コラム

2018年10月9日更新

介護職の外国人採用 在留資格「介護」導入でどう変わる?

団塊の世代が後期高齢者となる2025年、日本では介護職員が約38万人不足するといわれ、人材確保が急務とされています。新卒採用の強化や高齢者の活用など施策を打ち出す施設が増える中、「外国人採用」に関心をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
一口に外国人採用といってもその方法はさまざまで、入社前に特有の手続きが必要な場合もあります。介護職における外国人採用の現状や、採用方法のポイントについてご紹介します。

日本で働く外国人介護職員はどれくらい?

日本で働く外国人は、何らかの在留資格を得て仕事に就いています。「永住者」や「定住者」、日本人の「配偶者」となっている人は自由に仕事を選べますが、その他の在留資格では仕事内容や就労期間に制限が設けられています。外国人スタッフの長期雇用を考えるなら、彼らの取得している在留資格に注意する必要があります。
現在、介護職に関する外国人の受け入れ制度には(1)在留資格「介護」、(2)EPA(経済連携協定)、(3)技能実習生の3種類があります。それぞれの特徴を比較してみましょう。

EPAにおいては2017年10月1日時点でインドネシア、フィリピン、ベトナムの3ヵ国から3,000人以上の介護福祉士候補者を受け入れ、500名以上が資格を取得しています。しかし介護福祉士国家試験の合格率はインドネシア人で62.4%、フィリピン人では36.0%であり、候補者の全てが介護福祉士になっているわけではありません。そもそもEPA本来の目的は「経済活動の連携強化」であり、就労期間も限定されているため、日本国内の人材不足を解消する制度ではないのです。
 
これに代わり人材確保につながると期待されている制度が、2017年9月より創設された在留資格「介護」です。社会福祉系の専門学校を卒業した留学生が、介護福祉士の資格を取得することで日本の企業への長期就労が許可されます。留学生の国籍を問わず、施設系サービスはもちろん、訪問系サービスやサービス付き高齢者向け住宅など介護業界の幅広い分野で働くことが可能です。

在留資格「介護」のメリット

  • 留学生の受け入れ国に制限がない
  • EPAのように複雑な制約がなく介護福祉士を確保できる
  • 訪問系のサービスでも雇用が可能(※技能実習生は事業所内介護のみ)

在留資格「介護」のデメリット

  • 採用を仲介してくれる団体がいない

外国人を採用するための5ステップ 在留資格「介護」のケース

外国人採用においては、基本的な採用フローに加えて在留資格やビザの確認、資格取得に必要な書類の作成といった独自の対応が発生します。ここでは留学生が在留資格「介護」を取得して就労するケースを中心にその手順をまとめました。

1.求人を出す/留学生をアルバイトとして採用する

EPAでは国際厚生事業団が、在留資格「技能実習」では各監理団体が就職をあっせんしますが、在留資格「介護」にはその役を務める公的機関がありません。事業所はハローワークや就職情報サイトに求人情報を掲載し、人材を募集する必要があります。あらかじめ介護職を志す留学生をアルバイトとして確保しておき、介護福祉士の資格を取得し卒業した後に、正社員として雇用する方法も有効です。社会福祉系の専門学校が、連携する事業所に留学生を紹介してくれるケースもあります。

2.面接を行う

面接で確認する主なポイントは志望動機や人柄、コミュニケーション能力などで、日本人の採用面接と大きく変わりません。加えて現在の在留資格や、在留資格「介護」を得るために必要な条件・経歴を満たしているかも確かめます。留学生を面接する時点で確認すべき事項は下記の通りです。

  • 外国人留学生として入国していること(在留資格「留学」であること)
  • 介護福祉士養成施設を卒業または卒業見込みであること
  • 介護福祉士の国家試験に合格していること

上記に加え、内定後に雇用契約の締結など一定の条件を満たすことで、介護職としての就労が可能になります。

3.内定を通知する

採用が決定したら、仕事内容や給与の労働条件を記した内定通知書または雇用契約書を作成します。これらの書類は在留資格を「留学」から「介護」へ変更する手続きで必要です。(※詳細は4へ)また、一般に内定通知書には「在留資格が許可されない場合、内定は無効とする」という条件を加えます。これは不法就労を避けるために効果的です。

4.在留資格の変更の有無を確認する

現在の在留資格については「在留カード」を見ると確認できます。在留カードとは入国管理局が発行する在留許可証で、常時携帯が義務付けられているものです。
留学生の多くは在留資格「留学」を取得していますが、介護職として就職する場合は入社日までに「介護」へ変更してもらう必要があります。変更手続きは留学生本人が行わなければならないので、人事担当者は変更の有無を確認し対応をお願いしましょう。
 
中途採用で、すでに在留資格「介護」を取得している方は変更不要です。しかし、新しい職場での業務が在留資格の活動に該当するか確かめるためにも、入国管理局で審査を受け「就労資格証明書」を取得してもらいましょう。証明書を取っておくことで外国人の方も安心して働けます。うっかり確認せず許可のない状態で就労を続けると、不法就労と判断され事業所と労働者双方が罰せられる可能性(3年以下の懲役若しく300万円以下の罰金)があります。

5.入社前の説明を行う

入社前に給与や労働条件について説明を行います。特に留学生は社会保険への加入義務や額面と手取り額の違いについて知らない方も多いため、事前の説明が必要です。「契約した金額と違う、保険料が引かれるなんて聞いていない」等のトラブルを予防するためにも、日本ならではの制度や仕組みについて解説し、理解を促しておきましょう。

外国人採用では「定着に向けた支援」が必要

介護職における外国人の受け入れが拡大する一方で、人材の離職・帰国も大きな課題となっています。家庭の事情で帰国する場合もありますが、「何でも話せる相談相手がいない」「職場の人とは仕事の話しかできない」といった悩みを抱えている例もあるようです。海外から日本にきた方たちは、仕事面はもちろん生活面でもさまざまな不安やストレスにさらされています。職場に馴染めるよう社内イベントを開催したり、外国人向けの相談窓口を設けたりするなど、積極的に生活支援を行い人材の定着を図りましょう。
また、個々の国の文化に対する配慮も必要です。イスラム教徒の方は食事や飲酒に制限があります。アジア出身の方であれば春節に合わせて長期休暇を希望する職員もいるでしょう。日本文化を理解してもらうだけでなく、相手の国の宗教や文化にも配慮し、企業として柔軟に対応する姿勢が求められます。

増加している自治体のサポート

外国人採用を支援することで、人材不足を解消しようと動き出している自治体もあります。例えば神奈川県綾瀬市は、2018年度からEPAに基づく外国人介護福祉士を受け入れた市内の事業所へ、求人手数料や滞在管理費といった費用を補助する制度を設けました。採用活動には書類作成や説明会の運営など何かとお金がかかりますから、費用補助制度があれば採用に踏み出しやすい介護施設様もいらっしゃるのではないでしょうか。
鳥取県でも同様に、外国人を受け入れる介護事業者に対して経費の一部を補助する取り組みが行われています。また、群馬県では外国人向けの日本語研修開催や、介護事業所へ雇用管理の専門家を派遣するなど、自治体のサポートも充実してきているようです。自治体の助成金や支援を活用しつつ、外国人採用を進める事業所は増えてきそうです。

まとめ

今回は外国人採用の制度や入社までの手順を紹介しました。外国人採用には現場の理解や支援が欠かせず何かと手間が掛かるため、二の足を踏む介護施設様も少なくないと考えられます。しかし、国際厚生事業団の調査によれば、外国人(EPA候補者)を受け入れた施設のうち8割近くが「外国人の受け入れが職場へ良い影響を与えた」と評価しています。実際に外国人を採用した施設からは人材確保に加えて「職場の雰囲気が和やかになった」「職員同士で教え合う風潮ができ、協調性の向上やモチベーションアップにつながった」といった副次的効果も報告されています。外国人スタッフの活用が、人材不足に悩む日本の介護業界を救う一つの手段となりえるかもしれません。

参考文献・参考サイト:
国際厚生事業団「OECD諸国の外国人介護労働者」
国際事業研究協同組合「介護技能実習生とその他の制度の違い」
永井弘行(2017年)『平成29年9月改訂 外国人・留学生を雇い使う前に読む本』セルバ出版

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