株式会社ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツ様(以下、ロイヤルパークホテルズ)は、新型コロナウイルスの感染拡大以前から、お客様がホテルで過ごす時間(とき)を「安全・安心」なものとするために、日々、衛生管理・感染対策を実践されています。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、さらなる衛生品質向上のため、花王プロフェッショナル・サービス株式会社(以下、KPS)では、各現場の検証から清掃マニュアルの見直し等のご支援をさせていただきました。
今回は感染流行初期から、ホテル本部の感染対策チームとしてグループ全体の方針策定や取りまとめを担ってきた荒川義弘さんに、感染症への予防や対策の具体的な取り組み、サービス・衛生に関する認証「サクラクオリティ」「A Clean Practice」を取得した経緯などをお伺いしました【取材:2022年2月】。
―ロイヤルパークホテルズで実施している感染対策について教えてください。
荒川義弘さん(以下、荒川さん):感染症全般に対する取り組みは、コロナ以前から徹底して行っており、品質管理としての厨房衛生やそれに付随する健康管理(ノロウイルス検査や検便など)を行っています。特に厨房衛生に関しては、KPSさんの支援を受ける以前からも他社からのコンサルティングを受けており、高いレベルでの管理をどのホテルでもできるよう品質向上と平準化に努めています。
新型コロナウイルス関連の取り組みとしては、従業員のマスク・手袋の着用、手洗い・うがい、健康管理はもちろん、施設の換気、消毒、三密防止など基本的な対策を徹底しています。また、ホテル館内に感染対策に関するポスターを掲示したり、当社のWebサイトにコロナ対策の取り組みに関する動画を掲載したりするなど、お客様に「安全」「安心」を分かり易くお伝えするよう工夫を凝らしています。
―荒川さんの普段の業務内容や新型コロナウイルスの感染拡大以降に行った取り組み、また、会社から期待されている役割について教えてください。
荒川さん:私が担当しているのは、安全衛生管理の一環としてのコロナ対策です。以前から各ホテルの品質管理は私ども運営推進部が取りまとめておりましたので、コロナ対策に関しても対策本部としてさまざまな取り組みを行いました。
具体的には、新型コロナウイルスの流行直後から社内に対策会議体と対策チームを発足させ、感染対策マニュアルの策定や清掃マニュアルの見直しを行いました。現場フォローとして各ホテルの責任者ともモニタリング会議を行い、状況報告や困りごとがないかなどのヒアリングも実施しておりました。その他、認証取得に関わる業務やコロナ対策に関する政府方針への対応なども行ってきました。
コロナが拡大する前も、感染症全般に対する対策は徹底して行っておりましたが、宿泊主体型のホテルにおいてお客様の安全・安心な宿泊環境を維持するためには、「高い水準の感染対策を継続して実施すること」が求められるため、これまで以上に特に力を入れて取り組んできました。
―感染対策を行う上で感じていた課題や、苦労したエピソードなどがあれば教えてください。
荒川さん:2020年初めの国内における感染拡大以降、新型コロナウイルスという「未知のウイルス」にどう取り組むべきか分からない状況で、世の中の変化のスピードも速く、当社としても情報を必死に追いかけながら「私たちはどのように対策すべきか」判断するのが大変でした。
感染対策を始めた当初は、未知のウイルスに関するさまざまな情報が錯綜していました。まだ新型コロナウイルス感染症に関して基準となる対策や政府見解が定まっておらず、ホテル業界が出していた感染対策に関する指針を参考に私たちも手探りでマニュアルを取りまとめました。ホテル業界に限らず、空調に関する業界団体や、当社にはフィットネス施設がホテルにある関係からフィットネス業界のものなど、複数の業界団体のマニュアルを収集し、「当社のマニュアル」を作り上げていきました。
しかし、新型コロナウイルスに対して分析がまだ進んでいない状況だったこともあり、実施する一つ一つの対策の妥当性は科学的に担保されている訳ではありませんでした。お客様や従業員の安全・安心のためにという思いで作り上げたマニュアルでしたが、当時の状況ではお客様やホテルの現場に負担を強いるものばかりで、現場からも「ここまで対策する必要があるのか」「お客様に説明できるような理由を示してくれ」と指摘や問い合わせを受けることもありました。
―現場の従業員が受けていたお客様からの問い合わせや指摘について、対策チームとしてすぐ回答することが難しかったということでしょうか。
荒川さん:お客様から具体的な問い合わせを受けるというよりも、「ホテル側としてこういう感染対策を行っているので当社ホテルグループは安全です」という形でお迎えしたいと思っていました。ただ、どうしてもお客様や現場スタッフに負担を掛けることでもあるため、「各ガイドラインを参考に対策をしているとはいえ、安心感・納得感をもってご協力いただくための説明が、自分自身、自信を持ってできるかと言えばそこは躊躇するところもあった。」というのがありました。
お客様から「感染対策が充実していて安心」という声をいただいた一方、エビデンスが不十分なまま客室や館内施設の利用制限をはじめとする対策などで、実際にはご迷惑をおかけしてしまっていた面もありました。
ホテルの現場への負担については、清掃の際に客室から紙の製品、パンフレットなどを全て入れ替える必要があるのか、スタッフのフェイスガード、マスク、手袋の装着は必須なのか、といったことです。またよく起こってしまったトラブルとしては、フェイスガードを着用した際に視界が狭くなったため段差でつまずいたり、レストランのスタッフにおいては食事や食器を運ぶワゴンにぶつかってしまったりということがありました。
現場で実施する感染対策の必要性や導入・実施について「ここまで必要で、ここまでは必要ない」と明言ができず、現場の理解を得るに足るような説明が当時はうまくできなかったため、本部としては『最大限の予防』を考えると「ここまでしなければいけない」と言い切らなければいけなかったという状況で、大変苦労しました。
―感染対策を行う上で、KPSに期待したことを教えてください。
荒川さん:三菱地所グループのホテルとして「安全」「安心」を高い水準で目指していますが、コロナ対策に関しては、完全に当社独自で行っており、お客様やホテルの現場に「対策をここまでやらなければならない理由」をはっきりと説明できずにいたため、「独自でまとめたマニュアルや対策が適切な内容なのかを確認したい 、衛生管理のプロの視点からアドバイスをいただきたい」という思いがあり、パートナーを探していました。その時に、親会社の三菱地所からKPSさんは大学の研究機関と協力関係を持ちながら取り組みをしている企業であると聞き、コンタクトを取りました。
衛生管理や感染対策のアドバイザーとしてほかにも候補の企業はありましたが、我々が「感染対策の妥当性」という部分で窮地に立たされている中、最も前向きに協力姿勢を示してもらえたのがKPSさんでした。
―取り組みの中で、KPSはどのようなところに貢献できましたか。
荒川さん:KPSさんには、2020年12月に汐留のホテルの客室をはじめ、レストラン、フロントなどのパブリックスペースやバックスペース、休憩室など多くの場所で衛生モニタリング検査を行っていただきました。具体的には、各現場の感染対策の状況調査、「ATPふき取り検査」※による残留汚れの測定などを実施いただきました。検査結果の内容をもとに清掃ルールの統一の改善提案をいただき、清掃方法についても効果的な洗浄・除菌方法、洗浄剤の適正な使用方法など細かな改善ポイントをご指導いただき大変助かりました。KPSさんという衛生管理のプロの視点からアドバイスいただけたので、改良したマニュアルや現場のオペレーションについても「この対策は改善が必要だった」「この対策は合っていたのだ」と我々もようやく答え合わせをすることができました。
例えば、 フロントスタッフが使用するキーボード類やエレベーター内のボタン、化粧室のごみ箱の蓋など、我々だけでは気づけなかったような箇所の感染リスクや改善ポイントをご指摘いただきました。菌・ウイルスの存在はなかなか見た目で判断できないので、KPSさんに現場で調査いただき「これまで見えていなかった汚れ」が数値化されたことはとても良かったと思います。加えて清掃や手洗いの頻度なども含め、現場でのオペレーションに組み込みやすい、具体的なご提案をいただけたのは大変助かりました。
このような衛生品質管理の観点での確認・検証を通して、改善のための具体的なアドバイスをいただけたことで、当社対策チームが抱えていた「対策の妥当性」において不安が解消されたことはとても大きかったです。
また、新型コロナウイルスの感染対策にとどまらず、ホテル全体の衛生管理の観点からも詳しくアドバイスをいただき、我々自身も勉強になりましたし科学的知見にもとづいた衛生管理のアップデートができました。
―「サクラクオリティ認証」「A Clean Practice認証」の各認証取得の経緯、認証までに努力されたことについて教えてください。
荒川さん:研究機関(北里大学や奈良県立医科大学の各研究所)と協力関係にある観光品質認証協会の「サクラクオリティ認証」「A Clean Practice認証」の制度についてKPSさんから紹介していただいたことが取得を目指したきっかけです。当時、既に全日本ホテル連盟(旧全日本シティホテル連盟)と観光品質認証協会が協力関係にあったことも認証取得を目指していこう、との方針を後押ししました。単に認証の取得が目的ではなく、当初の課題であった対策の妥当性やお客様の安心につながればと考えていました。
「サクラクオリティ認証」はサービスに関する認証、「A Clean Practice認証」は衛生に関する認証です。2つの認証取得のためにはあわせて750項目以上からなる、観光品質・サービス(宿泊・料飲・宴会)・施設・設備、感染対策など多岐にチェックポイントが用意されていました。
認証の発行はホテルごとになるため、取得に向けた準備は各ホテルの責任者にお願いしました。感染拡大の影響で出張規制があり、我々本部の者が各ホテルに訪問することはできませんでしたが、認証にも則った「感染対策マニュアル」の履行、徹底を現場主体でチェックする良い機会にもなりました。
―お客様へのサービスの品質向上のため、今後どのように取り組んでいくのか。展望をお聞かせください。
荒川さん:新型コロナの感染拡大以降、お客様の求めるサービスも変化してきており、感染対策について基本的な対策をすべて網羅・徹底していることが「ホテル選びの新たなスタンダード」になってきています。幸いなことに、これまで当グループのホテルで、新型コロナウイルスによるクラスターは発生しておらず、適切な衛生管理によってお客様へ「安全・安心な滞在」をご提供できていると考えています。
その一方で、これからも継続的に衛生品質管理の水準を向上させていくことが求められているとも考えています。
新たな取り組みとしては、感染対策はもちろん、効率化という点も含めて非接触型サービスの充実を検討しています。宿泊施設においては、「人」あってのサービスという面もありますが、非接触にすることで感染リスクを限りなく下げ、お客様により「安全」「安心」に過ごしていただくことも重要であると感じており、効率化の面ではチェックインとチェックアウトの手続きなどは自動化できる部分だと考えております。ただし、完全な非接触化を目指しているわけではなく、弊社が大切にしている「おもてなしの心」をもってお客様に寄り添い、安全に最大限配慮したうえで「対面」「非対面」をうまくミックスして今後もより良いサービスをご提供していきたいと思います。
荒川義弘(あらかわ よしひろ)さん
●所属
運営推進部 事業推進課
●担当業務
安全衛生等・品質管理関連業務
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