コラム

2017年10月10日更新

社会福祉法人のガバナンスと理事会、評議員会の役割を考える

社会福祉法人では、従来、理事会のメンバーは非常勤で、理事長の知人や親族で占められていることが多く、適切なガバナンスが行われているとは言い難い状況がありました。しかし今年の4月より、評議員会の設置がすべての法人において義務付けられ、従来の諮問機関という位置づけから、議決機関に格上げされました。今後評議員会の役割はますます重要になってくるでしょう。このことの意味について考えてみたいと思います。

理事長の知人や親族が理事の過半を占めているケースも

前回は社会福祉法人の内部留保の問題について解説しましたが、今回はそれと関連する、社会福祉法人のガバナンスと法人の理事会、評議員会の役割について考えてみましょう。
前回も触れたように、社会福祉法人は高い公益性を有していることから、法人税、固定資産税を免除されています。社会福祉法人の公益性を担保するものの一つがガバナンスです。
 
ここでは社会福祉法人のガバナンスを「社会福祉法人が、適正な法人運営を確保することによって、社会からの役割期待に応えるための統治の仕組み」※1と定義しておきます。実際の法人における意思決定は6人以上の理事によって構成される理事会で行われ、業務の執行は理事が行う※2とされています。株式会社でいえば、理事会は取締役会に相当します。理事長は社長に相当すると考えてよいでしょう。社会福祉法人における理事会、理事長の責任・役割は重大なのです。

理事にはこんなに大きな責任があるのにも関わらず、多くの法人の理事は非常勤の場合が多く、社会福祉の専門家や法人経営に詳しい理事がいるとは限りません。
理事長の知人や親族が理事の過半を占めているケースも多々あります。適切なガバナンスが行われているとは言えない社会福祉法人も残念ながら存在します。
そこで、法人の運営が正しく行われているかチェックするのが評議員会の役割なのです。
 
社会福祉法人制度改革の流れの一環で、今年の4月からすべての社会福祉法人が評議員会を設置することになりました。
従来の評議員会の位置づけは理事会の諮問機関で、地域の住民や福祉関係者の声を法人の運営に反映させる役割を担ってきました。これが社会福祉法の改正により、諮問機関ではなく議決機関となりました。
すべての社会福祉法人に評議員会が設置されることになったのです。

 
評議員会は法人運営の基本ルール体制を決定、理事を選任・解任

評議員会が、従来の諮問機関から議決機関に言わば「格上げ」されたということについて、具体的に見ていきましょう。
法人の運営に関する重要事項の議決機関が評議員会です。
執行機関である理事会から提出された定款変更、決算承認等の議案を、審議し採決しますし、さらに理事と監事の選任・解任を行うのも評議員会の役割です。
 
言い換えると、評議員会は法人運営の基本ルール・体制を決定するとともに、理事等の選任、解任を通じて、事後的に法人運営を監督する役割を果たすのです。
また、評議員会は理事等への「けん制機能」を持つ機関です。評議員の選任、解任は理事会で行うことはできません(別途、評議員選任・解任委員会等を設けて選任されます)。
また、評議員会には、地域の福祉ニーズや福祉サービスを利用する当事者の声を、社会福祉法人の運営に反映させるという役割も期待されています。評議員は、理事の定数を超える数を置くことが必要で、法律上「社会福祉法人の適正な運営に必要な識見を有する者」のうちから選任されることになっています。
ですから評議員には、たとえば住民組織の代表者や民生委員、地区社協役員、NPOやボランティアのリーダーなどを選任することで、社会福祉法人に対して地域のニーズを伝えていくことができるのです。
 
以上、簡単に社会福祉法人のガバナンスと理事会、評議員会の役割について述べてきました。今後、少子高齢化がいっそう進むなかで、非営利である社会福祉法人の役割はますます重要になってくると考えられます。執行機関としての理事会、チェック役としての評議員会の役割も責任重大なのです。
 

  1. ※1
     「社会福祉法人の経営指標~経営状況の分析とガバナンス改善に向けて」(日本公認会計士協会)
  2. ※2
    社会福祉法第39条

*参考資料:
「社会福祉法人のガバナンスについて」(第3回社会福祉法人の在り方等に関する検討会資料)
「社会福祉法人制度の概要と評議員会の役割」(全国社会福祉協議会パンフレット)

監修:株式会社エス・エム・エス

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