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情報誌 花王ハイジーンソルーション No.23
(2021年7月)


花王ハイジーンソルーションNo23 特集 高齢者のフットケア ~フットケアの必要性とケアのポイント~ 無料ダウンロードはこちらをクリックしてください。フォームにご入力後、ダウンロードができます。

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特集 高齢者のフットケア ~フットケアの必要性とケアのポイント~

済生会川口総合病院
皮膚科
高山 かおる

はじめに

 日本は世界一の少子高齢化社会であり、社会資源を考えても、いかに健康に老年期を過ごすかは重要な課題である。自立して生活するために必要なことの一つに歩行能力の維持がある。健康日本21にも「身体活動・運動は、生活習慣病の予防のほか、社会生活機能の維持及び向上並びに生活の質の向上の観点から重要である」1)と述べられている。生活習慣病とロコモティブシンドロームの予防のために運動はかかせない。しかしコロナ禍となり、高齢者の歩行量や運動量は極端に低下し、介護度の上昇が懸念される2)

1. フットケアの必要性の背景

 日本人の平均年齢は、男性が81.09歳、女性が87.26歳と近年さらに延長している。長生きは誰しもの願いであるが、当然のことながら高齢になれば様々な疾患を併発し、要支援や要介護状態となる。2017年の厚生労働省のデータ3)では65歳以上の高齢者の約18%が要支援・要介護状態にある。介護状態は社会の経済的負担となり、また高齢者自身にとってはなんらか自由な時間を長く過ごすことになる。このような介護負担を減らす目的で健康年齢を延ばすべく様々な方策がとられているが、2016年のデータ4)で平均年齢との差は男性8.84年、女性12.35年もある。要支援に至る理由を調査5)すると、半数近くがロコモティブシンドロームであり、運動器のトラブルが健康年齢を損なう大きな理由になっている。運動器疾患となると一見皮膚科領域には無関係に思えるかもしれないが、足に起こる胼胝や鶏眼、肥厚爪や陥入爪といった問題は下肢機能を低下させ、転倒リスクを増大させるという検証結果6)7)や、高齢者の足には非常に高率に足の皮膚や爪に異常があるという報告8)があり、足の皮膚や爪トラブルの改善は健康年齢延長のために重要である。

2. 高齢者の足の皮膚の特徴

 高齢者の皮膚には多くのトラブルがあるという調査結果の背景には、高齢者特有の皮膚の状態と姿勢が大きく関係している。足底の皮膚は通常の皮膚よりも厚く硬くなるようにできており、毛包構造がなく、汗腺が発達している。高齢になることで、ターンオーバーの周期が長くなり、角質は余計に乾燥するようになる。また他の部位にない特徴として踵部皮膚の変化がある。踵は踵部脂肪体により守られているが、高齢になると脂肪が萎縮し、痛みや褥瘡のリスクとなり、その状態を脂肪褥と呼ぶ。また脈管の加齢変化にともない、足には顕著に症状が出現する。静脈やリンパのうっ滞、動脈の狭窄や閉塞などによる皮膚炎や潰瘍なども注意すべき症状だろう。

3. 胼胝・鶏眼

 頻発する足底に生じる皮膚症状の一つである。胼胝や鶏眼は局所的にかかる過剰な圧力に対して角化がおきた状態である。発生する部位には特徴があり、足の変形にともなうことが多い。外反母趾、開張足、扁平足、ハンマートゥなど足趾の変形や足の変形は年々蓄積していくため、高齢者には足の変形が高率に生じている。さらに関節が拘縮した状態で前傾になった姿勢で足を上げずに歩く特有の歩き方をするため、特に足趾の変形にともなってできる鶏眼や胼胝部には強い圧力がかかり潰瘍化し強い痛みをともなうことがある(図1)。また足趾はお互いに押され「踏まれタコ」と呼ばれる角化性病変を足趾腹側に形成する。

症例写真

図1

84歳、女性。足趾ハンマートゥにともなって生じた鶏眼。足趾の重なりが高度で足趾も拘縮した状態のため鶏眼下潰瘍を繰り返す。

4. 足底角化症

 足底の皮膚はターンオーバーの延長とバリア因子である汗の分泌低下、天然保湿成分の枯渇により、厚く乾燥しやすい状態に陥っている。体重がかかれば亀裂を形成する。亀裂部は末梢循環障害がある患者では、潰瘍化する場合もある。

5. 高齢者に多い足の爪疾患

(A) 肥厚爪

 非常に高率で起きているのは爪白癬である6)。特に遠位側縁爪甲下爪真菌症やすべてのタイプからの進行型である全異栄養性爪真菌症は爪甲の激しい肥厚を起こし、本人や家族の爪切りを困難にしている(図2a)。また爪白癬に間違われやすい疾患として爪甲が鉤型に変形する爪甲鉤彎症がある(図2b)。鉤彎爪は外傷後爪状態に生じることが知られ、ほとんどの場合末節骨の隆起をともない爪甲が前に伸びることができず、生えてきてはリセットされ、基部から新しい爪が伸びてくることを繰り返している。肥厚した爪は靴に当たることや、近位に向かって伸び皮膚に食い込んでびらんを形成するなどして疼痛を生じ、高齢者の歩行に問題を起こす(図2c)。

症例写真

図2a

症例写真

図2b

症例写真

図2c

高齢者にみられた爪の肥厚によるトラブル。図2a.爪白癬。爪を切れずに放置されている。図2b.爪甲は数層重なって鉤型に変形している。靴や2足趾に当たり痛みを生じる。図2c.白癬は陰性の爪甲下角質増殖型の肥厚爪。近位に向かって伸び後爪郭部の皮膚に突き刺さっている。

(B) 巻き爪変形

 ホチキスの針のように角が折れ曲がる場合や、トランペットの先の形のように丸く巻くという強い変形をきたす場合がある。巻き爪のできる機序は足の変形や靴の影響により強く押される場合以外に、筋力が弱り、歩かなくなった高齢者のように足趾を踏み込まない状況が続くと湾曲が強くなると考えられている(図3)。湾曲すると爪床の皮膚を挟み込むことになり、炎症や疼痛を生じたり、湾曲して爪甲に高さが生じた分、靴のトゥボックスの上部に当たりやすくなって疼痛を訴えたりする場合もある。

通常の爪の場合と巻き爪の場合の違いを表す図。この巻き爪は、足趾が浮き上がり地面から押される力も応力も生じず、巻き上がっている。

図3

トランペット(廃用)型巻き爪。爪甲はそもそも軽度の弯曲を呈しており、地面から押される力(黒↑)に応じて進展し(上グレ-⇔)、地面を押すための応力が生じる(青↓)(左イラスト)。
ところが、足趾が浮き上がり地面から押される力も応力も生じないと、爪甲は足趾の上方で巻き上がる

(右イラスト、写真)。

6. 治療・ケアのこつ

 フットケアの基本は、角質増殖や角化の改善、爪は厚みや形をなるべく正常に近づけるように整えることである。爪は切る前に爪甲周囲にたまった余分な角質を爪用のゾンデを使って取り除き、皮膚と爪をしっかり分けてから切るのが基本である。セルフケアも重要で、さまざまな指導箋を使い洗い方や爪切りの方法、保湿の必要性について指導している。靴や靴下の指導も大切であり、そのポイントを図に示す(図4)。
冒頭にも述べたが高齢者の足や皮膚にはトラブルが多く、本人や家族が爪を切れず放置されていることが多い。この問題が要介護状態を増やしている可能性は十分にあり、介護士、看護師を巻き込んで介入していく必要がある。

靴の選択ポイントのイラスト。靴紐・ベルトにより甲が締まる。疼痛部に縫い目がない。トゥボックスの高さが十分にある。つま先に余裕がある。トゥスプリングがある。足趾屈曲部位があっている。クッション性があり滑りにくい。踵の形があっている。カウンターが入っている。

図4

靴の選択ポイント。筋力の少ない高齢者にはストレッチレザーや軽めの合皮や布の靴など勧めることが多い。

1) 厚生労働省ホームページ:健康日本21(第二次)
2)国立研究開発法人長寿医療研究センター:高齢者の感染予防と身体活動
3)厚生労働省ホームページ:平成29年度 介護保険事業状況報告(年報)のポイント
4)内閣府ホームページ:平成30年版高齢社会白書
5)厚生労働省ホームページ:2019年 国民生活基礎調査の概況
6)山下和彦、野本洋平、梅沢敦ほか:高齢者の足部・足爪異常による転倒への影響.電気学会論文誌.124(10):2057-2063,2004.
7)Imai A, Takayama K, Satoh T, Katoh T, Yokozeki H: Ingrown nails and pachyonychia of the great toes impair lower limb functions:  
    improvement of limb dysfunction by medical foot care. Int J Dermatol. 50(2):215-20,2011.
8)小笠原祐子、高山かおる、佐手達男:高齢者のセルフケアにおけるフットケアの実態.日本フットケア会誌.11(2):77-82,2013.
9)小笠原弓恵:白癬の頻度と患者意識.日本医真菌学会雑誌.44(4):253-2, 2003. 

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