実践事例
病院名:社会福祉法人 同愛記念病院財団 同愛記念病院
お話いただいた方:福山久恵(ふくやま・ひさえ)氏
社会福祉法人 同愛記念病院財団 同愛記念病院 看護部/感染管理認定看護師
2006年に同愛記念病院に入職。2011年に感染管理認定看護師を取得し、2012年より同施設にて専従看護師として勤務している。
本記事は2019年7月20日、東京都中央区にて開催された「手指健康セミナー」での講演を取材したものです。
同愛記念病院では、これまで手指衛生に関するさまざまな取り組みが行われてきました。福山氏が感染管理認定看護師を取得した2012年頃は、水道にボトルが取り付けられているタイプの手指洗浄剤が使用されていました。液の詰め替えは清掃業者が行っていたそうですが、ただ継ぎ足しをするだけで不衛生な状態だったといいます(以下の写真)。そのため、黒カビが生えたりして明らかに不衛生な状態でした。
継ぎ足し石鹸
また当時は、ある病棟のスタッフ様たちが「備え付けの石けんでは手が荒れる」と、個人持ちの詰め替え用の手指洗浄剤を大量に持ち込んでいた時期でもあったそうです。どうしても手が荒れてしまう人だけ届出制で個人持ちを許可したといいますが、しばらくは5、6名の方が持ち込む状況が続いたとのこと。福山氏は「取り組みの検討はここから始まっている」と話しました。
2012年とある病棟で
同施設では現在、手指衛生のベストプラクティスが手洗い場に掲示されています。CDCガイドラインが推奨する手順のとおり、「水で濡らし、石けんを泡立て、30秒洗う」というものです。しかし、以前はこれを守ってくれるスタッフ様が多くなかったといいます。
「だいたいの職員が5~10秒程度しか洗っていないという状況でした。ひどいケースだと『石けんの泡を手に乗せて終わり』というスタッフも。ゴシゴシ洗う必要はないのですが、きちんと30秒、正しい手順で洗ってもらうにはどうすべきかを考え、石けんの見直しを検討することになりました。」(福山氏)
それまで使用していたのは1プッシュで1ccの泡が出る手指洗浄剤で、同施設では2プッシュで洗浄するよう推奨していたといいます。しかし、大きな泡がスタッフ様を「洗った気」にさせ、擦らず洗い流してしまう状況を作っていました。
そこで検討対象となったのがEX-CAREコンパクトでした。選定の理由は「泡の量が0.3ccと少なく、擦らないと泡立たないため、きちんと泡立てながら洗ってもらえるのでは」というもの。また、試算で経費削減につながることが分かったのも選定理由の一つだったといいます。その後サンプリングを経て、2015年8月、EX-CAREコンパクトが採用されることとなりました。
適切な手洗いとコスト削減を期待して採用したEX-CAREコンパクトでしたが、導入から間もなく、試算結果とは異なり「払い出し量が減っていない」という問題が生じました。製品の説明会も行ったそうですが、スタッフ様には浸透していなかったといいます。
「それまで使用していた製品に慣れてしまって、小さい泡では洗えた気がしないというのが原因でした。リンクナースに聞いても『みんな3~4プッシュしている』とのことだったので、ポスターを作成して掲示したり直接呼びかけたりして再度啓発を行いました。」(福山氏)
師長会とリンクナースの協力で行った啓発により、徐々に払い出し量は落ち着いてきたといいます。
石けんの払い出し量
同施設では手指洗浄剤だけでなく、手荒れ予防策としてハンドクリームの導入も行っており、2016年には保湿と保護が行えるクリーム2種を新たに採用。それまでは保湿のみを行うクリームを使用していたそうですが、それと同じように使うとコストが増えるため、ポスターを作成して始業前と業務中の1日2回、使用するよう促しています。
使用方法を掲示
ただし業務中にはケアができないケースもあるため、お昼の前や業務終了後のケアも認めているそうです。また、スキンケアの方法を示した以下のような資料をスタッフ様に配布しているといいます。
さらに、同施設では加硫促進剤フリーのニトリルグローブも導入しています。加硫促進剤を含む手袋を使用すると1割程度の人がⅣ型アレルギーを起こし、アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎などに罹患するおそれがあるためです。導入当初は使用量がさほど多くなかったようですが、少しずつ増えているとのこと。福山氏は「全面切り替えができたら」と話しました。
手指消毒の徹底も、同施設が取り組む手指衛生遵守の取り組みです。WHOは手指衛生を行う5つのタイミングを推奨していますが、同施設はこれに加え、「手袋を脱いだあと」と「パソコンの使用前後」を手指消毒のタイミングと定めています。
また、擦式消毒剤の使用手順をスタッフ様に示し、消毒剤をよく擦り込んで揮発してから作業に戻るようにしているそうです。
「かつては液体の消毒剤を使用していましたが、『なかなか乾かない』という現場の声や、しっかりプッシュしてくれないという問題があったため、現在はジェル状に変更し、さらに手荒れ対策として泡状の消毒剤も導入しています。」(福山氏)
以前はほとんどアルコール製剤が使用されていなかったといいますが、各部署の管理者やリンクナースの協力により遵守率が伸びたそうです。個人持ちも浸透し、リールタイプの消毒剤を携帯するスタッフ様も増えてきたといいます。
アルコール製剤の払い出し量
なお、スタッフ様の手洗い回数については「一人10回」という目標を設定することで改善が見られたそうです。リンクナースと協力し声がけなどを行うことにより、手洗い回数が少しずつ伸びていったといいます。
スタッフ1人当たりの手洗い回数
上述した取り組みのほか、同施設は手指衛生遵守率を向上させるため「ICTニュース」という新聞を毎月作り、各病棟に掲示しています。スタッフ様の実名と手洗い回数を掲載することで意識が高まったといいます。手洗い回数が少ないスタッフ様には院内メールを送り、手洗いができなかった理由をフィードバックしてもらっているそうです。
福山氏の資料を参考に作成
「こうした啓発を行う一方で、まだまだ手洗い回数が増えないスタッフもいます。手洗いの適切なタイミングが分からないスタッフもいると思うので、これから直接観察法で指導していく予定です。」(福山氏)
今後の課題を残しつつも、複数の取り組みにより同施設の手指衛生遵守率は確実に向上していると言えます。講演の最後に、福山氏は「リンクナースの頑張りや師長会の協力もあり、きちんと手を洗ってくれるようになったと感じる」と話しました。
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