生とハンドケアの重要性

介護業務ではご利用者様に直接触れる機会も多いことから、ヒトの手を介して感染を伝播させないためにも、手洗いや手指消毒は標準予防策の中で特に重要とされています。一方で、頻回な手洗い・消毒により手荒れに悩んでいるスタッフ様も多いのではないでしょうか。実は手荒れは感染リスクを高める大きな要因です。
業務改善のヒント「手指衛生とハンドケア」では正しい手指衛生の方法や手荒れのケアについても解説しているので、ぜひご覧ください。

ご利用者様の日常生活を衛生的に保つことの重要性

感染予防のためには、第一に施設内の環境を衛生的に保つことが必要です。不衛生な環境は悪臭やカビが発生するだけでなく、ケア用品などの汚染を招き感染リスクを高めます。抵抗力の弱いご高齢者が集まる介護施設では、ちょっとした油断が思わぬ感染拡大を引き起こす可能性があります。

■施設の環境衛生が不十分な場合に起こる問題
・湿気による真菌(カビ)の発生とそれによる呼吸器疾患の発症
・水回りの汚染による介護用品の汚染

介護施設を衛生的に保つことはご利用者様のQOL向上にもつながります。普段から環境衛生に気を配り、快適な環境を整えましょう。環境整備については次のページ(環境整備の重要性)で詳しくご紹介します。
 
 
花王プロフェッショナル・サービスでは、施設の日常的な清掃や、除菌・洗浄など環境清掃に役立つ商品を多数ご用意しております。
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