2023.07.27
新型コロナウイルス感染症は2023年5月8日から感染症法上「5類感染症」に位置づけられ、感染対策の実施も個人・事業者の自主的な判断と取組が基本となりました。しかし、感染症に罹患するリスク自体が軽減したわけではありません。また新たな未知の感染症が流行する可能性も否定できません。
新型コロナウイルスの流行により根付いた、私たちの衛生意識は容易に消えることはなく、今後、宿泊施設ではそれらを踏まえたサービス提供が求められることになるでしょう。
そこで今回は、世界中のホテルや旅館を取材されているホテルジャーナリスト・せきねきょうこさんに、新型コロナウイルス感染症の流行前後で変化した点なども踏まえ、実際の取材で感じたことをお伺いしました。withコロナの時代に改めて、ホテル運営について考えるきっかけにしていただければと思います。
【PROFILE】せきねきょうこ╱ホテルジャーナリスト
仏国アンジェ・カトリック大学留学後、スイスの山岳リゾート地の観光案内所での勤務中に3年間にわたるホテル暮らしを経験。仏語通訳を経て、94年からホテルジャーナリストとして活動を開始。「環境問題、ホテルマン、癒し(ホテルのスパ)」の3テーマを軸に、世界各国でホテル、リゾート、日本旅館、および関係者へのインタビューや取材を敢行。雑誌や新聞を中心に執筆・連載を持ち、近年はホテルのプロデュース、コンサルタントなど活動の場を広げている。
公式ホームページ http://www.kyokosekine.com/profile/
せきねきょうこ(以下、せきね):新型コロナの感染症が流行して3、4年ほど経過し、5類に分類されるまでは、どのホテルも感染対策には大変気を遣われていました。取材先のホテルではフロントへのパーテーションや手指消毒剤の設置などは当たり前でしたしね。何かが大きく変わったというよりは、緊急事態宣言が出されている時期もあって、ホテルを利用するお客様が少なくガランとした様子に寂しさを覚えました。状況から考えると仕方がないことだとは認識しながらも、ホテルジャーナリストとして、さまざまなホテルの良さ、ホテルライフの楽しさを多くの方に知ってもらいたいという想いがありましたので、当時はとても残念な気持ちが大きかったです。
せきね:自覚症状がなくても感染される方が多いという報道もありましたから、パブリックスペースでの他のお客様との距離感は気になりました。特にチェックイン・チェックアウトの際はレセプションに人が集まりやすいですからね。レストランでも黙食が基本とはいえ、複数人集まれば多少はお喋りされますし、「飛沫は大丈夫かしら?」と不安を覚えることもありました。
私自身としては、自分でできることは自分でと、マスクを2枚重ねにしたり、手洗いやうがいを徹底したりしていました。もしかしたらホテル側での対応もあるかもしれませんが、おかげさまで新型コロナウイルスには感染することなく、取材活動を続けられました。
せきね:一番気になったのが、テレビのリモコンです。直接手で触れるものですから、「リモコンまで対策されているのだろうか?」と気になって。私は持参した除菌用ペーパーで拭いて使用していました。加えて室内に用意されているコップも気になった一つですね。コップは自分でよく洗ってから使っていました。
せきね:これはビジネスホテルのケースですが、客室のドアノブに「抗菌済み」という紙が貼ってあったんです。ドアノブを回すと紙が剥がれる仕組みになっていて、剥がれていないということは誰も触っていない証明になるので、すごく安心できました。
もう一つ、あるリゾートホテルのビュッフェですね。提供を中止されているホテルが多い中「ビュッフェを始めました」というお知らせをいただいたので伺ってみたんです。まず目を引いたのが「テーブルもイスも天井も全て抗菌を施しております」というご案内の表示でした。料理が並んでいるところには使い捨ての手袋が至る所に置かれていて、トングに対しても「消毒済み」という表示をしてくれていたんです。一つ一つは些細なことかもしれませんが、そのような細かな気遣いのおかげで、とても安心してビュッフェを楽しめました。
せきね:そうですね。目に見えない不安、わからない不安というものを、払拭してくれるというか。ホテルがそこまで配慮して提供してくれていることが伝わってくると安心につながるのだと思います。美観の問題があるかもしれませんが、ホテルとしての姿勢をしっかり示すのは必要なことかもしれません。
せきね:ここ3年間は国内での取材でしたが、ようやく昨年(2022年)12月にニューヨークへ出かけられました。そこで感じたのは、国が違えば考え方や意識も大きく違うということですね。感染症へのリスクに対しても自己責任という意識が強いのか、当時私が、宿泊したホテルでは従業員の方の半分ぐらいはマスクを外していました。日本は国全体として慎重なところがあるかもしれませんが、これから訪日される外国の方も多くなるでしょうから、個々の意識の違いへの対応も必要になるのではないでしょうか。これはパブリックなスペースであればどこでも出てくる問題だとはいえ、そのなかでホテルとしての姿勢を示し、お客様にご理解いただくことも重要になってくると思います。
新型コロナウイルスが流行してから、世の中的にも「清潔さ」に関する考え方は変わったのではないかと思います。これまで、髪の毛などの汚れが落ちてないなど美観の面で清潔かそうでないかを見る場面が多かったですが、コロナの流行で目に見えないウイルスの恐怖を痛感しました。コロナが収束し緩和される部分もあるとおもいますが、新たな感染症が流行する可能性もありますし、コロナ禍を経験したからこそできるお客様への対応であったりホテル側の感染症への対策があるのではないかと思います。
せきね:コロナの流行もありましたが、長年取材をしてきた中では、ホテルスタッフがお客様一人ひとりに対して真摯に対応してくれるホテルはまた行きたくなります。私は「幸せ顔」と呼んでいるのですが、ホテルスタッフが優しい笑顔で「歓迎していますよ」という気持ちを持って正面から向き合ってくれたら、安心できますよね。またこうした対応ができるのは、教育体制もしっかりしているのではないかと私は思っています。ホテルを作っていくのはホテルスタッフであり、感染対策も含めどのようなおもてなしをするかは、ホテルの姿勢次第なのではないでしょうか。今後、旅行業界も復活していくでしょうし、これからもホテルジャーナリストとして、ホテルの良さや、ホテルライフの楽しさを多くの方に伝えていきたいと思います。
ご自身で行う感染対策への意識も高く持たれて取材をされていた、せきねさん。パブリックなスペースでは人との距離感、客室では人がよく触れる場所は感染リスクが高いと推察される部分でもありますし、やはり気になるところとして挙げられていました。お客様に心からくつろいでいただける空間づくりとは、またより良いサービスとは、お客様一人ひとりに真摯に向き合うことによる不安感からの解放なのかもしれません。
新型コロナウイルス感染症の流行は、世界的に大きな影響をもたらしました。この時代を経験したからこそ、未来への備えの大切さを痛感したともいえるのではないでしょうか。またいつ、未知の感染症が流行するかもわかりません。施設設備の清潔維持と手洗い・うがいなどの個人の健康管理が施設の衛生管理にいかに大切な要素であるかということを私たちは学びました。宿泊されるお客様、働く従業員の皆様の安全・安心について改めて考える良い機会ではないでしょうか。
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