キラリアハイジーン

高齢者を支える介護人材の確保に向けた対策についてわかりやすく解説

2024.01.31


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我々が住む社会は、高齢者の割合が増加しており、介護人材の確保という重要な課題に直面しています。また、少子高齢化社会においては働ける人手にも限りがあります。高齢者の生活を支える介護サービスの需要増大に応えるためには、より優れた介護人材を確保していくことが欠かせません。

しかし、介護人材の不足は深刻な問題として存在し続けており、解決策を模索することが急務です。単に数的な問題にとどまらず、介護の質にも影響を与えるため、日本が抱える大きな課題であるといえるでしょう。

本記事では、高齢者を支えるために必要な介護人材の確保に関する現状と、解決に向けた取り組みについて詳しく掘り下げていきます。人材確保に向けたさまざまな施策や効果をご理解いただけると思います。

【PROFILE】監修者:マンベンダ奈穂子

資格:
介護福祉士
介護支援専門員(ケアマネジャー)
福祉住環境コーディネーター1級
福祉用具専門相談員

2005年に信州大学工学部(建築)を卒業。福祉リフォームの現場で建築の経験を積む。小規模多機能型居宅介護サービスで、ケアマネ・介護士として、7年間、介護の経験を積み、訪問サービスを含め、生活介護や身体介護に携る。

介護人材の現状

日本の介護分野は、深刻な人材不足に直面しています。問題解決のためには、まず現在の高齢者人口と介護サービス利用者の増大という現状を把握することが重要です。

厚生労働省の資料によれば、過去20年間で65歳以上の介護保険被保険者数は1.6倍に増加し、介護サービスの利用者は3.3倍にまで拡大しています。高齢化が進行するなかで、介護サービスのニーズが顕著に増大している証拠です。

要介護認定者数も約20年で3倍に増加しており、高齢者人口の急速な増加にともない、介護ニーズがさらに高まることが予想されます。2042年には65歳以上の高齢者が約4,000万人に達し、ピークを迎えると予測されています。

一連の課題が浮き彫りにされ、問題視されるようになっても、介護分野における人材不足の問題は解決には至っておらず、より深刻化しているのが現状です。

介護サービス職の有効求人倍率は3.88倍

有効求人倍率とは、働き手1人あたりに何件の求人があるかを示す指標です。厚生労働省が発表した2023年7月の統計によると、介護サービス職の有効求人倍率は3.88倍です。

これは全職業平均の1.15倍を大きく上回っています。介護サービス職における人材確保の難しさを如実に示すデータです。

働き手の全体的な減少が進むなか、介護分野の求人に対する応募者数が追いつかない状況が生まれています。結果として、介護サービスを提供する各施設や事業所は、人材を確保するために競争が激しい状況におかれているのが現状です。
待遇面や職場環境でより魅力的な条件を提供できる企業に、人材が流れる傾向が見られます。そのため、好待遇を提供するのが難しい中小企業の介護施設にとっては、厳しい状況であるといえます。

介護サービス職の2025年問題

とくに注目すべきは、いわゆる「2025年問題」として知られる、介護分野における将来的な人材不足の問題です。2025年問題とは、団塊の世代が後期高齢者になることで起こるさまざまな問題のことを指します。

現在、日本では75歳以上を後期高齢者と定義しています。2025年には、人口ボリュームが大きい団塊の世代がこの年齢層に入るため、医療および介護ニーズが一段と高まることは確実です。介護人材の需要がさらに増大することが見込まれます。

厚生労働省の予測では、2025年度の介護人材の需要が約253万人に達する一方、供給見込みは215.2万人に過ぎません。約40万人のギャップが存在します。約40万人もの人材不足は介護業界における深刻な問題であり、迅速に対策を講じる必要があるでしょう。高齢者の生活の質に直接影響を及ぼす問題であるため、社会全体にとっても急務といえます。

介護人材が不足する背景

介護人材不足の問題には、以下のような原因があります。

  • 少子高齢化
  • 低賃金
  • 職場の人間関係

いずれも根深い問題であり、簡単には解決できない問題です。以下、詳しく説明いたします。

原因1:少子高齢化

15歳から64歳までの生産年齢人口が減少し続けていて、日本は世界でも類を見ない超高齢社会に突入しています。今後もこの流れは加速することが予想されており、今まで以上に、介護サービス職に求める人材の幅を柔軟に広げる必要があるでしょう。

人口動態の変化は、介護サービスの需要増加に直結します。生産年齢人口の減少が、労働市場における介護人材の供給を縮小させていることはいうまでもありません。介護業界は労働集約的な分野であり、人手が不足するとサービスの質や量に直接影響を及ぼします。

原因2:低賃金

介護サービス職はしばしば、きつい労働をともなう職場とされていながら、給与が低いという課題があります。厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると2022年9月時点での介護職員の平均給与額は317,540円であるのに対し、一般社団法人日本経済団体連合会の「2021年6月度『定期賃金調査結果』の概要」によると全産業の平均賃金は391,408円であるため、比べると待遇の違いは明らかです。

給与の低さは、介護職への魅力を著しく損なっており、多くの潜在的な労働力が介護分野へ向かうことを阻む一因となっています。労働条件を改善することは、介護業界全体の魅力を高め、より多くの人材を引きつけるために不可欠でしょう。

原因3:職場の人間関係

公益財団法人介護労働安定センターが行った「令和3年度『介護労働実態調査』結果の概要について」によると、介護職を離職した理由のなかでもっとも多く挙げられたのは「職場の人間関係に問題」でした。全離職理由の18.8%を占めています。

介護の利用者から暴言を吐かれたり、利用者の家族からクレームが入ったりすることもあるため、介護職は精神的に負担が大きい仕事といえます。また、介護現場では、介護士や看護師、医師などさまざまな職種の人と仕事を進めます。ケアの仕方や介護に対する考え方が違うと、人間関係に亀裂が生じることもあるでしょう。

介護の仕事はチームでの協力が必要不可欠であり、職場の人間関係は日々の業務にとって重要な要素です。だからこそ職場環境がストレスや対人関係の問題を生むことがあるため、この問題に対する対応が人材確保の鍵にもなるのです。

介護人材を確保するための取り組み

介護人材不足への対処として、今回は少子高齢化や低賃金の課題に関する4つの取り組みをご紹介します。

  • 多様な人材の参入促進
  • 外国人人材の受け入れ促進
  • イメージアップ
  • 介護職員の処遇改善

順番に見ていきましょう。

多様な人材の参入促進

介護人材を確保するための重要な取り組みとして、多様な人材の参入促進も挙げられます。

介護業界における人材不足を解消するために、さまざまな背景を持つ人々を介護分野に引き寄せることも重要です。特に、中高年齢者や他産業からの転職者、介護未経験者の参入を促進することが必要でしょう。異なるスキルや経験は、介護業界に新たな価値を提供することになるでしょう。

また、介護福祉士を目指す学生の増加も必要です。教育機関や業界団体が連携し、介護職の魅力やキャリアパスに関する情報を提供し、若い世代が介護職に興味を持つよう取り組むことが求められます。

外国人人材の受け入れ促進

外国人人材の受け入れ促進も、人材確保のための重要な取り組みです。

日本政府は介護人材の不足を補うため、外国人労働者の活用に力を入れています。経済連携協定(EPA)、在留資格「介護」、技能実習、特定技能などの制度を導入して、外国人労働者を受け入れようとしてきました。

一連の制度により、インドネシアやフィリピン、ベトナムなど多様な国々からの人材が介護業界に流入することが期待されます。

外国人労働者の活用には、一定水準に達している人材を長期間雇用できるメリットがあります。介護人材確保の競争が激化するなかで、採用母数の増加に寄与し、離職率の低下にも効果的です。

また、異なる文化的背景を持つ人材が協力することで、より包括的で柔軟なケアが提供できるようになることも期待されます。

イメージアップ

介護職に対する社会的なイメージの向上も、介護人材を確保するための重要な取り組みです。現在、介護職にはネガティブなイメージが少なからずあり、職業選択の障壁となっています。介護業界の実情と世間の認識には乖離があり、ギャップを埋めるためには業界全体での広報やPR活動が必要です。

鳥取県では介護職のイメージアップのために、中高生を対象にした介護の仕事体験が実施されました。介護の仕事を体験した生徒へのアンケートでは、「体験してみてどうでしたか?」という質問に対して86.1%が「とてもよかった」と、また「今後も参加してみたいと思いますか?」という質問に対して91.1%が「参加したい」と回答しています。

介護職員の処遇改善

介護職員の処遇改善は、人材確保の重要な柱の一つです。取り組み自体は、平成21年の介護報酬改定をきっかけとして、すでに始まっています。

現状、介護職員の給与は徐々に改善されており、厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果のポイント」によると、介護職員等ベースアップ等支援加算を取得している施設・事業所における介護職員(月給・常勤の者)の基本給等について、同加算の取得前(令和3年12月)と取得後(令和4年12月)を比較すると10,060円の増(+4.4%)となっています。また、介護職員処遇改善支援補助金を交付されている施設・事業所における介護職員(月給・常勤の者)の基本給等について、同補助金の交付前(令和3年12月)と交付後(令和4年9月)を比較すると9,210円の増(+4.0%)となっています。

今後の目標は、介護職員の平均賃金を、全産業の平均賃金と同等の水準に引き上げることです。目標達成のために、政府はさらなる処遇改善を予定しています。給与の改善は、介護職員のモチベーション向上や職場への満足度を高める重要な要素であり、結果的に介護分野の人材不足の解消に寄与するでしょう。

介護人材を定着させるための取り組み

介護人材を確保することは重要ですが、同時に彼らを長期間定着させることも重要です。人材定着を目指す取り組みとしては、主に以下の3つが挙げられます。

  • 職場環境の整備
  • 介護ロボット・ICTを活用する
  • 産休や育休制度を整える

一つずつ解説します。

職場環境の整備

多忙な介護の現場では、介護業務以外にも多くの時間を書類作成などの事務作業に費やす必要があります。結果として、残業時間が増えることも珍しくありません。さらに、人員不足が深刻な現場では、スタッフが有給休暇を取りづらい状況に陥ることもあります。

一連の問題は、スタッフの仕事への満足度やモチベーションに影響を与え、職場の定着率に悪影響を及ぼすものです。

状況を改善するためには、働きやすい職場環境の構築が必須です。事業所や施設に雇用管理責任者や相談窓口を設けることなども、有効な対策となるでしょう。責任者や窓口は、スタッフの労働条件や職場内の問題に対して改善策を提案し、実行する役割を担います。

労働環境の改善には、適切な労働時間の管理やメンタルヘルスのサポートなどが不可欠です。スタッフがストレスなく働ける環境が整備されれば、職場への定着率を高めることができるでしょう。

介護ロボット・ICTを活用する

介護人材の定着と効率化において、介護ロボットやICT(情報通信技術)の活用は大きな役割を果たします。

介護ロボットは、高齢者の自立支援や介護者の負担軽減を目的として、ロボット技術を応用したさまざまな介護機器のことです。たとえば、センサー機能を使って遠隔地から高齢者を見守る装置や、移動支援するロボットなどがあります。

また、ICTなどの先端的な技術を活用することにより、介護業務の効率化を図り、職員の時間的な負担を軽減することが可能になります。

介護ロボットやICTを活用し働きやすい職場環境を整えることで、職員の定着を促し、より多くの若手人材を介護業界に引きつけることにつながるでしょう。

産休や育休制度を整える

きちんと制度を整備し、職員がプライベートな事情、とくに出産や育児などのライフイベントに柔軟に対応できる環境を提供することが、離職率を低下させる鍵となります。

産休や育休を取りやすいような体制を構築することが必要です。また、産休や育休を取ったあとも、スムーズに職場に復帰できるような雰囲気を作ることも欠かせません。

職員が仕事と家庭の両方をバランスよく続けられる環境を整えれば、結果的に職員の定着率も向上するでしょう。

―まとめ

この記事では、高齢者を支える介護人材の確保に向けたさまざまな対策について解説し、具体的な解決策を提案しました。

介護職員の処遇改善や多様な人材の参入促進、外国人人材の受け入れ促進など、さまざまな施策が考えられます。また、介護人材を定着させるための取り組みとして、労働環境の改善・介護ロボットなどの活用などの施策を取り上げました。

重要なのは、介護人材確保だけでなく、その人材を長期間定着させるための努力も欠かせないことです。

Kiralia(キラリア)とは?

Kiraliaは、職場の衛生管理をサポートするトータル衛生ソリューションプログラムです。Kiraliaのソリューションには「INFECTION CONTROL(感染予防)」と「FOOD SAFETY (食品衛生)」 の2つのメニューをご用意しておりますが、介護現場での感染予防には「INFECTION CONTROL」がおすすめです。

Kiralia INFECTION CONTROLは、介護現場での人の行動や環境、空間をモニタリングしリスクを見える化することで、安全な介護環境の構築に大きく貢献します。

介護現場での衛生管理を徹底することで、職員も気持ちよく働けてそれが人材の定着に繋がる可能性も高くなるでしょう。

介護現場での衛生管理にお悩みの施設様は是非お気軽にご相談ください。

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