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「オレイン酸洗浄技術」と「コスト削減の可能性」に期待
EX-CAREコンパクト導入による効果

花王プロフェッショナル・サービスは2019年9月7日、大阪府大阪市にて「手指健康セミナー」を開催。同セミナーでは、男山病院で看護部長、感染管理認定看護師として従事されている大西尚子氏をお招きし、手指衛生と手荒れ対策に関する取り組みについてご講演いただきました。
 
本記事では、同施設が実施している手指衛生遵守の取り組みと手荒れ対策、さらにその一環として取り組まれたEX-CAREコンパクト導入の背景や、導入後の効果をご紹介します。

講演者プロフィール/大西尚子(おおにし・しょうこ)氏
男山病院 看護部 看護部長/感染管理認定看護師

1983年、関西医科大学附属病院に入職。その後、社会医療法人美杉会 佐藤病院を経て、2006年に感染管理認定看護師資格を取得。2013年に男山病院に異動し、現在は看護部長、感染管理認定看護師として勤務している。

「日常業務にどう盛り込むか」を意識した手指衛生の取り組み

男山病院のICT(Infection Control Team)は、医師、看護師、薬剤師、検査技師、さらに事務系のスタッフ様でメンバーが構成されており、感染対策を主導しているそうです。感染管理認定看護師の大西氏が中心となり、感染管理委員会や定期的な勉強会を開催し、スタッフ様の意識向上を図っているといいます。
 
当然ながら、感染対策の一環として手指衛生遵守にも重点が置かれており、以下のような取り組みが実施されています。

【手指衛生に関する取り組み】

  • 年2回開催している院内勉強会での啓発
  • 毎月開催しているミニ勉強会での啓発
  • リンクスタッフ研修会での啓発
  • 毎月発行している「ICTレター」内で、アルコール消毒剤の使用量をフィードバック
  • 感染管理委員会で「1患者あたり」「1職員あたり」のアルコール消毒剤の使用量を毎月報告
  • 毎年「手洗いキャンペーン」を実施し、職員の名札に貼る「手洗いシール」を発行
  • 毎週行っているICTラウンドでの観察とフィードバック

ICTラウンドでは、標準予防策や手洗いに関するさまざまな項目について、リンクスタッフ様が各スタッフ様の観察と評価を行っているそうです。同施設ではこれを「ICTパトロール」と呼んでおり、その評価の結果は感染管理委員会で報告される仕組みになっているといいます。

【ICTパトロールで使用する記録用紙】

ICTパトロール記録用紙の画像

評価を記録するためだけでなく、手指洗浄剤と手指消毒剤の使用手順の違いを把握できるように項目が作られている。

「手指衛生が感染対策の要であることは言わずと知れています。大事なのは、それを日常業務にどう盛り込むかです。当院では教育委員と連携しながら各種マニュアルの追加や改訂を行っていますが、どのタイミングで、何を使って手指衛生をするのか、という情報を盛り込むよう意識しています。」(大西氏)

スタッフの手荒れ状況に応じ、適切な物品を選択できるフローを整備

手指衛生に対するスタッフ様の意識を高める取り組みのほか、同施設では、アルコール消毒剤の1患者あたり使用量の月間目標が設定されています。結果が思わしくない月もあるそうですが、スタッフ様が「うっかり忘れていた」「そもそも必要性を知らなかった」といったことが原因である場合について、大西氏は「啓発・教育・監視などによって徐々に遵守率は上がっていく」と話しました。

「しかし、手荒れが原因である場合、教育や啓発で解決することは決してありません。アルコールがしみるスタッフに『アルコールを使いなさい』と指導しても、使うわけがないのです。ハンドソープの見直しを行ったり、手袋を選択制にしたりする対応が必要です。」(大西氏)

手指衛生に関する取り組みを行う一方で発生する手荒れの問題について、同施設では以下の対策が講じられています。

【手荒れ対策】

  • 新入職者オリエンテーション、院内研修会、リンクスタッフ研修会での啓発
  • ハンドケア(クリームやペーパータオルの使用方法など)に関する啓発
  • 薬剤師によるアドバイス(完治まで軟膏治療を継続するように)
  • 職員が手荒れを自覚した際の対応フローの構築と実践
    ①手荒れを自覚したらリンクスタッフへ報告
    ②リンクスタッフがICTへ報告
    ③部署長からの皮膚科受診の指示
    ④皮膚科の診断により手指消毒剤や手袋を変更

なお、上記フロー④に関して、同施設では以下の物品が導入されています。スタッフ様の手指の状況に応じて、物品が選択できるようになっています。

【手荒れ対策として導入している物品】

▼手指消毒剤

  • 下記3種類を導入
    ①通常のもの
    ②メーカーの違うもの
    ③アルコールを含有しないもの

▼手袋

  • 下記3種類を導入
    ①プラスチック製
    ②ニトリル製
    ③メーカーの違うニトリル製

※手指洗浄剤とハンドクリームは統一した製品を導入

「オレイン酸洗浄技術」と「コスト削減の可能性」に期待し、EX-CAREコンパクトの試用を開始

現在は手荒れ対策の一環として同施設に導入されているEX-CAREコンパクト泡ハンドウォッシュ(以下、EX-CAREコンパクト)ですが、大西氏は当初、「ハンドソープを変えなければならないという意識はなかった」といいます。同製品に興味を持ったきっかけは、ある研究会で紹介されたオレイン酸洗浄技術(荒れやすい手肌でもしっかり洗うための技術)の話だったそうです。

EX-CAREコンパクトにオレイン酸が含まれていること、そして、1プッシュ(0.3mL)の泡量でもしっかり手洗いができることから、大西氏は「手荒れ対策をしつつ、コストも抑えられるのではないか」と期待し、施設内での試用を行うことにしたといいます。

【試用開始の決め手となったEX-CAREコンパクトの特徴】

  • うるおい成分セラミドを守りながら洗える
  • 落としにくい複合汚れ(※1)もしっかり落とす
  • 従来(※2)の3分の1の泡量でしっかり手洗いできる

※1 手肌に存在し、タンパク質・多糖・核酸からなる、落としにくい汚れ
※2 1プッシュ1mLポンプ品

スタッフの良好な反応を受けて導入を決定 「シンクの汚れが減った」という声も

EX-CAREコンパクトの試用後、大西氏がスタッフの方々に聞き取り調査を行ったところ、以下の意見が寄せられたといいます。この結果により、同施設でEX-CAREコンパクトを導入することを決めたそうです。

【スタッフ様の感想】

  • 洗浄後のツッパリ感がない
  • 手荒れしていても洗えた
  • 泡切れが良い
  • シンクの汚れが減った

上記のうち、「シンクの汚れが減った」という感想は看護補助者の方から出たものだといいます。この感想が寄せられた背景には、当時の手指洗浄剤ではシンクが白くなりやすく、1~2時間に1回は看護補助者の方が清掃を行っているという状況がありました。

シンクが汚れていると、水辺を好むグラム陰性菌が問題となります。SPACE(※)に代表されるグラム陰性菌は、健康な方の感染症を引き起こすことはまれですが、患者様にとっては危険な菌です。手洗い時の水はねにSPACEが乗って再汚染することも考えられることから、大西氏は「シンクは常にきれいな状態にしておくのが良い」と話しました。

シンクが白くなるのは、手指洗浄剤に含まれるある種の界面活性剤が「スカム」という白色の結晶を生成するためですが、EX-CAREコンパクトはスカムを生成しにくいオレイン酸を使用しています。EX-CAREコンパクトを使用することで「シンクなどの設備環境を汚染させづらくなるのではないか」という期待を持ったことも、EX-CAREコンパクトを導入する理由となったようです。
 
※SPACE:Serratia(セラチア)、Pseudomonas(緑膿菌)、Acinetobacter(アシネトバクター)、Citrobacter(サイトロバクター)、Enterobacter(エンテロバクター)の頭文字を取ったもの。

EX-CAREコンパクト導入後、コスト削減を実現

EX-CAREコンパクトの導入後、コスト面について検証を行ったところ、それまでと比較し1回の使用あたり20%の削減ができたそうです。また、払い出し本数についても導入前より減少したといいます。

「ボトル交換にかかる手間と人件費の削減、それから廃棄物の削減にもつながったのではないかと感じています。規模の大きい病院や施設、あるいは手指洗浄剤を多く使う施設は、小さなコスト削減でも皆で継続していくことで、将来的に大きなコスト削減につなげられるのではないでしょうか。」(大西氏)

使用量に関するコスト削減だけでなく、シンクの清掃回数が減ったことによる手間の削減も、EX-CAREコンパクトの導入により得たメリットとなったようです。

今後は患者様の手洗いの向上にも期待

EX-CAREコンパクトを導入してから、同施設では手荒れを訴えるスタッフ様が増えていないといいます。導入時、手袋や手指消毒剤の変更を同時に行ってはいないため、大西氏は「EX-CAREコンパクトの直接的な効果ではないか」と話しました。

「EX-CAREコンパクトの導入後、患者様から『この病院の石けん、ほんまにいいやつ使ってはんね』という言葉をいただくことがありました。こうした感想をいただけたことから、今後は職員だけでなく、患者さんの手洗いも伸びていくのではないかと期待しています。」(大西氏)

セミナー当日は「手洗い体験コーナー」のブースも。

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