コラム

2024年11月26日更新

適切なフィードバックが職場定着&介護の質アップにつながる!実施ポイントも解説

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監修者プロフィール/赤羽 克子(あかば・かつこ)
元聖徳大学心理・福祉学部社会福祉学科教授
社会福祉施設勤務を経て教育の世界に入る。現在はマーシーハンディキャップサポート協会理事。
著書:「3福祉士の仕事がわかる本」日本実業出版社、「楽しく学ぶ介護過程」時潮社、「介護福祉学辞典」ミネルヴァ書房、「QB介護福祉士国家試験問題解説集」メディックメディア など多数。

介護現場ではスタッフのモチベーションを維持し、成長を促すためにフィードバックが重要な役割を果たします。職場定着率の向上や介護の質を高めるためにもフィードバックは欠かせないものですが、方法を誤ると職員の成長を促せないだけでなく、不満や離職を引き起こす要因にもなり得ます。介護の現場では、適切なフィードバックの方法に悩んでいるリーダーの方々も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、適切なフィードバックの方法や実施ポイントを紹介し、職場定着や介護の質向上にどのように結びつくのかを紹介します。

介護現場におけるフィードバックの重要性

仕事上におけるフィードバックとは、後輩や部下の行動に対して具体的に評価や改善点を伝えることを指し、成長の促進や業務改善を目的に行われます。実施した行動や結果について何が良かったのか、反対に何を改善すべきかをフィードバックを通じて伝えることで、後輩や部下は過去の行動を見直し、自分でより良い行動を選択できるようになります。

改善点が明確になったり、プロセスや結果が認められたりすることで、モチベーションや信頼関係の構築にもプラスの効果をもたらす場合があります。その結果、介護の質や生産性の向上が期待でき、職場定着にもつながるため、的確なフィードバックは重要な役割を果たす取り組みと言えます。

フィードバックをする前に押さえておきたいこと

フィードバックを行う際に留意すべき基本的な視点は、以下の4つです。

結果とプロセス両方に対して行う

フィードバックは業務の結果やプロセスという事実に焦点を当てて行うことが重要です。結果だけに着目すると、努力するモチベーションや難しいことに挑戦する精神意欲が低下する恐れがあります。そのため、達成した目標と成果に対する評価の結果、結果に至るまでの行動や工夫、方法などといったプロセスに対してバランス良くフィードバックすることが重要です。

具体的・客観的に伝える

良いフィードバックは、抽象的な言葉や感情的な表現ではなく具体的な行動や事実にもとづいている必要があります。「もっと頑張って」といった曖昧な内容や、「なんかやる気ないよね」といった主観的な内容は良いフィードバックとは言えません。具体的かつ客観的な観察結果やデータをもとに伝えることで、どの点が評価されたのかが明確になり、受け手は理解しやすく、受け入れやすいフィードバックになります。

性格や人格に対する内容は含めない

個人の性格や人格に関する内容を含めるのは避けるべきです。フィードバックは対象者の行動や業務の結果、プロセスに対して行われるべきであり、個人の性格や人格について言及するのは単なる批判であり、自己肯定感を下げる危険があります。また、ハラスメントのリスクも伴います。あくまで業務上の行動にフォーカスし、性格や人格とは切り離して伝える必要があります。

良い点・悪い点の両方を伝える

悪い点だけでなく良い点を伝えることも、フィードバックの基本です。良い点を伝えると自分の努力が認められていると感じるなど、自己評価が高まり前向きな姿勢が生まれます。また、改善点を具体的に伝えることで、どこを改善すべきかを理解しやすくなり、成長の指針となります。相手の性格や状況にもよりますが、先に良い点を伝え、その後に改善点を具体的に示すなど、良い点と悪い点のバランスを考慮すると効果的です。

フィードバックが必要な3つのシーン

業務に改善すべき点が見られた場合

チーム内の業務において、ケアの方法や手順、仕事の進め方、報告の方法・タイミング、ご利用者様への接し方などに改善点が見られた場合は、誤った言動が定着してしまう前にフィードバックを通して改善を図る必要があります。その際、その言動が良くない理由や具体的な改善点を提示しましょう。例えば認知症の方に敬語を使用していないスタッフ様に対しては、「軽く扱われているようで不快に思うご利用者様もいます。ご利用者様の状態に関わらず敬語で接しましょう」など、適切なタイミングでフィードバックすることが望ましいです。

事故やトラブルにつながる危険な言動が見られた場合

コンプライアンス違反にあたる言動、事故・トラブルにつながる言動を認識した際も、重大な問題に発展する前に速やかにフィードバックを行う必要があります。この場合もその言動がもたらすリスクや、ご利用者様に与える心理的な影響を伝え、相手に十分理解・納得してもらったうえで、前向きに改善に取り組んでもらうことが重要です。

良い言動が見られた場合

フィードバックというと、改善点を伝えるというイメージが強いかもしれませんが、良い点を伝えることも非常に大切です。自分にとっては「できて当然」でも、後輩や部下にとっては大きく成長した点かもしれません。しっかり見てくれている、評価されているといった意識を持ってもらい、自信やモチベーションの向上につなげ、さらなる成長を促すためには、良い言動にも積極的にフィードバックを行うのが望ましいです。

良いフィードバックをするための4つのポイント

1.「ティーチング」と「コーチング」は区別する

フィードバックを行う際には、ティーチングとコーチングを使い分けると効果的です。ティーチングとは、仕事に必要な知識やスキルを直接的に教える指導方法で、何をどうすればいいのかが明確になります。一方コーチングとは、本人自らが気付きや改善点を導き出せるよう、傾聴や問いかけを用いて間接的にサポートする、自己解決能力を高める方法です。急を要する業務について教える場合はティーチングを、成長意欲の高い人にはコーチングを活用するなど、業務の種類やスタッフ様の特性に応じて使い分けるのが理想的です。

2.具体的に伝える

フィードバックは具体的な内容にする必要があります。不快感を与えないようにと抽象的な表現を使うと意図がうまく伝わらず、かえって不安感が残ってしまう恐れがあります。
例えば「排泄介助のとき、もう少しご利用者様に配慮してね」といった指摘では、改善すべき点が曖昧です。「排泄介助のときはご利用者様のプライバシーを確保するために、ドアは必ず閉めて、排泄物に関する情報は他のご利用者様の前で話さないようにしよう」など、改善点を具体的に伝えることを意識すると、相手がどこを改善すべきかを理解しやすくなります。

具体的に伝えたいときはSBI型が便利

フィードバックの際に内容を具体的に伝えようと思っても、言いたいことをうまくまとめたり、伝える順序を整理したりするのが難しいと感じる人は少なくありません。そんなときにおすすめなのが、SBI型の活用です。SBI型はフィードバックで使われる型の1つです。伝えたい内容を「S(Situation)」「B(Behavior」「I(Impact)」の3つの要素に分けて伝えることで、分かりやすく具体的なフィードバックを提供でき、相手の改善すべき点などが明確に伝わりやすいというメリットがあります。

●SBI型
  • S(Situation):どのような状況で 【例】排泄介助のとき
  • B(Behavior):どのような行動をし 【例】ドアを開けたままにしていた
  • I(Impact):どのような影響・成果をもたらしたのか 【例】ご利用者様が恥ずかしそうにしていた

SBI型のフィードバックは、フィードバックの対象となる状況、行動、影響・成果を整理して伝えるため、相手がより納得しやすくなります。

3.意思疎通を図る

一方的に評価や指摘の内容を伝えるだけでは、良いフィードバックとは言えません。相手の状況や意見、考えにも寄り添いながら意思疎通を図ることで、フィードバックの効果が高まります。例えば「改善に向けて何かいいアイデアはあるかな?」と意見を求めてみたり、「◯◯が予定より遅れていたけど、何か困ったことがあったのかな?」などと、やわらかい言葉づかいで相手がリラックスして話しやすい雰囲気の中で事情を聞いたりすることで、誤解を避け、相手の理解も深まります。フィードバックを指示や指摘としてではなく、「対話」として捉え、双方向のやり取りを意識しましょう。

4.日頃からコミュニケーションを取る

フィードバックの成功には、双方の信頼関係という土台が不可欠です。信頼関係があれば、例えフィードバックがネガティブな内容であっても、「自分が成長できるようにアドバイスしてくれているんだ」「自分のためにフィードバックしてくれているんだ」などと、ポジティブに受け止めてもらいやすくなります。また相手が前向きに捉えてくれるという安心感があるため、伝える側のストレスも軽減されます。日頃からこまめにコミュニケーションを取り、良好な関係を築いておくことが大切です。

まとめ

フィードバックを行う際に大切なのは、自分もかつては新人だったことを忘れないようにすることです。当時、先輩職員から受けた嬉しかったサポートや、感じていた不安や戸惑いを思い出し、今度は自分がその経験を活かして、職員に寄り添ったフィードバックを心がけましょう。

業務改善ナビでは、フィードバックと合わせて活用すると効果的な教育チェックシートもご用意しています。以下のコラムで詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。

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