2023.10.25
2025年には超高齢化社会を迎える日本。総人口における高齢者の割合が急激に大きくなることで、社会にさまざまな影響を与えると考えられています。
本記事では2025年問題の社会への影響や、すでに行われている取り組み、企業ができる対策方法などを解説します。中小企業や小規模事業者は、できるだけ早く着手したほうがよいと思われる対策もあるため、ぜひ最後までご覧ください。
【PROFILE】監修者:涌井 好文
平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。
また、近時はインターネット上でも活発に活動しており、クラウドソーシングサイトやSNSを通した記事執筆や監修を中心に行っている。
2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、日本は超高齢化社会に突入します。団塊の世代は1947年〜1949年生まれで、戦後のベビーブーム世代です。この世代が2025年に75歳以上になることで、総人口1億2254万人のうち、75歳以上は約17.8%の2,180万人に達すると想定されています。
また、65歳以上は3,677万人に達し、日本人の約3人に1人が65歳以上の高齢者になります。
これによって、社会保障、医療や人手不足など、さまざまな分野に影響を及ぼすことが予想されています。
2025年問題の社会に与える影響とは、どのようなものがあるのか見ていきましょう。
医療を必要とする高齢者が増えて医療施設や医療従事者がより求められるようになるため、医師や看護師の人材不足により、医療体制が逼迫する恐れがあります。病院の経営も圧迫され、公立病院が減少するなど医療の質も量も維持が困難になるでしょう。
75歳以上の後期高齢者は医療費や介護費用をより多く必要とするため、社会保障費が大幅に増加します。しかし、現役世代は減少するため、税収が減り、医療や介護に必要な社会保障費を確保できなくなります。現役世代への社会保険料の負担増は避けられないでしょう。
2025年問題によって介護が必要となる人口が増加します。核家族化が進んだことで一人暮らしの高齢者が増え、介護サービスの需要が増加するでしょう。介護施設や介護に携わる人材が不足する可能性があります。
また、2025年には認知症患者数が約700万人に増加すると見込まれています。この数字は65歳以上の5人に1人です。
2025年問題による、労働人口の減少による人材不足が心配されます。65歳以上の人口は増加しますが、いわゆる社会の担い手と言われる世代の人口は減少します。これは、労働人口の減少に直結します。日本の総人口が出生率の低下に合わせて減少傾向にあるため避けられない問題でしょう。
2023年5月に介護労働安定センターが公開した調査結果では、介護労働者の平均年齢は、50.0歳となっています。また、職種別でみると訪問介護員の平均年齢が最も高く54.7歳となっています。「70歳以上」が13.5%で最も高く、次いで「60歳以上65歳未満」が13.2%、「50歳以上55歳未満」が12.6%、「55歳以上60歳未満」が12.1%で、50歳以上が全体の62.8%を占めています。介護業界は多くの高齢者によって支えられているといっても過言ではありません。
今後はあらゆる業種で人材不足になり、人材の確保が大きな課題になるでしょう。
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日本の全企業のうち、中小企業は99.7%を占めています。しかし経営者が高齢でも後継者不在のケースが多く、黒字廃業する中小企業も珍しくありません。
2025年までに中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人が70歳を超えますが、そのうちの約半数にあたる127万は後継者が未定です。
このままでは、中小企業・小規模事業者の廃業が急増し、2025年までの累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる恐れがあると中小企業庁は試算しています。
中小企業が持つ技術やノウハウを廃業によって失わないためにも、事業承継は重要です。事業承継には「親族内承継」「従業員承継」「M&A(社外への引き継ぎ)」の3種類があります。M&Aとは、「Mergers and Acquisitions」の略であり、企業の合併や買収を意味します。
後継者不在の場合、まずは親族や従業員の中から適切な後継者を探すことになります。後継者が見つかれば、経営理念や人脈の引継ぎなどを行う期間が必要なので、早めに事業承継計画の策定に着手しましょう。
親族や従業員に後継者がいない場合は、M&Aによってほかの事業者や個人に引き継ぐこともできます。コロナ過の影響で一時的に減少したものの、近年、M&Aに取り組む中小企業は、増加傾向にあります。
2025年問題に対して国はさまざまな対策に取り組んでいます。どのような対策を講じているか確認しましょう。
2025年問題は社会保障費の増大が懸念されるため、公費負担の見直しが行われています。
2022年度からは、75歳以上でも課税所得28万かつ単身の場合は、「年金収入+その他の合計所得金額」が200万円以上(夫婦の場合は合計320万円以上)の人は、医療費の窓口負担額が2割に引き上げられました。若い世代の負担を軽減し、公平化を図るための取り組みです。
2021年より高年齢者雇用安定法の一部が改正されています。働く意欲がある高年齢者が活躍できる環境の整備を目的として、70歳までの就業機会を確保するよう企業に努力義務が課せられました。
また、高齢者に就労を促すだけでなく、現役世代の待遇改善も行われています。具体的には非正規雇用労働者の正社員転換、同一労働同一賃金の導入、最低賃金の毎年3%アップの引き上げ目標などが挙げられます。
中小企業庁では、2025年問題を背景にした事業承継に関する取り組みを行っています。
事業承継・引継ぎ支援センターは、全国47都道府県で事業承継に関する相談対応、事業承継計画の策定、M&Aのマッチング支援などを行っています。国が設置している公的窓口で、原則無料で相談可能です。
事業承継・引継ぎ補助金とは、事業承継を契機として経営革新などを行う中小企業や小規模事業者に対し、取り組みに要する経費の一部を補助して事業承継や事業再編・事業統合を促進し、経済の活性化を図ることを目的としています。
補助金を受けるには要件を満たして審査を通過する必要がありますが、返済の必要がない資金を得られることがメリットです。
また、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」により、後継者が非上場の株式を贈与や相続で取得した場合、経営承継円滑化法における都道府県知事認定を受けると贈与税・相続税の納税が猶予または免除されます。
そのほかにも金融支援や遺留分に関する民法の特例、所在不明株主に関する会社法の特例などの適用を受けることができます。
医療・介護業界では、人材不足や医師不足への対策として、ロボットやICT機器を導入した医療や介護が注目されています。ICTとは、「Information and Communication Technology」の略称であり、コンピューターやタブレット端末といった省力化に繋がるICT機器の導入は、人手不足の解消に有効な手段です。オンラインでの遠隔治療や介護現場でのサポートロボット活用などにより、人手不足の解消が期待されています。
また、地域包括ケアシステムの構築も進められています。地域包括ケアシステムとは、在宅での医療・介護サービスなどを地域全体で連携して行う仕組みです。高齢者が住み慣れた地域や自宅で可能な限り長く暮らしていけるための支援やサービスを受けられます。
2025年問題に向けて企業はどのような対策に取り組めばよいのでしょうか。具体的な対策方法を紹介します。
高齢の経営者は早めに後継者を決める必要があります。親族や社内で適した後継者を探し、見つからない場合はM&Aで第三者承継も検討しましょう。廃業を避けることで、従業員の雇用が守られます。
後継者が決まったら、技術やノウハウ、人脈を引き継いで育成する期間が必要なので、できるだけ早く着手しましょう。
2025年問題による人材不足を解消するため、企業は人材確保に努めましょう。そのためには雇用のダイバーシティ化を検討する必要があります。ダイバーシティとは日本語で多様性を意味する言葉です。
たとえば時短勤務や在宅ワークを可能にすれば、能力はあるのにオフィスで長時間勤務するのが難しい子育て世代や、労働時間に上限がある外国人留学生も雇用できます。
65歳以上の高齢者でも働く意欲がある人は多いため、多様な就労形態を可能にするなど、シニア世代が働きやすい環境の整備も人材確保のために重要です。
2025年問題によって現役世代の減少は避けられないため、少ない人数で生産性を向上させる取り組みが必要です。ICT技術を導入すれば業務の省略化や業務プロセスの効率化が可能になり、人手不足だけでなく残業の削減も可能になるケースがあります。
また、DXの推進も生産性の向上に効果的です。DXとは、「Digital Transformation」の略称のことでデジタル技術により業務のプロセスを変革します。DXを推進すると少ない人員でも業務の遂行が可能になり、2025年問題による人材不足の対策として期待できます。
人材を確保するためには、離職率を下げることも重要なポイントです。従業員が長く勤めたくなるように待遇や体制を見直しましょう。離職率が下がれば求人にかけるコストや時間を減らせます。
2025年は人口のボリュームが大きい団塊の世代が後期高齢者になるため、人手不足が大きな問題となります。2025年問題への対策を講じなければ企業は人材不足に陥り、中小企業や小規模事業者は後継者が見つからず廃業を余儀なくされるかもしれません。
2025年はすぐそこに迫っているので、早期に対策を始めましょう。事業承継に関しては公的支援もあるので、中小企業や小規模事業者の経営者は活用を検討してはいかがでしょうか。
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