まずは、介護施設で気になるニオイの種類と、基本的なニオイ対策を説明します。

全国の特別養護老人ホームを対象に行われたにおい環境に関する調査（※）によれば、80％の施設が気になるニオイの種類として「糞便臭」を挙げていることがわかりました。次いで「体臭（17％）」「尿臭（15％）」と、排泄臭と体臭が気になる介護施設様が多いようです。少ないものの「下排水」も気になるニオイの1つです。

ここでは、多くの方が気になる尿臭と体臭について、ニオイが発生する仕組みを簡単にご紹介します。

尿臭について
そもそも排尿直後の尿はあまりニオわないことをご存じでしょうか。尿臭は、「尿臭原因菌」由来の分解酵素が尿を分解し、フェノール系化合物や窒素系化合物などが生成されることで発生します。時間がたつと尿臭原因菌が増え、分解酵素が活性化するため、ニオイが強くなる前に尿臭原因菌の増殖を抑制する必要があります。

体臭について
「体臭」は、「脂肪酸」や「過酸化脂質」の分泌が年齢とともに増えることで発生しやすくなります。入浴や清拭で体を清潔に保つことで、ある程度ニオイを軽減できます。衣類や寝具に染み付くことを防ぐため、消臭効果のある洗剤を使って小まめに洗濯することも大切です。

前述の調査によると、ニオイが気になる場所として「居室」が45％と最も多いことがわかっています。これは、「要介護度が高く、自力でトイレが利用できる利用者よりはオムツ交換やポータブルトイレなど排泄介助を受けるしかない利用者が多いこと、また加齢臭などの体臭が気になっているため」と考察されています。
そのほかは「トイレ」「おむつ交換・排泄介助関連」などが挙げられました。
 
同調査では厨房・浴室の排水口のニオイに関する言及はありませんでしたが、これらも悪臭が発生しやすい場所です。以下、介護施設においてニオイが気になりやすい場面・場所に応じた効果的な消臭対策をまとめます。

居室のニオイの原因の一つに、寝具やソファ、カーテンなどの布製品に染み付いたニオイが考えられます。空間を漂う尿臭や体臭が布製品に染み付いてしまうのです。これらは容易に洗濯できないため、布製品用の消臭剤を使用することでニオイの発生を抑えます。

使い続けるうちに尿臭が染み付きやすいプラスチック製のポータブルトイレ。ニオイを防ぐには、トイレ用洗剤を使って小まめに清掃することが大切です。消臭効果とともに、汚れの付着を防ぐ効果のある洗剤がおすすめです。また、気付かないうちに床や壁に尿が飛散し、それがニオイの原因となっていることも多いため、周囲の清掃も大切です。トイレ用そうじシートを使用すると、より手軽に清掃が行えます。

おむつを開けたときに気になる尿臭を抑えるには、尿臭原因菌の増殖抑制効果が高いおむつを選ぶのが有効です。尿臭消臭効果のあるおむつを利用することで、ご利用者様とスタッフ様の負担を軽減しましょう。

排水口に食材カスや油汚れが溜まりヌメリが発生すると、そこから嫌なニオイが漂います。排水口に除菌・消臭効果のある台所用漂白剤を吹きかけ、ヌメリを取り除きましょう。

厨房の場合はグリーストラップの中に溜まった油脂分がニオイの原因になるため、グリーストラップの清掃も欠かせません。グリーストラップに溜まった油を吸着してくれるシートを蓋のように浮かべると、嫌なニオイを抑えられる上に掃除の手間を軽減できます。

浴室の排水口のニオイは、排水口に付着した髪の毛や垢、石けんカスなどにカビや雑菌が繁殖したことで発生した「ヌメリ」が原因です。ニオイを防止するには、悪臭の原因を溶かして落とせる排水口・パイプクリーナーの使用が効果的です。

ニオイはスタッフ様だけでなく、ご利用者様のストレスにつながります。サービスの品質を向上させるためにも、あらためてニオイが気になる場所・場面に応じた消臭対策を意識されてはいかがでしょうか。