東京都墨田区は新型コロナウイルス感染症が拡大する中、日本国内の自治体の中で高いワクチン接種率を実現。2021年7月から9月の間に多くの感染者を出した第5波でも重症者をゼロに抑え込み、「墨田区モデル」と呼ばれるようになった医療体制の構築を行いました。感染者に対する医療体制の充実が当然求められる中、感染者の増加を防ぎ、感染しても重症化リスクを抑えるために重要だったのが、ワクチンの集団接種です。花王プロフェッショナル・サービス株式会社(以下、KPS)は墨田区に本社を置く地元企業として、ワクチン接種会場の運営に関わるご支援をさせていただきました。
今回は、墨田区のワクチン接種を指揮する福祉保健部保健衛生担当次長の岩瀬均さんと現場の運営業務に携わる主査の菅沼竜一さんに、ワクチンの集団接種における取り組みや思いなどをお話いただきました。[取材:2022年5月]
墨田区モデル:
墨田区の新型コロナウイルス感染対策およびコロナ禍における医療体制のこと。感染対策の面では集団接種をメインにしたワクチン接種の推進により、日本国内でも高い接種率を実現。2021年7~9月の第5波の時期には死亡者数と重症者数をゼロに抑え込んだ。
―2021年の春、各自治体で行われた新型コロナワクチンの集団接種について、ワクチン手配をはじめさまざまな課題に直面されていたかと思います。そうした中でも早い段階でワクチンの集団接種を開始できた理由を教えてください。
岩瀬均さん(以下、岩瀬さん):一番の要因としては、地元医師会の協力を得られ、連携できたことにあると思います。仮に墨田区がワクチンを確保できたとして、それを区民の皆様に接種してくださる方がいなかったら意味がありません。墨田区は河川に挟まれ、海抜が低い地域であることから災害に弱い自治体です。首都直下型地震や水害の危険に備え、医師会とは災害医療について日頃から協力関係にありました。
また今回のワクチン接種に関しては、最初から集団接種と決めていたわけではありません。地域の病院にお願いすることもできたわけで、そうした中で墨田区として、いかに早く効率的に大勢の方に接種いただくにはどうすれば良いかを検討した結果が集団接種でした。集団接種という通り、実施すれば当然多くの人が集まります。医療従事者はもちろん、接種に来られた方の感染防止が大きな課題でした。
―ワクチンの集団接種の実施に向けた具体的な取り組みについて教えてください。
岩瀬さん:墨田区のワクチン接種において特徴的なのは、1回目接種の際、事前に医師会の医師の方々をはじめとする医療従事者の接種を実施したことです。
当時、「医療従事者の接種は東京都が実施する」という計画もありましたが、なかなか計画通りには進まなかったというのが実情でした。私たちとしては、「医師の先生たちには最低でも1回はワクチンを接種いただいて、その後に区民の皆様にワクチン接種をしていただく」という順番があるだろうと考えていました。接種を行う医療従事者の方がワクチン接種済みでなければ、区民の皆様にも安心していただけないだろうと、墨田区では独自に医療従事者向けの接種を決定したのです。
そのうえで私たちが考えなければいけなかったのが、場所の確保と、会場の運営をどうするかです。
たまたまと言っていいのかわかりませんが、私は選挙管理の事務局長を兼務しており、ワクチンの接種券配布や会場レイアウトについて選挙管理の経験を応用できたことも、迅速な対応につながったかもしれません。ただやはり選挙の投票と違うのは、密な状態をつくらないようにするなど感染対策をどのように行っていくかでした。今回この点において、KPSさんには会場での感染対策マニュアルの作成をはじめさまざまなご支援をいただきました。
菅沼竜一さん(以下、菅沼さん):接種会場の運営において最も大事にしていたのが、事故が起きないようにすることです。接種会場は注射を行うわけですから、間違いが許されません。特にワクチンの充填を行う調剤エリアは異物混入の可能性があるため、注意が必要でした。保健師の方のアドバイス、さらにはKPSさんに作成いただいた清掃マニュアルを参考にして、清潔な空間を保つことができ、結果として医療事故につながることは現在まで起こっていません。
感染対策という観点で言えば、会場のレイアウトが重要でした。単純に密を避けるということだけでなく、どのタイミングで手指消毒を行ってもらうかなど、KPSさんの社内にいらっしゃる感染管理認定看護師※1の方に実際の会場を見てアドバイスいただきながら、当日の人の動きをシミュレーションして準備を進めました。
※1:感染対策における高度な専門知識を持ち、感染予防や医療関連感染サーベイランスなどの実践が可能と認定された看護師のこと
私たちとしては、一刻も早く区民のみなさんにワクチンを接種いただきたいという思いもあって、集団接種という方法を選びました。接種会場で感染が拡大しては意味がありません。また来場者の方を不安にさせてしまうようでは、ワクチン接種の促進にもつながりません。安全で安心できることを常に考えていました。
―墨田区では、ワクチン接種会場の感染対策に限らず多様な面で区民の安全・安心な生活をサポートされていらっしゃるかと思います。状況も変化し続けていますが、最後に今後の展望についてお聞かせください。
菅沼さん:新型コロナウイルス感染症が流行してから約2年間、それぞれの地域で行動制限が余儀なくされています。しかし、ワクチン接種によって重症化や感染へのリスク軽減がある程度できているのではないかと思います。少しずつですが、各種のイベントをはじめとする社会活動も回復の兆しが見えてきました。
墨田区の感染対策に携わる私たちの立場としては、ワクチン接種をはじめとする対策を通じ「区民の皆様の命を守る」ということを基本にして、「区民の皆様が健康にお過ごしいただくこと」が重要だと考えています。健康でなければイベントにも行けませんし、十分に楽しむこともできません。これからも区民の皆様の命そして生活を守るために尽力していきたいと思います。
岩瀬さん:現在、政府や専門家の間で、感染症法において「2類相当」※2の新型コロナウイルス感染症を「5類」へ変更するという議論も始まっています。もし「5類」へ変更となった場合、保健所の役割は今よりも縮小され、ワクチン接種に関しては希望者が有料で接種する季節型インフルエンザのような対応に移行する可能性もあるでしょう。そうした動向にも注視しつつ、墨田区としては高齢や基礎疾患をお持ちの方などの接種対象者が確実に接種していただけるよう、制度面も含めてしっかりと進めていきたいと考えています。
※2:感染症法ではウイルスの危険度に応じて1~5類に分けて対応を規定している。現在、新型コロナウイルスは結核や重症急性呼吸器症候群(SARS)と同等の危険度がある「2類相当」に分類。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が適用され、生活に制約が設けられる一方、ワクチン接種を含め検査や治療は国が負担する。「5類」は季節型インフルエンザと同じ危険度のウイルスと指定され、ワクチン接種を含めた治療費は国民の自己負担となる。
ワクチン接種は複数の会場で実施され、私たちの部署だけでなく全庁を挙げての取り組みでした。またKPSさんだけでなく、接種会場の提供など地元の団体や企業様にもご協力いただきました。こうした地域の方々の力も借りながら、行政機関として区民の皆様の命と生活を守る役目を果たせたのではないかと思っています。
岩瀬 均(いわせ ひとし)さん
●所属・職務
墨田区福祉保健部保健衛生担当次長
本所保健センター長事務取扱
新型コロナウイルス予防接種調整担当副参事事務取扱
菅沼 竜一(すがぬま りゅういち)さん
●所属・職務
墨田区福祉保健部保健衛生担当保健予防課主査
新型コロナウイルス予防接種調整担当
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