2023.12.22
仕事とリスクは切っても切れない関係です。そのリスクは業態によって異なり、業種や従業員の作業内容などに合わせて適切な対策を行う必要があります。
特に、近年は新型コロナウイルスやインフルエンザなど感染症対策にセンシティブになっており、お客様が徹底した衛生管理を重視する傾向も見られます。
そこで注目されるのが、リスクアセスメントです。職場における労働災害や健康被害のリスクを調査し、低減を目指す一連の手法です。リスクアセスメントは、企業にとって安全を確保するうえで欠かせない取り組みとなっています。
本記事では、「リスクアセスメント」の効果や進め方について詳しく解説します。
また「Kiralia INFECTION CONTROL(キラリア インフェクション コントロール)」では感染予防プログラムを提供しております。リスクを正しく評価し、感染予防の最適化をトータルサポートいたしますので、リスクアセスメントの取り組み方についてお悩みの方は、ぜひお問い合わせください。
【PROFILE】監修者:涌井 好文
平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。
また、近時はインターネット上でも活発に活動しており、クラウドソーシングサイトやSNSを通した記事執筆や監修を中心に行っている。
リスクアセスメントとは、そもそもどういう意味なのでしょうか。職場で対策するには、その定義を正しく理解する必要があります。まずは、言葉の意味から詳しく見てみましょう。
「リスク」は、危険性や有害性、被害による影響の大きさ、被害が発生する可能性などを表す言葉です。一般的に、よくないことが起こる可能性と、危害・被害の影響の大きさを組み合わせて用いられます。一方、「アセスメント」は、調査、評価、査定を指します。
つまり、リスクアセスメントは、「職場で発生する恐れのある労働災害や事故、感染症などによる従業員の健康被害について、影響や可能性を調査・評価する」という意味を持ちます。
「リスクアセスメント」という言葉が、実際にどのように使われるのかを見てみましょう。例文としては、「リスクアセスメントの結果を受けて、しかるべき対策を講じる」などが挙げられます。
リスクアセスメントは被害の可能性や影響を考えて使われる言葉なので、安全への意識を高めたいときに注意喚起として用いられることが多いでしょう。
リスクアセスメントは、労働安全衛生法第28条の2に「危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づく措置」とあるように、調査や防災などの措置をとることが、努力義務とされています。
具体的にとるべき措置は、後述するように、業態によって異なります。リスクアセスメントの関連資料・教材は厚生労働省のサイトにまとめられているので、詳細はそちらをご参照ください。
近年では、リスクアセスメントの意識を高める動きが強くなっています。厚生労働省はその手順を公表し、労働災害がない安全な環境づくりを推進しています。
従来の労働災害防止対策では、発生した労働災害の原因を追究し、類似する災害が起こらないように再発防止対策を打ち出し、各職場に広めるという流れでした。この方法は、実際に災害が発生した現場では注意喚起になるものの、未発生の環境では見過ごされやすくなります。
技術の進化により、現代ではさまざまな現場で多くの機械設備や化学物質が使われるようになり、それらに起因するリスクが想定されるようになりました。そこで、災害が未発生の現場でも、潜在している危険性や有害性を認知し、的確に安全衛生対策を実施できるように、リスクアセスメントの重要性が高まったのです。
近年では新型コロウイルスの感染拡大も、リスクアセスメントへの意識を高めるきっかけになりました。業務で起こりうる労働災害の対策だけでなく、感染症に関する対策も取り入れるべきだと感じた方も多いのではないでしょうか。従業員が安全を確保して業務を遂行できるよう、幅広い視点からリスクアセスメントに取り組む必要があるといえます。
リスクアセスメントを実施すると、どのような効果が期待できるのでしょうか。ここでは、大きく3つに分けて、それぞれの効果を解説します。
リスクアセスメントによる最大の効果は、職場における労働災害の発生を未然に防ぎ、働く人の安全を確保できることです。平成15年11月に厚生労働省が行った大規模製造事業場に対する自主点検結果においても、リスクアセスメントとそれに基づく低減措置を実施している事業場は、実施していない事業場よりも災害の発生率が相当に低いという結果が得られており、その高い効果が発揮されています。
リスクアセスメントの実施により、従業員の安全に対する意識向上も期待できます。一人一人がリスクアセスメントに取り組むことで、従業員間でも互いに注意喚起を促す傾向が生まれるでしょう。職場内で安全対策を徹底する動きが強まっていくことも、リスクアセスメントの大きな効果です。
職場には想定されるリスクだけでなく、想定できないリスクも潜んでいます。リスクアセスメントの実施により各々の安全意識が高まると、小さなリスクも問題提起しやすい空気が生まれます。
「大丈夫だろう」と見過ごされそうなことも職場全体で共有できるようになると、その対策を幅広い視野で考えやすくなるでしょう。そうした積み重ねによって災害や健康被害の発生リスクが下がり、安全な労働環境が保たれやすくなります。
リスクアセスメントは厚生労働省によって定められた指針に沿って、基本的な手順で行う必要があります。ここでは、主な手順を紹介します。
使用する機器、道具や化学製品、作業行動や環境などの危険性・有害性を特定します。作業者が危険な状態になる恐れがあるものを抽出しますが、作業者のミスによるヒューマンエラーなども加味する必要があります。また作業者だけでなく、周辺にいる他の従業員なども考慮し、広い視野で危険性・有害性を特定しましょう。
特定した危険性・有害性について、一つずつリスクの見積もりを実施します。リスク発生の頻度や可能性、発生した被害による重篤度などが対象です。見積もりに関して職場で判断基準を設け、複数の人間でジャッジすることが大切です。
見積もったリスクに基づき、優先度を設定します。そして、その優先度に沿って、危険性・有害性を減らすための措置を検討します。
リスクの優先度に沿って、リスクの除去や低減措置を実施します。低減措置が計画通りに進まない場合は代替案を出し、職場の関係各所から承認を得る必要があります。
リスクアセスメントは、業種によって指針が異なります。業種別でそれぞれ実施されているリスクアセスメントを見てみましょう。
一般企業では、オフィス内での労働災害が想定されます。例えば、ドア周辺は事故の多いゾーンです。ドアの周辺に人がいることに気づかず、誤って扉をぶつけてしまう事故が目立ちます。
ドアの近辺に人が近づくと反応するセンサーをつけたり、ドアに注意喚起の貼り紙を貼ったりして、リスクに気づきやすくなる対策をとることが望ましいでしょう。
また、オフィスの場合は、人が多く集まることから感染症の流行も懸念されます。新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染が拡大すると、業務への影響も大きくなります。こまめな換気や手洗い、手指消毒などの奨励のような基本的な対策に加えて、テレワークやリモート会議を活用するなどして、感染拡大を未然に防ぎましょう。
ホテルや旅館などの宿泊業は、保険業や金融業といった事務作業を主とする業種よりも労災のリスクが高い業種だと言われています。清掃中や調理中のケガ、厨房でのガス発生による中毒など、従業員が被災リスクを負いやすい環境です。
厨房には火災の発生要因となる備品が多くそろっているため、備品の管理徹底は重要です。また、客室での喫煙も火災を招くため、室内の装飾や備品に難燃性の素材を用いるなどの工夫も重要です。
健康面でも注意が求められます。ホテルや旅館では、宿泊客の荷物やビールケースなど重いものを持ち上げる場面が多く、体に負担が生じやすいです。荷物の正しい運び方に関する指導・研修を行い、安全な方法で実施可能な体制を構築しましょう。
なお、ホテルには国内外から多様な宿泊客が訪れるため、感染症のリスク面でも緊張状態が続いています。従業員一人一人のこまめな感染対策を継続するのが望ましいでしょう。
介護・医療施設は、基本的にリスクの高い環境です。利用者のヒヤリハット事例は多数あり、転倒や転落、誤飲などから重大な事故につながる可能性も考えられます。日々の業務でリスクアセスメントを徹底し、利用者の安全を守る意識が求められます。人と人の距離が近い環境でもあるため、感染症の爆発的な拡大も起こりやすいです。手洗いや消毒など手指衛生の徹底は欠かせません。
なお、職員のケガや健康のリスクも懸念されます。ベッドから車いすへの移乗、入浴介助での無理な姿勢などで腰を痛める人が多いです。腰に負担がかからない介護技術の習得、福祉機器の導入などで、身体的負担を下げる工夫を実施しましょう。
子どもを預かる教育・保育業は、常に危険と隣り合わせと言っても過言ではありません。入念なリスクアセスメントを実施していても、想定の難しい事態が起こるケースも珍しくありません。
例えば、壁に立てかけてあるものが倒れたり、積み上げたものが崩れたりして、子どもがケガをしてしまう可能性があります。壁に立てかけたものは迅速に片付ける、ものは原則積み上げないなど、日頃の生活で危険を意識しておくことが大切です。
感染症のリスクアセスメントを実施するにあたっても、教育・保育の現場は非常に緊張感の高い現場となります。子どもに自主的な衛生管理を望むのは難しく、飛沫が飛び交うことも少なくありません。流行時期は子どもの手洗い・うがいだけでなく、部屋や玩具のこまめな洗浄や消毒など入念な対策も欠かせないでしょう。
感染症のリスクアセスメントは、業種によって危険度やポイントが異なります。実態に合わせたリスクアセスメントを実行しましょう。
リスクアセスメントを実施するにあたり、ツールを利用するとスムーズに実行できます。国内外の研究機関が、さまざまなリスクアセスメント支援ツールを開発しているので、それらを活用するとよいでしょう。
化学物質のリスクアセスメントの支援では、厚生労働省が作成したツールもあります。事業内容によって適切なツールが異なるので、自社の業種に合わせて選びましょう。
リスクアセスメントは、職場に潜む危険性や有害性を見つけ出し、対策するための大切な施策です。災害が発生していない職場が、これからも安全であり続けるために潜在的な危険性や有害性を見つけ出し、一つ一つ対策をとっていくようにしましょう。
特に、現代の欠かせないリスクアセスメントといえば、感染症対策です。先述のように、一般企業のオフィスやホテル・旅館、介護・医療施設、教育・保育業など、業種によってそれぞれ適切な対策も異なります。最適な衛生対策を講じるためにも、プロが考案する解決方法を取り入れるのも有効な手段となるでしょう。
Kiraliaは、キラリアハイジーン株式会社が提供する衛生ソリューションです。すべての事業者の皆さまが最適な衛生対策を実現できるよう、課題の発掘や負荷の少ない解決方法をご提案します。
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