厚生労働省によると2020年(令和2年)度は887件の食中毒が発生したそうです。2021年にも全国で数百店舗を展開する大手焼肉チェーン店でノロウイルスによる食中毒事故が発生するなど、コロナ禍で気を付けているはずなのに、食中毒は次から次へと発生してしまいます。
では、実際に自店から食中毒が発生してしまった場合、どんなことになるのでしょうか?想像するだけで恐ろしいですよね。
まずは時系列で保健所の立ち入り検査や行政処分がくだされるまでの流れを見てみましょう。
【食中毒の行政指導・処分がくだされるまでの流れ】
もちろん、体調不良のお客様が病院ではなく直接保健所に問合せをするケースや初回診断時に食中毒と診断されるケースもあります。
また、病院に行く前に直接飲食店に体調不良を訴えてくる方もいらっしゃるでしょう。
お客様から直接連絡がある場合は、たいていが「おたくのお店で食べてからひどい下痢をしているんだけど、他の方からもそういう連絡って入っていない?食中毒じゃないかと疑っているんだけど」という内容です。
突然電話がなり、そちらで食べたら食中毒になったかもしれないなどと言われると心中穏やかではありませんが、このような連絡を受けた場合は、しっかりと以下のようなことをヒアリングしておきましょう。
【食中毒かもしれないとお客様から連絡があった際にヒアリングしておくべきこと】
自店が原因で食中毒や体調不良になったことが確定しているわけではありませんが、上記のようなことを丁寧にお聞きしてしっかりとメモをとるようにしましょう。
まだ病院に行かれていない方には、すぐに受診することをおすすめし、もし自店が原因で食中毒が発生していた場合、病院までの交通費や受診費用はこちらが負担することをご説明します。
また、電話が終わったら、すぐに所轄の保健所に食中毒の疑いを持ったお客様から連絡があった旨を報告しておきましょう。保健所の立ち入り検査時に提供を求められることが多いため、もし該当の食材や調理済みの料理がまだ残っている場合は保管しておくことをおすすめします。
では次に、保健所が食中毒発生の疑いがある飲食店に立ち入り検査に来る際の実施項目などについて確認してみましょう。
保健所は立ち入り検査時に主に「拭き取り調査を中心とした施設調査」を行い、平行して「食中毒症状を訴えられたお客様へのヒアリング」を行います。
拭き取り調査を中心とした施設調査とは、実際に店舗で使っている厨房施設や食材、トイレなどの拭き取りを行い、検体を採取することです。また、
などもヒアリングされたり提出を求められたりします。
さらに、
などを聞かれることが多いため、立ち入り検査の事前通知があった場合には、これらのことを先に確認しておくと良いでしょう。
お客様へのヒアリング内容は上記【食中毒かもしれないとお客様から連絡があった際にヒアリングしておくべきこと】とほぼ一緒ですが、さらにおう吐物や排泄物が残っている場合はその検体提供を求められることもあります。
立ち入りによる施設調査結果や、患者を診察した医師の診断結果、患者の発症範囲などの結果から、保健所が食中毒の判断を行います。
食中毒の原因が飲食店にあると推定・決定された場合には、拡大防止や再発防止のためにその状況に応じて食品衛生法に基づく必要な処分又は指導を保健所が行います。
こうなると、行政より食品衛生法第55条に基づく営業停止命令などを受けることとなり、最低でも3日間、長ければ7日間程度の間、お店で営業をすることができなくなります。
食中毒により営業停止命令を受けると、売上が1円も入らなくなるだけでなく、患者さんの医療費、通院交通費、休業損害金、見舞金など、1人あたり3~5万円程度を店舗が負担することとなり、患者数が多い場合には、これらの費用だけで数十万円も現金が出ていくこともあります。
その他行政のWebサイトに掲載されたりするため、お客様からの信用もガタ落ちとなってしまいます。
飲食店にとって食中毒発生は、すべてにおいてマイナスだらけです。
すべてのスタッフに衛生管理の意識をしっかりと持たせ、体調が悪い場合はシフト調整が大変でも思い切って休ませる、普段から生ものなどは口にさせないように指導をする、などを心がけておくことも衛生管理のひとつとして重要なことだと思われます。
ぜひ「こんなはずじゃなかった」となる前にしっかりと対策を行いましょう。
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