2024.11.11
近年、各業界に特化したe‐ラーニングシステムが登場しています。介護施設向けのe‐ラーニングもさまざまな種類が提供されており、興味があるものの、どのシステムを選ぶべきか判断に迷うこともあるでしょう。
そこで今回は、介護施設向けe‐ラーニングを選ぶ際のポイントなどを紹介します。システムの種類や学べる内容なども紹介しますので、検討材料にしてください。
【PROFILE】監修者:(たけした・こうへい) 竹下 康平
1975年青森県生まれ。
・株式会社ビーブリッド 代表取締役
・一般社団法人 日本ケアテック協会 専務理事/事務局長・一般社団法人 介護離職防止対策促進機構 理事
・公益社団法人 かながわ福祉サービス振興会LIFE 推進委員会 副委員長
・公益財団法人 介護労働安定センター 雇用管理コンサルタント
・内閣府 規制改革推進会議 有識者
プログラマーやSEなどを経て、2007 年より介護事業におけるICT戦略立案・遂行業務に従事。2010年株式会社ビーブリッドを創業。
現在は同社主力事業の介護・福祉事業者向け DX 伴走支援サービス『サービス名:ほむさぽ』を軸に、介護現場でのICT利活用とDX普及促進に幅広く努めている。
行政などが主催する介護・福祉事業者向けDX 関連講演回数は全国トップクラスで、介護ICT関連講演回数(令和3年~5年 166 回)が示すように、介護業界の ICTご意見番として、行政や事業者団体、学校などでの講演活動および多くのメディアへの寄稿などの情報発信を通じ、ケアテックの普及推進中。
また、規制改革推進会議[内閣府]への有識者参加や、規制改革推進室[内閣府]、老健局[厚生労働省]への協力等を図り、国内の介護事業者のDX 推進活動を行う。
■ポリシー
「介護現場の DX 推進支援と現場の負担軽減に寄与し、サスティナブルな介護業界の発展に貢献する」
■著書
『ICT導入から始める介護施設のDX入門ガイド』(第一法規)
『ケアマネジャーのためのICT活用BOOK』(第一法規)
介護施設向けのe‐ラーニングとは、スタッフのさまざまな教育や研修をオンラインで行うシステムです。最近の例では、2024年に義務化された認知症介護基礎研修をe‐ラーニングで受講するケースも見られ、e-ラーニングを利用して、法定研修や新人研修、技術研修なども時間や場所を問わずに実施でき、効率的にスキルアップが図れるようになりました。
e‐ラーニングシステムを導入することで、対面での研修よりも実施負担の軽減や学習効率の向上など、教育担当者、スタッフ双方にさまざまなメリットがあります。
認知症介護基礎研修をはじめ、法定研修の中にはスタッフ全員の受講が必要なものもあり、実施を怠れば行政指導や処分の対象になる恐れがあります。加えて、集合形式で行う場合は全員のシフトを踏まえた日程調整や開催場所の確保など、さまざまな負担が生じます。
しかしe‐ラーニングであれば、スタッフそれぞれに都合の良いタイミングで受講してもらえるので、教育担当者にこうした負担を強いることなく、効率的に研修を実施できます。
対面研修の場合、欠席者にはその回の学習内容が伝えられないので、学ぶべき要素が欠けてしまいます。
e‐ラーニングならスタッフが都合の良い日時を選んで受講できるため、研修内容を網羅できます。聞き逃した箇所や一度では理解できなかった箇所も見返せるため、内容を定着させられるメリットもあります。
対面で研修を行う場合、実施のたびに配布資料の印刷や会場のレンタル・設営、講師のアサイン、スタッフの日程調整などのコストがかかります。
e‐ラーニングシステムを導入すれば、研修のたびに付帯業務が発生するということがなくなります。
介護施設向けe‐ラーニングシステムにはオリジナルコンテンツ型と既製コンテンツ型があり、既製コンテンツ型はさらに網羅タイプと特化タイプに分類できます。
オリジナルコンテンツ型 自施設でオリジナルの学習コンテンツをアップロードするタイプです。施設特有のマニュアルやルールなどを登録することで、既製コンテンツではカバーしきれない部分の教育に役立ちます。 |
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既製コンテンツ型 学習コンテンツがあらかじめ用意されているタイプです。コンテンツを自施設で用意する必要がないため教育担当者の負担が比較的少なく、体系的な学習に役立ちます。 |
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網羅タイプ 高齢者に多い疾患や障害、体の仕組み、食事の注意点など、介護の基礎知識や主要な技術を学べるほか、介護福祉士やケアマネジャーといった資格取得に関するコンテンツで構成されています。 |
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特化タイプ 「感染症」「排泄ケア」「アセスメント」など専門分野に特化した知識・技術を学べます。 |
既製コンテンツもありながらオリジナル教材もアップロードできるといった「ハイブリッド型」もあります。自施設の目的に合わせてタイプを選択するといいでしょう。
いざe‐ラーニングシステムを導入しようとしても、どのような視点で選べばよいか分からない方も多いでしょう。ここでは選ぶ際のポイントを紹介していきます。
研修の目的を | 達成できるまずは「介護技術を標準化したい」「加算要件を満たせる研修を行いたい」など、研修の目的を明確にし、それらの目的を達成できる教材・仕組みが備わっているか確認することが大切です。 |
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コンテンツの | 質が高い感染対策や認知症の方の対応など、専門性と正確性が求められる研修テーマも多くあります。教材が専門家の監修を受けているかを確認するのもポイントです。 |
使いやすさと | コスト「直感的に操作できるか」や、「モバイルデバイスでも活用できるか」ということも重要です。また、技術的なサポートや学習に関する相談ができるかどうかも学習のしやすさに関わります。 さらに、価格が予算に合っているか、コストに見合った価値が提供されているかもポイントとなります。 |
学習の効果測定が | できる学習前後の理解度を確認できる仕組みがあると、スタッフのモチベーション向上につながることはもちろん、教育担当者も研修成果の報告や内容の改善に活かすことができます。 |
学習の負担が | 少ない仕事のスキマ時間に学習できるよう、1コンテンツあたり5~10分で視聴できる設計になっていると理想的です。また、教材の分かりやすさも重要です。教材のサンプルを見ることができるケースも多いため検討の際に確認するとよいでしょう。 また、動画だけでなく、クイズ、シミュレーションなど、学習者が積極的に参加できる要素が含まれていて、外国人スタッフも含めて学びやすいかどうかも重要です。 |
更新性がある | 法定研修の見直しや制度改定に合わせて学習できることも重要です。教材がどのタイミングでアップデートされるのかを確認しましょう。 |
資格試験対策が | できる資格取得の支援に力を入れたい場合は、試験の出題範囲をカバーできているか、過去問題・模擬試験に取り組めるかなどを確認しましょう。 |
学習管理システム | 「LMS」の搭載LMS(Learning Management System)とは、受講状況を把握・管理できる仕組みです。スタッフの学習状況をモニタリングできるので、学習の進み具合に応じた声掛けや、負担が大きくならないような学習量の調整、研修の改善などに役立てることができます。 また、スタッフそれぞれの得意分野や苦手分野をデータとして把握できるため、スタッフごとに適切な研修・学習計画を立てることが可能です。理解度の低い領域をピックアップして復習を促したり、業務内容やポジションの違いに応じた研修プログラムを組んだりすることもできます。 |
e‐ラーニングがスタッフの学習に有効だとしても、導入時のコストがネックになるケースも少なくありません。そうした場合に活用できる助成金・補助金を紹介します。
なお、具体的に助成金・補助金の利用を検討する際は、必ず管轄する団体や所属する自治体の公式ホームページなどで情報を確認してください。
スタッフの職務遂行に関わる専門知識や技術の習得に活用できる助成金で、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成されます(※)。管轄は厚生労働省です。人材開発支援助成金は6つのコースに分かれているため、訓練内容や対象スタッフの雇用形態を踏まえて、自施設に合うものを確認してください。
※e‐ラーニング、通信制による訓練は経費助成のみが対象です。
e‐ラーニング、通信制による訓練の助成額・助成率 (「人材育成支援コース」を活用する場合)
支給対象となる | 訓練経費助成率 | ||
---|---|---|---|
通常分 | 賃金要件・ 要件を 満たす場合(注) |
資格等手当||
(1)人材 | 育成訓練正規雇用 労働者 |
45% (30%) |
+15% (+15%) |
有期契約 労働者等 |
60% | +15% | |
正社員転換 | 70% | +30% | |
(2)認定実習併用 | 職業訓練45% (30%) |
+15% (+15%) |
|
(3)有期 | 実習型 訓練有期契約 労働者等 |
60% | +15% |
正社員転換 | 70% | +30% |
注)訓練修了後に行う訓練受講者に係る賃金改定前後の賃金を比較して5%以上上昇している場合、または、資格等手当の支払を就業規則等に規定した上で、訓練修了後に訓練受講者に対して当該手当を支払い、かつ、当該手当の支払い前後の賃金を比較して3%以上上昇している場合に、助成率等を加算
厚生労働省「従業員の人材育成に「人材開発支援助成金」が活用できます「人材育成支援コース」のご案内」を元に作成
助成の詳しい条件や申請手順、ほかのコースの詳細については厚生労働省「人材開発支援助成金」をご覧ください。
中小企業や小規模事業者の業務効率化・DXなどのために、ITツールの導入を支援する補助金です。管轄は中小企業庁です。IT導入補助金には補助の対象別に5つの枠があり、教育訓練のツールは「通常枠」で支援を受けられます。
補助率・補助額(通常枠)
補助率 | 1/2以内 |
---|---|
補助額 | 1プロセス以上:5万円以上150万円未満 4プロセス以上:150万円以上450万円以下 ※プロセス数の要件により補助額が異なります |
補助金の詳しい情報、プロセスの要件・申請スケジュールについては「サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局ポータルサイト」をご覧ください。
東京都内の中小企業などを対象に、従業員の職業能力の開発・向上を目的とした研修経費の一部を助成しています。公益財団法人東京しごと財団が管轄しています。
助成額
申請企業等の区分 | 助成額 | |
---|---|---|
小規模企業者 | 助成対象経費の3分の2 (上限25,000円/助成対象受講者1人1研修) |
|
中小企業等 | 助成対象経費の2分の1 (上限25,000円/助成対象受講者1人1研修) |
|
非正規雇用労働者受講加算(※) | 助成対象経費の3分の2 (上限25,000円/助成対象受講者1人1研修) |
※非正規雇用労働者が助成対象受講者全体の2割以上の場合に適用
東京しごと財団「令和6年度 事業外スキルアップ助成金募集要項」を元に作成
募集要項や助成の詳しい内容については「公益財団法人東京しごと財団 事業外スキルアップ助成金」のページをご覧ください。
介護施設向けe‐ラーニングは実施負担が少なく、学習効率が高いため、教育担当者とスタッフ双方にメリットのある教育システムです。しかしながら、さまざまなタイプがあるため、自施設の課題や環境に合わなければ、教育投資が無駄になってしまうこともあります。自施設に合ったタイプを選ぶ際には、ぜひこの記事で紹介したポイントを参考にしてみてください。
Kiralia TRAINING(キラリア トレーニング)は、感染対策の研修実施と、研修内容の実践度の計測ができるパッケージです。感染症に関する基礎知識から対策まで幅広いプログラムがあり、スタッフが研修で得た知識を実務で活用しやすいのが特徴です。また、理解度やスキルの向上具合を点数化できるため、スタッフそれぞれに適切な教育プログラムを提供できます。研修はe‐ラーニングで実施するため、スタッフが自分のペースで学習しやすいのがポイントです。e‐ラーニングでお困りの際はお気軽にご相談ください。
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