2023.10.25
近年、日本企業の多くが人手不足を感じています。すでに人手不足が深刻な業種もあります。何らかの対策を取らなければ、企業の経営に影響を及ぼしてしまうでしょう。
人手不足の問題を解決するには、原因を知って適切な対策を取ることが重要です。本記事では、人手不足の現状や原因と、取り組むべき対策について解説します。人手不足の対策で悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
【PROFILE】監修者:涌井 好文
平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。
また、近時はインターネット上でも活発に活動しており、クラウドソーシングサイトやSNSを通した記事執筆や監修を中心に行っている。
帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)」によると「正社員が不足している」と感じている企業は全体の51.4%を占めています。
例年4月は新卒新入社員が入社する時期のため、人手不足と回答する企業は低下する傾向です。しかし、2023年4月は前年同月比で5.5ポイント増加し、4月としては過去最高の数値となりました。非正社員は30.7%で、4月としては4年ぶりに3割を超えています。
正社員・非正社員の人手不足割合は、正社員が2018年11月に過去最高の53.9%を記録、非正社員は2018年12月に過去最高の34.9%となりました。2020年は新型コロナウイルスの影響で企業活動が制限されたため、人手不足の割合は大幅に減りましたが、その後は再び上昇。2023年5月からは感染症法上の分類が5類へ移行されたことを契機として、国内景気も回復傾向にあり、人手不足が深刻化しています。
企業が人手不足になる原因には次の4つが挙げられます。
日本の人口は2011年以降、減少傾向です。64歳以下の生産年齢人口は減少していますが、75歳以上の高齢者は増加傾向で少子高齢化が進んでいます。少子高齢化は今後も続くと見られているため、ますますの人手不足が心配されます。
採用のミスマッチも人手不足の原因です。採用の時点でミスマッチが生じると、就職した側は「思っていた仕事内容や待遇と違う」となり、企業側は「期待していた人材のイメージとは違う」となります。採用のミスマッチが起こると早期離職につながるため、人手不足を解消できません。
日本は定年まで勤める終身雇用制度が当たり前でしたが、近年は働き方や雇用形態へのニーズが多様化したため、転職は珍しくありません。
一部の企業では人材の流出を防ぐための対策として、働く場所や時間を社員に委ねるなど、多様な働き方に対応できる環境を整備しています。
景気や社会情勢の変化も人手不足をもたらします。コロナ禍では検温や消毒などの作業に人手を割く必要があったため、人手が足りていた職場でも人手不足が生じることがありました。
また、景気回復によって労働力の需要が増すことが人手不足の原因になることもあります。コロナ禍で制限を受けていた行動制限が緩和され、人流が活性化したことによって、現在、宿泊業や飲食業は特に人手不足が深刻です。
人手不足の状況は業種によって異なります。人手不足が特に深刻な業種・業界は次の5つが挙げられます。
医療業界は2020年から感染拡大した新型コロナウイルスの影響で人手不足が深刻化しています。さらに、2025年には団塊の世代が75歳に達するため、必要な介護サービス量が大きく増えると見込まれています。介護のニーズは増えるものの、賃金水準がなかなか上がらないこともあり、人手の大幅な増加は見込めない状況です。
宿泊業の人手不足は、主に低賃金や長時間労働が原因とされています。国税庁によると、令和2年度の民間企業の平均給与は433万円です。一方、宿泊業・飲食サービス業の平均給与は 251万円とされています。
さらに、ホテルや旅館の場合は24時間休みなく営業しているところが多いため、労働時間が長くなりやすい傾向にあります。
飲食業の人手不足は、非正規雇用の労働者が多いことや、過重な労働が主な原因と考えられています。人件費を圧迫しやすい飲食業では、アルバイトやパートの割合が多い傾向にあります。短期で離職する労働者が多いため、人手不足に陥りやすいのです。
また、接客を担当する「ホール」、調理を担当する「キッチン」はどちらも立ち仕事で、体力を消耗しやすい仕事です。体力がないと仕事が続けられないことも、飲食業の人手不足の原因と言えるでしょう。
建設業は需要が拡大しているにもかかわらず、人手不足が深刻です。過酷な作業が多いうえに休日は少なく、労働条件が厳しいイメージがいまだに強いため、若い世代が敬遠しがちです。
建設業は技能労働者の高齢化が進行しているため、新たな担い手の確保が重要な課題となっています。人手不足のまま技能労働者の大量退職を迎えると、大きな労働ギャップが生まれます。
ネットショッピングなどの需要が増えたことで、運送業はこれまで以上に人手が必要になりました。しかしドライバーは減少傾向で、高齢化が進行しています。現状のままでは深刻な人手不足になってしまいます。また、猶予されている時間労働の上限規制が適用となる2024年4月からの対応は、「物流の2024年問題」として業界全体の課題となっています。
人手不足は企業にどのような影響を与えるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
人手不足に陥ると処理できる業務量が減少するため、事業の縮小や倒産を余儀なくされる可能性があります。人員を補充せずに現在の人員のみで業務に取り組めば対応不可能な状況となり、売上機会の損失や品質・サービスの低下を招いてしまうでしょう。従業員の人数に応じた規模への事業縮小はやむを得ません。
また、人手不足では既存事業を拡大したり、新規事業に着手したりするのは困難なため、市場競争で差をつけられ、逆に人材の流出まで懸念されます。 会社が取り組むべき課題に取り組めないため、事業縮小だけでなく倒産のリスクもあります。
人手不足により、少ない人員で多くの業務をこなすことになれば、残業時間の増加、有給休暇を取得できないなど、労働環境が悪化します。業務が多忙で従業員が疲弊すれば、仕事のパフォーマンスが下がり、ミスが増える恐れがあります。ミスが増えるとカバーするためにますます残業が増え、悪循環をもたらしてしまいます。
人手不足により従業員の業務負荷が増えると、多忙すぎて仕事へのやりがいを感じられなくなり、労働意欲の低下につながります。
同僚や先輩が次々に辞めていけば、自分はこのまま会社に残っても大丈夫なのかと不安になる恐れがあります。経験豊富な先輩や上司が退職すると仕事が滞ってしまうこともあるでしょう。労働意欲の低下が離職の連鎖を生み、人手不足がさらに悪化してしまいます。
人手不足の原因がわかったら、解決するための対策を取りましょう。人手不足を解消するために、企業が取り組むべき対策をご紹介します。
離職を防ぎ、新たな人材を獲得するためには、職場環境の改善に取り組むことが大切です。退職理由に多いのが、人間関係に対する不満です。職場の人間関係の不満にはさまざまなものがありますが、無視や仲間はずれなどは大きなストレスとなるため、離職につながります。
「挨拶を欠かさない」「悪口を言わない」など、職場の人間関係が良好になるための取り組みを積極的に取り入れるなどすると職場環境の改善が期待できます。
また、職場環境の見直しも必要です。新型コロナウイルスの感染が拡大してからは、職場の感染症対策が手薄だと不安を感じてしまう人が少なくないでしょう。誰もが安心して働けるよう、職場の感染症対策の徹底など、企業としてのリスク管理を見直すことも職場環境を改善するための重要なポイントです。
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人手不足を解消するために、さまざまな雇用形態での採用を検討しましょう。近年は働き方が多様化しているため、誰もが正社員を希望しているわけではありません。たとえばアルバイトやパートの雇用形態を採用すると、長時間勤務が難しい子育て中の人でも働きやすくなります。
また、採用方法の改善も人手不足の解消に効果的です。せっかく採用した人材の早期退職を防ぐため、近年はリファラル採用が注目されています。
リファラル採用とは、自社の社員に知人や友人を紹介してもらう採用方法です。採用コストを抑えながら効率よく人材を採用できるため、導入する企業が増えています。
リファラル採用は、企業側にも応募する側にもメリットがあります。企業は自社の社員からの紹介のため、スキルや人柄を把握しやすいでしょう。応募する側も、実際にその企業で働いている知人や友人から嘘のない情報を得られるため、入社してから「思っていたのと違う」となることを防げます。
ただし、リファラル採用には選考プロセスがわかりにくいことや、採用された側が辞めにくいことなどのデメリットもあります。公正な選考プロセスを用意したり、選考後のフォロー体制を整えるなど、導入時には、慎重な配慮が必要です。
給与や福利厚生など労働条件を見直しましょう。仕事ぶりを評価して給与に反映しなければ、従業員はより条件がよい企業への転職を考えて離職します。労働条件を見直せば離職率が下がるだけでなく、優秀な人材が集まりやすくなります。
業務プロセスにムダで非効率な業務がないか見直しましょう。現在の業務フローを書き出して可視化し、改善すべき場所や改善方法を決めます。工数や費用がかかりすぎている作業があれば改善するか思い切ってやめましょう。
また、ITツールを積極的に活用して、業務の効率化を図ることも人手不足を解決するための重要なポイントです。業務の自動化を行うことで労働者の作業コストを大幅に削減できるので、業務効率を向上させられます。
多くの企業が人手不足に直面しています。コロナ禍で一時的に人手不足の割合は減少しましたが、感染症法上の分類が5類へ移行されたことを契機として、人手不足は再び深刻な課題となりました。
離職率が高いと新規採用や教育にコストがかかるだけでなく、労働環境の悪化や従業員の労働意欲を低下させる原因になります。従業員の定着率を上げて人手不足を解決するには、職場環境や労働条件、雇用形態などを見直してみましょう。
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