2023.11.30
近年、耳にする機会が増えてきた「ウェルビーイング」。従業員の心と身体、社会的な幸福感や満足感を高めることで、企業の発展につながるとして、世界的に注目されています。
そもそも、ウェルビーイングとは、どのような状態を指すのでしょうか。抽象的なイメージのある取り組みを実現させるには、詳細を正しく知る必要があります。
本記事では、ウェルビーイングが注目されている理由や背景に加えて、メリットや取り組む方法を詳しく解説します。
【PROFILE】監修者:久木田(くきた) みすづ
福祉系大学で心理学を専攻。精神保健福祉士・社会福祉士。
卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんや、その家族に対するカウンセリング、ソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。
現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。
「ウェルビーイング(well-being)」は、健康、福祉、幸福などを意味します。身体的にだけでなく、精神的にも社会的にも満たされた、多面的な幸せを表す言葉です。
ウェルビーイングが初めて用いられたのは、1946年の世界保健機関(WHO)設立時。世界保健機関憲章前文に、下記の言葉が書かれていました。
「健康とは、完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、單に疾病又は病弱の存在しないことではない。
HEALTH IS A STATE OF COMPLETE PHYSICAL, MENTAL AND SOCIAL WELL-BEING AND NOT MERELY THE ABSENCE OF DISEASE OR INFIRMITY.
到達しうる最高基準の健康を享有することは、人種、宗教、政治的信念又は経済的若しくは社会的条件の差別なしに万人の有する基本的権利の一である。
THE ENJOYMENT OF THE HIGHEST ATTAINABLE STANDARD OF HEALTH IS ONE OF THE FUNDAMENTAL RIGHTS OF EVERY HUMAN BEING WITHOUT DISTINCTION OF RACE, RELIGION, POLITICAL BELIEF, ECONOMIC OR SOCIAL CONDITION. 」
また、日本では厚生労働省より、「ウェル・ビーイング」とは、個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念」と説明されています。
つまりウェルビーイングは、一時的な幸せでなく、持続的な幸せを意味する言葉なのです。
ウェルビーイングは、5つの要素で構成されます。主に2つの理論があり、アメリカの心理学者マーティン・セリグマンが定義した「PERMA(パーマ)理論」と、統計から導き出した「ギャラップ社」の理論に分かれます。それぞれを詳しく見てみましょう。
PERMA理論は、米国ぺンシルベニア大学心理学部教授のマーティン・セリグマン博士により「ポジティブ心理学」で研究されたもので、ウェルビーングを高めるための構成要素を指しています。PERMA理論の5つの要素は下記のように構成されています。
ギャラップ社は、アメリカの世論調査研究所です。「世界幸福度調査」のデータ提供元で知られる会社であり、ウェルビーイングの5つの要素を提唱しています。
ウェルビーイングはなぜ近年注目されるのでしょうか。多くの企業がウェルビーイングを重視する背景について考察します。
人種・年齢・言語・ジェンダー・経歴・役職などにおいて、近年は急速に多様化が求められています。多様なバックグラウンドや価値観を持つ従業員が活躍できるよう、企業は環境を整備する必要があります。従業員の幸福度が高まることで、企業としての成長や革新につながるでしょう。
国内の少子化が加速している現代では、労働人口も減少の一途をたどっており、多くの業種で人材の確保が課題となっています。従業員の幸福度を高めることにより、企業への帰属意識も高まると考えられています。
2019年から実施されている働き方改革により、長時間労働の是正や産業医の機能強化などが推奨されています。それにともない、従業員が柔軟に働けるように、環境を整える動きが進められています。
ウェルビーイングは「SDGs(持続可能な開発目標)」で言及されたことでも関心を集めました。SDGsの17の目標の一つに「GOOD HEALTH AND WELL-BEING(すべての人に健康と福祉を)」とあり、国際的な目標として掲げられています。
新型コロナウイルス感染症が拡大したことによって、ウェルビーイングが注目されるようにもなりました。コロナの流行が深刻な社会問題となった影響で、健康や幸福について考える人が増加しました。テレワークの普及によって同僚とのコミュニケーションが阻害され、メンタルの不調を訴える声も見られました。
そうした流れを受け、健康的な労働環境や、やりがいを感じて働ける環境づくりに関心が寄せられています。
実際に企業がウェルビーイングを実践した場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。4つの視点から得られるメリットを考えてみましょう。
ウェルビーイングの実施により、ワークエンゲージメントの向上が期待できます。ワークエンゲージメントとは、仕事に対してポジティブで充実した心理状態のこと。ワークエンゲージメントが高まることで、仕事の能率も高まり、生産性の向上につながります。
ワークエンゲージメントの高い企業では、組織内でやりがいを持って仕事に取り組む風潮が生まれます。士気の高まりから企業としての魅力もアップし、求職者の増加が見込まれるでしょう。ワークエンゲージメントの高い従業員が人事や広報に携わることで、企業の魅力が広く伝わりやすくなり、同様の意識を持った人材の確保に貢献します。
ウェルビーイングが実現している企業内では、従業員の心身の変化を敏感にキャッチする傾向があります。悩みや不調に早期対応できると、離職を食い止めやすくなるでしょう。人材の定着率が向上し、優秀な人材の流出防止の一助になります。
健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で捉え、戦略的に取り組むことです。ウェルビーイングの意識から健康経営を推進すると、従業員の活力や幸福度が向上し、組織の活性化、ひいては業績向上をもたらします。
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企業がウェルビーイングに取り組む際には、どのような方法があるのでしょうか。ウェルビーイングの取り組み方をご紹介します。
仕事では、円滑なコミュニケーションは欠かせません。良質なコミュニケーションが促進されることで、業務のノウハウが共有され、人間関係の悩みも解消されやすくなり、ウェルビーイングを実現できるでしょう。
コミュニケーションしやすい環境づくりが重要になるため、全従業員が利用できるリフレッシュルームやコミュニケーションツールを設けることをおすすめします。施設やツールだけでなく、上司・部下の垣根を超えて意見を伝えられる空気づくりも必須です。
長時間労働の見直しはもちろんのことですが、多様な働き方に対応できるように勤務形態の種類を増やすことにも取り組みたいものです。状況に応じて出社・テレワークを選択制にしたり、テレワーク時の労働環境を改善したりと、より働きやすい環境づくりが求められます。有給休暇や育児休暇を取得しやすいように制度を見直すことも重要です。
企業がウェルビーイングを実現させるためには、福利厚生を充実させることも注目ポイントです。まずは、現状の福利厚生から、利用率やコストを確認してみましょう。
利用率の低い福利厚生があれば、問題点や課題を探してください。それらを改善につなげることで、福利厚生の充実度が高まります。また、コストの高い福利厚生がある場合は、従業員の満足度と照らし合わせてみましょう。コストに対して効果が見合わなければ廃止を検討するのも一つの手です。
無駄なコストはカットし、よりニーズの高いサポートを充実、または新たに導入などすると、ウェルビーイングの向上に寄与するのではないでしょうか。
従業員がポジティブにやりがいを感じて働くためには、心身の健康が欠かせません。企業として導入したい取り組みの例をご紹介します。
上記のような取り組みを実施することで、健康経営の推進にもつながります。
ウェルビーイングは、身体的、精神的、社会的に満たされた状態を指します。企業が意欲的にウェルビーイングを推進すると、従業員は快適かつ前向きに働きやすくなるでしょう。
従業員一人一人に向けたサポートは、やがて生産性の向上や離職率の低下など企業全体に様々なメリットをもたらします。従業員が働きやすい空間つくりや福利厚生などの制度を整えるなど、ウェルビーイングの実現に向け積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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