2024.03.25
保育園は子どもたちの健康を守り、保護者の方が安心してお子さまを預けられる場であるために、適切な感染対策を行いたいとお考えの方も多いのではないでしょうか。
しかしながら、保育園には乳幼児(0~5歳)が長時間にわたり集団生活をする特性から、感染症リスクが特に懸念される場所です。
また、近年の新型コロナウイルス感染症の世界的な流行を受けて、感染対策はますます注目されるようになりました。保護者の方々に安心してお子さまを預けていただくためにも、保育園を運営する事業者の皆さまは、保育園での感染対策について正しい情報を知り、実践することが重要です。この記事では、保育園で注意すべき感染経路や感染症、予防する方法などについて解説します。
【PROFILE】監修者:野田慶太
2006年、旭川医科大学医学部卒業。福岡市立こども病院などで小児科研修。熊本赤十字病院などで救急医として勤務。シンガポール・ベトナムでの勤務歴あり。
保育園における乳幼児は以下のような行動特性があるため、感染症が流行しやすい傾向にあります。
幼児は生まれてから数か月間は母親から胎盤を通して受け取った免疫(移行抗体)が備わっていますが、数ヶ月が経つと減少し始め、感染症にかかりやすくなります。
適切な感染対策を行うには、感染経路の種類を知り、それぞれに対処できるよう準備しておく必要があります。保育園で注意が必要な感染経路は以下の通りです。
せきやくしゃみなど、飛び散った飛沫を吸い込むことで感染することを「飛沫感染」といいます。飛沫は約1〜2mの範囲で飛び散ります。
保育園では子どもたちや職員との距離が近く、活発に話したり歌ったりする環境は、飛沫感染が起こりやすいと考えられます。
感染対策としては、飛沫を浴びにくい環境を作ることが大切です。マスクを着用すれば飛沫が飛びにくくなりますし、吸い込みの防止にもなります。
空気中に漂う病原体を吸い込んで感染することを「空気感染」といいます。病原体の種類によっては、口から飛び出した飛沫が乾燥し、その芯になっている病原体(飛沫核)が感染性を保った状態で空気の流れによって拡散します。
そのため、飛沫感染よりも感染範囲は広く、密閉された空間内なら離れていても感染する恐れがあります。定期的に部屋を換気することや、感染者を別の部屋に隔離することで、空気感染のリスクを軽減できます。
接触感染には、直接的な感染と間接的な感染があります。直接的な感染とは、握手やキスなどで感染者に直接触れた後に感染することです。一方、間接的な感染は、病原体が付着したドアノブや手すりなどに触れた後に病原体が体内に入って感染します。
保育園でも床や遊具、おもちゃなど、どこに病原体が潜んでいるか分かりません。したがって、接触感染を防ぐには、こまめに手洗いをして付着した病原体を洗い流すことや、床や遊具、おもちゃなどの備品を定期的に清掃し、清潔に保つことが重要です。
経口感染とは、病原体を含んだ食物や水分を口にして病原体が消化管に達して感染することです。これを防ぐには、食事の提供など食品についての衛生管理がポイントになります。経口感染への対策としては、子どもたちへの食事の提供や食品の取扱いに関する通知、ガイドライン等を踏まえ、適切に衛生管理を行うことが重要になります。
血液媒介感染とは、血液を介して感染することです。血液に含まれる病原体が、傷ついた皮膚や粘膜から体内に侵入すると感染が成立します。日常生活において血液媒介感染を起こす感染症は多くありませんが、注意は必要です。
子どもがけがをしたときは、血液は流水できれいに洗い流し、絆創膏やガーゼできちんと覆います。処置の際は、使い捨ての手袋を使うなど、職員もできるだけ血液に触れないように注意しましょう。
蚊媒介感染とは、病原体をもった蚊に刺されて感染することです。蚊媒介感染の主な病原体である日本脳炎ウイルスは、日本国内の広い地域で毎年活発に活動しています。また、南東アジアの一部では日本脳炎が大規模に流行しています。
日本脳炎は主にコガタアカイエカが媒介され、大きな水たまり(水田、池、沼等)に産卵します。一方、デングウイルスを主に媒介するヒトスジシマカは小さな水たまり(植木鉢の水受け皿、古タイヤ等)に産卵します。保育園で子どもたちを守るためにできることとしては、水たまりを作らないようにしたり、蚊が発生しやすそうな場所に立ち入る際には、長袖や長ズボンを着用するように促し、蚊にさされないようにすることなどが挙げられます。
乳幼児は抵抗力が弱く、身体の機能が未熟であることから、大人よりも感染症にかかりやすいことを念頭に置き、対策を徹底しましょう。
保育園で注意すべき感染症としては、麻しん(麻疹・はしか)や水痘(水疱瘡)などが挙げられます。代表的な感染症の特徴や感染経路、対策方法を見ていきましょう。
麻しん(麻疹・はしか)は、とても感染力の強い感染症で、空気感染や飛沫感染で広がります。発熱や鼻水、咳やくしゃみなどの症状が出ます。麻しん含有ワクチンの接種が極めて有効な予防手段と言われています。潜伏期間は8~12日で、発症初期には、高熱、咳、鼻水、結膜充血、目やに等の症状が出て、一旦熱が下がると再び高熱になり発疹が現れます。やがて解熱し、発疹は色素沈着を残して消えていきます。麻しんは、肺炎、中耳炎、熱性けいれん、脳炎等を合併することがあり、特に、肺炎や脳炎を合併した場合、重症となるため、注意が必要です。
罹患した子どもの登園のめやすは、「解熱後3日を経過していること」です。
水痘とは、水痘帯状疱疹ウイルスというウイルスによって引き起こされる発疹性の感染症です。全身に虫刺されのような斑点ができ、水ぶくれが発生します。発熱やだるさをともなう場合もあります。
感染経路は、空気感染、飛沫感染、接触感染があり、その潜伏期間は感染から2週間程度と言われています。水痘は、感染力が非常に強く、同じ室内にいるだけで感染することもあります。
罹患した子どもの登園のめやすは、「全ての発しんが痂皮(かさぶた)化していること」とされています。
インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする感染症です。せきや喉の痛み、発熱などが生じます。潜伏期間は1〜4日と言われています。
インフルエンザは通常であれば1週間程度で回復しますが、気管支炎、肺炎、中耳炎、熱性けいれん、急性脳症等の合併症を引き起こす場合があります。そのため、免疫力が発達途中の子どもなどでは特に注意が必要です。
主な感染経路は飛沫感染ですが、接触感染することもあります。マスクを着用できる年齢の子にはマスクを着用するよう促したり、流行期間中は特に手洗いや、手指消毒アルコールを園内に置いておく、園内の備品などは定期的に清拭する等、衛生管理に意識的に取り組みましょう。
罹患した子どもの登園のめやすは、「発症した後5日経過し、かつ解熱した後3日経過していること(乳幼児の場合)」とされています。
ノロウイルスは、嘔吐と下痢が主症状であり、脱水を合併することがある感染症で、潜伏期間は12〜48時間です。ただし、症状が良くなっても便中にウイルスが3週間以上排出されることがあります。一年を通じて発生しますが、特に秋から冬にかけて流行し非常に感染力が強いです。流行期には、前日に嘔吐していた子どもの登園を控えてもらうように保護者に伝えることも必要になります。
ノロウイルスに感染する主な原因は、感染者の調理による食品汚染や加熱不十分な食品の摂取による経口感染です。また、ウイルスが付着したものからの接触感染や、感染者のおう吐物が床に飛散した際など、ノロウイルスが含まれた飛沫を吸い込むことによる飛沫感染などがあります。
罹患した子どもの登園のめやすは「嘔吐、下痢等の症状が治まり、普段の食事がとれること」とされています。
保育園で感染症を予防するには、まずは感染症が発生する3つの要因を押さえておきましょう。
保育園では、乳幼児の行動や特性を踏まえたうえで、これらの条件が揃わないように対策する必要があります。そのためには、保育園施設の運営側や、子どもの側で働く職員は感染症に関する知識を持ち、適切に対策を実施する必要があります。
ここでは、保育園で感染症を予防するための具体的な方法について解説します。
手洗いによって、手指を清潔に保つことは感染対策においてとても重要です。しかし、子どもの年齢によっては、十分な手洗いを自ら行うのは難しいです。そのため、全ての職員が正しい手洗い方法を身につけ、子どもの手洗いを手助けしたり、指導したりすることが大切です。
保育園での手洗いは、食事の前後、トイレの後、外から帰ってきた後等、細菌やウイルスの感染リスクが高い場面で特に必要となります。
嘔吐物や排泄物には多量の病原体が含まれている可能性があるので、適切に処理しましょう。周辺にほかの子どもたちがいる場合は、移動させてから処理します。
嘔吐は突然起こることが多いので、速やかに対処できるよう、嘔吐物や排泄物を処理するための物品セットをあらかじめ用意しておくことをお勧めします。
空気感染を予防するためにも、保育園での換気を適切に行う必要があります。そのために、効果的な方法を知っておきましょう。
まず、基本的な感染対策として季節を問わず、こまめに換気を行うことで施設全体の換気能力が高まり、効果的に換気を行うことが有効です。
こまめに換気する仕組みを保育園で定着化できるようにするためには、職場内でルールを設けることもおすすめです。食事の後やお昼寝の後に換気をするなどのルールを作っておけば習慣になるでしょう。
子どもの体調不良の早期発見と迅速な対応は、感染拡大を予防する上で重要です。
感染症の疑いのある子どもが保育中の保育園で発生した場合は、医務室等の別室に移動させて体温測定等を行い、症状を把握し記録します。保護者に連絡し、症状や経過を正確に伝えつつ、嘱託医や看護師に相談して指示を受けます。子どもは、感染症による発熱などで不快感や不安感を抱きやすいので、子どもに安心感を与えるように適切に対応しましょう。
保育園は、子ども同士が集団生活を送るため、病原体との接触リスクが高く感染症が広がりやすい環境です。おもちゃや遊具などを共有する生活も、細菌やウイルスが容易に伝播してしまう恐れを高めます。また、子どもたちの免疫が未熟であるため、感染症にかかりやすい特徴もあります。さらに、手洗いや咳エチケットなどを習慣化しにくいことも感染リスクを高める要因です。
乳幼児のこのような特徴を押さえたうえで、保育園の全職員が感染対策を実践しなければなりません。そのため、保育園でよく見られる感染症の特徴や、感染経路ごとの対策方法を知り適切な対策を行うことが重要です。
Kiraliaとは、キラリアハイジーン株式会社が提供するトータル衛生ソリューションプログラムです。衛生管理を行う事業者の皆様に、最適な衛生ソリューションを継続して提案いたします。
企業・団体向けの感染予防ソリューション「Kiralia INFECTION CONTROL」は、リスクの評価分析と適切な改善方法をご提案する感染予防ソリューションです。リスクを早期に発見し、施設の感染拡大防止をサポートします。
「Kiralia INFECTION CONTROL」では、有識者との連携によって構築したリスク評価モデルを活用し、今施設にある感染対策のリスクを把握することができます。それぞれの保育園の施設環境や、動線などが異なるので、適切な感染対策もさまざまです。適正な対策による労務軽減も期待して頂けます。
モニタリング結果に基づいて、マニュアルの整備や教育のサポートを実施いたします。園での感染対策体制に関する監査を受けていただいた施設様には、認定証と認定ステッカーを進呈します。認定は、保護者の信頼や、保育者の方の自信、地域へ衛生水準の高さをアピールできます。
保育園の感染対策にお悩みの方は是非お気軽にお問い合わせください。
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