コロナウイルスにはさまざまな種類があり、その多くはヒト以外にも家畜や野生動物などに感染して人獣共通感染症をもたらす病原体です。人獣共通感染症とは、「同一の病原体により、ヒトとヒト以外の脊椎動物の双方が罹患する感染症」と定義されています。コロナウイルスには複数の種類が存在しますが、新型コロナウイルスを含む7種の「ヒトに感染するコロナウイルス」についてそれぞれの特徴を解説します。
引用:
コロナウイルスの種類
「コロナウイルス」の語源はその形に由来します。コロナウイルスの表面には花弁状のスパイク(突起)があり、その形が王冠(crown)に似ていることから、ギリシャ語で王冠を意味するコロナ(corona)という名前が付けられています。
コロナウイルスの構造
ヒトに感染するコロナウイルス
ヒトに感染するコロナウイルスは、風邪の病原体として人類に広く蔓延している4種類と、動物からヒトに感染する重症肺炎ウイルス2種類、加えて2019年に発生した新型コロナウイルスです。
ヒトに日常的に感染するコロナウイルスは以下の4種が存在します。風邪の10〜15%(流行期は35%へ増加)はこれら4種のコロナウイルスを原因としています。
これらは通常の風邪と同じく冬に流行し、ほとんどの子供が6歳になるまでに一度は感染を経験しています。風邪のコロナウイルスは生涯に渡って何度も感染を経験しますが、一般に軽い症状しか引き起こしません。
糖尿病などの慢性疾患がある人や高齢者が感染すると重症化しやすいコロナウイルスとして以下の3種が挙げられます。
3種それぞれの概要、特徴について解説します。
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)は2002年に中国広東省で発生しました。コウモリを宿主としたコロナウイルスがヒトに感染し、重症肺炎を引き起こすようになったと考えられています。感染例の多くは軽症で、死亡した人の多くは高齢者や基礎疾患を持っていた人でした。2003年以降はヒトへの感染は確認されておらず、現在は収束しています。
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)の概要
中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)は2012年にサウジアラビアで発見されました。もともとヒトコブラクダに風邪症状を引き起こすウイルスですが、ヒトに感染すると重症肺炎を引き起こすと考えられています。感染経路は病院内や家庭内における重症者の飛沫です。高齢者や基礎疾患を持つ人に感染した場合にのみ重症化すると考えられ、またヒトからヒトへの感染自体は限定的です。市中における長期の感染拡大の例はないものの、病院内ではスーパースプレッダー(周囲への感染力の高い患者)を介した感染拡大が複数回発生しています。
中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)の概要
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は2019年に中国武漢市で発見され、全世界に感染拡大しました。日本では病名は「新型コロナウイルス感染症」、病原体は「新型コロナウイルス」と呼ばれています。
新型コロナウイルスは、コウモリとセンザンコウを宿主動物とするコロナウイルスの配列に似ていることから、過去に2種類のウイルスが遺伝子組み換えを起こした可能性がありますが、実際に人類にどのように感染するようになったのかは不明です。ヒトからヒトへの伝播は主に会話や咳による飛沫を介して起こり、特に感染拡大が起きやすいのは、密閉・密集・密接の空間です。高齢者や基礎疾患を持った人が重症化しやすいのはこれまでのタイプと同様ですが、20歳から50歳代の人でも高熱や呼吸器症状が見られ、健康な状態でもまれに重症化、死亡する例が報告されています。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の概要
参考資料:
まとめ
コロナウイルスは人獣共通感染症であり、ヒトに感染するコロナウイルスは現在7種確認されています。
ヒトに感染するコロナウイルスのうち、以前流行したSARSやMERSとは伝播性と病原性において明らかに異なった特徴をもつのが、2019年に確認された新型コロナウイルスです。
新型コロナウイルス感染症の流行はまだまだ終息のみえない状況ですが、3回目接種によって感染予防効果を再び高めることができます。ワクチンだけで感染を防ぎ切ることはできませんので、これまで通りの3密の回避などの感染対策を続ける必要があります。
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