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コラム

2025年8月19日更新

福利厚生の充実が離職防止につながる!介護施設に効果的な制度を紹介

監修者 石井富美氏のプロフィール写真

監修者プロフィール/石井 富美(いしい・ふみ)
多摩大学大学院経営情報学研究科客員教授
ヘルスケアビジネス経営人材育成研究所所長
多摩大学医療・介護ソリューション研究所副所長
関西学院大学非常勤講師、大阪公立大学非常勤講師
東京理科大学理学部卒、多摩大学院経営情報学専攻科修了。経営情報学修士(MBA)、医療情報技師、認定医療メディエーター等の資格を持つ。
IT企業でソフトウエア開発に携わっていた経験を病院経営に活かし、病院の新規事業の企画・経営管理・人材育成などに携わってきた。現在はヘルスケア分野に広く携わり、社会人大学院で地域医療経営の講座を持ちつつ、地域包括ケアのまちづくりアドバイザー、医療介護事業の経営サポート、医療経営人材育成活動、企業向け医療ビジネスセミナーなどを行っている。
主な著書:「経営企画部門のマネジメント」「診療データの戦略的活用法」日本医療企画、「複眼で見る医療経済とイノベーション」千倉書房 等

人材の確保と定着が大きな課題となっている介護業界ですが、職員のモチベーションや職場への満足感を醸成する「福利厚生」のあり方も、離職を防ぐための重要な要素となっています。

本コラムでは、福利厚生の重要性や離職防止に役立つ理由を解説し、福利厚生の例も紹介しています。制度を見直す際のヒントとして、ぜひ参考にしてください。

介護業界における福利厚生の重要性

公益財団法人介護労働安定センターの「令和5年度介護労働実態調査*1」によれば、介護職の離職率は改善傾向にあると示されています。しかし、「労働人口の減少」という社会的背景もあり、依然として人材不足は解消には至っていない状況です。

さらに、厚生労働省が公表した「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について*2」では、2040年度には約272万人の介護人材が必要になるとされており、これは2022年度と比べて約57万人の増加にあたります。今後も労働人口の減少が続くことを考えると、人材の確保と定着はますます重要な経営課題となるでしょう。

この課題に対応するための手段として、「福利厚生の整備」も有効だと考えられています。介護職は、身体的・精神的な負担が大きく、日々の業務の中でストレスを感じやすい職種です。だからこそ、職員が安心して働ける環境の整備は、施設として優先的に取り組みたい課題と言えます。

以降では、福利厚生の整備がもたらすメリットや、離職防止に役立つ制度の具体例を紹介します。

  1. *1
    公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査

福利厚生が離職防止や採用にもたらすメリット

モチベーションと満足度の向上

福利厚生は、職員の生活や働き方を支える仕組みとして、仕事への前向きな気持ちを育む役割を果たします。

たとえば、有給休暇の取得を積極的に推奨することで、しっかりと休息が取れる環境が整い、疲労の蓄積からくるモチベーション低下を防げます。同時に、「職員を大切にしてくれている」という実感を抱かせ、職場への満足度を高める効果も期待できます。

定着率アップにつながる

福利厚生の整備は、職員の定着率にもよい影響をもたらします。労働政策研究・研修機構(JILPT)の「企業における福利厚生施策の実態に関する調査 ―企業/従業員アンケート調査結果―*3」によると、福利厚生制度への満足度が高いほど、「現在の職場に勤め続けたい」と考える割合が高いことが明らかになっています。

中でも、特別休暇(慶弔休暇、リフレッシュ休暇など)や時短勤務など、柔軟な働き方を支援する制度は、ライフステージの変化に直面した職員にとって、「離職」ではなく「働き続ける」という選択を後押しするでしょう。

採用活動における競争力の向上

福利厚生は、求職者が職場を選ぶ際の判断材料として、重要な要素の一つでもあります。

前述の「令和5年度介護労働実態調査」では、「現在の法人に就職した理由」として、福利厚生に関連する以下の項目が挙げられています。

  • 仕事と家庭(育児・介護)の両立の支援を充実させているため(16.7%)
  • 事業所・施設の設備・環境が働きやすいため(14.1%)
  • 社内外で研修を受講できる機会が充実しているため(9.4%)

これらの項目からも、福利厚生は職場選びに少なからず影響を与えていることがわかります。今後も採用難が進むとされる中で、福利厚生の充実は職場のアピールポイントとなり、求職者に選ばれるための大きな強みとなるでしょう。

離職防止につながる福利厚生の具体例

ここからは、実際に離職防止に効果が期待される福利厚生の具体例を紹介します。

職員の健康を支える福利厚生

職員に長く働いてもらうためには、健康を支える制度の整備は欠かせません。実際、介護労働安定センターの「令和4年度介護労働実態調査*4」では、「働く上での悩み、不安、不満などの解消に役立っている取り組み」として、「定期的な健康診断の実施」が 43.3%で最多という結果が示されています。このことからも、健康への配慮が職員に安心感を与え、職場への信頼につながっている可能性が読み取れます。

健康を支援する主な制度としては、以下のようなものがあります。

●健康診断における法定外検診の費用補助
乳がん検診、子宮がん検診、脳ドックなどのオプション検査に対し、費用を負担する。

●予防接種の費用補助
インフルエンザや新型コロナウイルスなどの予防接種にかかる費用を負担する。

●メンタルヘルスケア
社内外の相談窓口の設置、カウンセリング支援、ストレスチェック制度などにより、精神的な不調を早期にケア・予防する。

●腰痛対策
マッサージ、整体、鍼灸などの施術費用を補助する。またはコルセットや腰痛ベルトを無料で配布する。

法令で義務付けられている一般健康診断に加え、上記のような法定外の検診項目についても受診を支援することで、職員の健康をより手厚くサポートできます。また、腰痛対策のような日々の負担軽減に直結する制度も、職員の満足度向上に寄与します。

スキルアップを支える福利厚生

自身のスキルや知識を高められる環境があるかどうかは、職員のモチベーションや定着に大きく影響します。令和4年度の同調査で「働く上での悩み、不安、不満の解消に役立っている取り組み」として、「介護能力の向上に向けた研修」が31.8%で2番目に多く、成長を支援する仕組みが職員にとって重要であるとわかります。

キャリア開発を支援する主な制度としては、以下のようなものがあります。

●資格取得支援制度
介護職員初任者研修や実務者研修、介護福祉士などの資格取得にかかる費用を負担する。必要に応じて、業務時間内の学習時間を確保する。

●学習支援制度
業務に関連する外部セミナーや研修会への参加費用を支援するほか、eラーニングを提供し、好きな時間に柔軟に学べる環境を整える。

●社内研修制度
新人向けの基礎研修に加え、OJTや中堅職員向けのステップアップ研修、管理職向けのマネジメント研修などを提供する。

こうした制度は、職員がスキルを高められるだけでなく、「この職場なら成長し続けられる」という実感につながり、離職防止に貢献します。

形だけの制度にならないよう、職員が実際に研修を受講し、スキルアップを着実に図れるような仕組みづくりも重要です。特に、オンライン研修やeラーニングは、職員の都合の良いタイミングで実施できるため、積極的に導入を検討したい仕組みの一つです。こうした環境を整えることで、職員自身が成長している実感を得られ、定着率向上にも繋がります。

介護施設で行うべき研修については、「介護職員が辞める理由とは?定着率アップに有効なのは教育・研修」で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

働き方の柔軟性を高める福利厚生

介護職は、シフト勤務や夜勤があるなど、一般的な職種に比べて働き方が限定されやすい傾向があります。そのため、仕事と家庭、プライベートを両立できる柔軟な勤務制度が整っているかは、職員が長く働き続けるうえで重要なポイントになります。

柔軟な働き方を支援する制度としては、以下のようなものがあります。

●時短勤務制度の拡充
法定の制度に加え、子が対象年齢を超えても利用可能とするほか、育児・介護以外に通院や本人の健康状態を理由とする短時間勤務も認めるなど、対象範囲や利用条件を柔軟に拡大する。

●育児・介護休業制度の拡充
法定の制度に加え、休業期間の延長、復帰支援、休業中の給与補助制度などを整備する。施設内保育施設の整備も有効であり、自治体によっては補助金を受け取れる場合もある。

●柔軟なシフト運用・希望休制度
家庭の事情に応じた時間帯調整や、希望シフトの事前申請などを受け入れる。週休3日制で1日 10 時間労働とする制度や夜勤無しの特別シフト制を導入する施設もある。
 
●特別休暇制度
一般的な慶弔休暇に加え、アニバーサリー休暇やリフレッシュ休暇など独自の特別休暇を導入する。

法令で義務付けられた制度にとどまらず、職員のニーズに合わせて働き方の選択肢を広げることが、安心して働き続けられる職場づくりにつながります。

個別ニーズに応えるユニークな福利厚生

一般的な制度に加えて、職員の個別ニーズや興味・関心に応じたユニークな福利厚生を導入する動きが広がっています。職員のエンゲージメント向上や採用面での差別化につなげる手段として、選択肢に加えてみても良いでしょう。

ユニークな制度としては、以下のようなものがあります。

●フィットネス手当・筋トレ支援
フィットネスジムの利用料金を負担する。筋トレを趣味とする職員に対して、プロテインの支給やボディビル大会出場時の特別有休を付与するケースもある。

●スポーツ観戦制度
スポーツチームのシーズンシートを法人契約し、職員が予約制で自由に利用できる制度。リフレッシュや職員間の交流促進につなげる。

●外国人職員の定着支援
住宅手当の支給や契約のサポート、日本語・資格取得のための学習支援、定期的な生活相談、コミュニティ形成支援などを行う。外国人職員が安心して暮らし、長く働ける環境を整備する。

フィットネスや筋トレに関する支援は、日常的に身体を使う場面が多い介護職にとって特に嬉しい制度です。職員の健康維持やパフォーマンス向上に役立つだけでなく、筋トレを趣味とするような、体力のある人材の採用促進にもつながります。こうした人材は、移乗介助など体力を要する業務で活躍が期待できます。

また、外国人職員向けのサポート体制を整えることは、今後ますます採用が進むと見込まれる国際人材の定着において重要な鍵を握るでしょう。

制度を利用しやすい環境の整備も不可欠

一方で、制度があっても「忙しいのに休まれると困る」という周囲の空気感や、「休んだら誰がその仕事をするのか」という不安から、実際に活用するのは難しいという声も少なくありません。

制度を活用してもらうためには、職場全体で制度の意義を共有するとともに、支え合う文化や制度を前提とした業務の仕組みを整えていくことも重要です。

自施設に合った福利厚生で離職を防ぐ

さまざまな福利厚生制度を取り上げましたが、その重要性や必要性は施設ごとに異なります。職員の年齢層や家庭状況、勤務形態などを踏まえたうえで、実態に即した制度を導入することが重要です。現場の声に耳を傾けながら整備された福利厚生は、職員の定着率の向上に効果を発揮するでしょう。

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