2024.06.04
「デイサービス事業にやりがいは感じているけれど、なかなか経営面で安定しない…」このような悩みを抱えている経営者は多いのではないでしょうか。
日本社会の高齢化が進む中で、デイサービスの必要性はますます高まっています。しかし、全事業者が黒字経営というわけではなく、残念ながら厳しい状況に置かれている事業者が多いのが現実です。
本記事では、デイサービスの経営を改善するためのポイントを中心に解説します。課題を整理したうえで改善ポイントを見直すことにより、経営状態は徐々に好転してゆくでしょう。
【PROFILE】監修者:マンベンダ奈穂子
資格:
介護福祉士
介護支援専門員(ケアマネジャー)
福祉住環境コーディネーター1級
福祉用具専門相談員
2005年に信州大学工学部(建築)を卒業。福祉リフォームの現場で建築の経験を積む。小規模多機能型居宅介護サービスで、ケアマネ・介護士として、7年間、介護の経験を積み、訪問サービスを含め、生活介護や身体介護に携る。
デイサービス業界の経営状況は悪化傾向にあります。2022年度の福祉医療機構の調査によると、通所介護施設の49.6%は赤字であることが分かっています。2021年度の赤字事業所割合は46.5%で、3.1%も悪化、約半数近くの事業所が赤字となっています。
デイサービス業界で事業を継続するためには、業界の特長や状況をよく把握したうえで、利用者のニーズや自社の強みを確認し、経営していくことが重要です。
デイサービスを経営するにあたって直面する主な課題としては、以下の3つが挙げられます。
デイサービス業界を含む介護業界では、慢性的に人材が不足しています。公益財団法人 介護労働安定センターの「令和4年度介護労働実態調査」では、介護サービス事業を運営する上での問題点について調査したところ、その理由として「良質な人材の確保が難しい」という回答が51.6%に上っています。
また、約6割以上の介護職員が3年未満で退職することも同調査で分かっており、人材が定着しにくい業界であることも分かりました。
参考:公益財団法人 介護労働安定センター「令和4年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査 結果報告書」
以上の調査結果をふまえると、人材確保が困難な理由については主に以下の3つが考えられます。
介護業界では、人手に余裕がないことから、担当者ごとの業務負担に差があることで不公平に感じたり、多忙な業務によってコミュニケーションを十分に取れず誤解や不信感が生じたりすることがあります。
デイサービスは利用者が自宅から通うタイプの施設であるため、基本的に夜勤手当などが支給されません。厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護老人福祉施設(常勤の者)の平均給与額が348,040円なのに対し、デイサービス(常勤の者)は275,620円となっており、入居タイプの介護老人福祉施設などと比較すると賃金が安くなる傾向にあります。
厚生労働省の「令和4年介護サービス施設・事業所調査の概況」によると、デイサービスの事業所は24,569箇所あり、居宅介護支援事業所、訪問介護に続いて3番目に多いです。そのため、人材が分散しやすい側面があります。
厚生労働省の「令和4年度介護事業経営概況調査結果の概要」によると、デイサービス事業の収支差率は減少しているとのことです。令和2年度決算と令和3年度決算で収支差率を比較すると、コロナ補助金を含んだ場合はマイナス2.8%、コロナ補助金を含まない場合はマイナス2.5%です。
主な原因として挙げられるのは、以下の2つです。
利用者単価の低下には、感染症拡大による利用控えや特例「2区分上位の介護報酬算定」の廃止、加算の算定率の低下などが原因として考えられます。
また、経費率の増加の理由として特に大きいのは、人件費率の増加です。人件費率は、2021年度が68.2.%だったのに対して、2022年度には68.6%と増加しており、黒字事業所と比べて赤字事業所の方が人件費率は高い傾向にあります。
一般的なデイサービスの事業所数は、年々増加の一途をたどっています。事業所数は、2021年度が24,428施設だったのに対して、2022年度は24,569施設と増加しています。各地域の事業所で利用者を奪い合う形となってしまいます。
また、デイサービス事業における競争の難しさとして、差別化をしにくいことが挙げられます。価格で差別化を図れる事業ではないため、サービス内容などを充実させることが重要となるでしょう。
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いままで挙げた課題を解決することが、デイサービス事業の経営改善につながります。解決策として、以下の3つを順番に見ていきましょう。
経営改善には、従業員の労働環境を見直すことが重要です。人材の定着率の高い環境を整えることで、早期離職を防ぎ新人育成のための時間や労力を削減できます。
具体的な施策としては、定期的なスキルアップ研修やキャリアパスの設定、コミュニケーションを促進するためのワークショップの開催などが挙げられます。これらにより、従業員のモチベーションが向上し、人材育成にかかるコスト削減やサービスの安定性が向上するでしょう。
また、産休や育休、介護休暇の制度など、人事制度面で対応を求められるものがあります。それらの制度をしっかり整備するなどして、働きやすい環境を目指すべきです。
働きやすい職場であるというイメージが定着することで、優秀な人材が集まりやすくなるメリットもあります。
介護報酬には、基本報酬に上乗せできる「加算」という項目があります。経営を改善するには、算定条件をしっかりと見直し、加算を取得できるようにすることが大切です。デイサービスで算定できる加算には、以下のようなものがあります。
ただし、加算を取得するには、それに取り組める専門のスキルを持った職員や、人員を確保する必要があります。事業所の体制を整えられれば、取得できる加算はないか確認しましょう。
また、経費についても見直しが必要です。特に人件費に関しては、業務を効率化し適切な人数に整理することはできないか等、見直しを行いましょう。
デイサービスの利益を伸ばすためには、ほかの事業所と異なるサービスを提供し、ブランディングすることも大切です。ほかの事業所にはない独自のサービスが存在すれば、大きなセールスポイントとなり、利用者の増加が期待できます。
施設の設備や機能訓練、レクリエーションなど、アピールできる強みがないか見直しましょう。また、高齢者を受け入れる施設として衛生面で環境が整っていることは大前提ですが、新型コロナウイルス感染症の流行の影響で、感染症に不安をもつ利用者もいらっしゃると想定されます。感染対策の徹底をアピールすることも利用者の安心につながり、差別化ポイントとなる可能性があります。
デイサービスの経営を改善するには、どのようなポイントに着目すればよいかを解説しました。現在、デイサービス業界では人手不足や収益の減少、事業所の増加による競争の激化といった課題に直面しています。
しかし、従業員の待遇改善や加算の取得など、実践可能な施策を積極的に取り入れれば、利益の増加に繋げることができるでしょう。
本記事を参考にして、あなたのデイサービス事業を上手に軌道に乗せていってください。
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