コラム

2024年12月24日更新

研修報告書を活かす!介護現場のリーダーが知っておきたいポイント【テンプレートあり】

監修者 伊藤亜記氏のプロフィール写真

監修者プロフィール/伊藤 亜記(いとう・あき)
株式会社ねこの手 代表取締役
短大卒業後、大手出版会社へ入社。祖父母二人の介護と看取りの経験を機に、社会人入学にて福祉の勉強を始める。98年、介護福祉士を取得し、老人保健施設で介護職を経験し、ケアハウスで介護相談員兼施設長代行を務める。
その後、大手介護関連会社の支店長を経て、介護コンサルタント「株式会社ねこの手」を設立。
現在、旅行介助サービスや国内外の介護施設見学ツアーの企画、介護相談、介護冊子制作、介護雑誌の監修や本の執筆、連載、セミナー講師、TVコメンテーター、介護事業所の運営・営業サポートなど、精力的に活躍中。現在、年間200回以上の全国での講演やセミナーをこなす。特に介護記録の書き方や実地指導対策、介護業界の集客法、介護職のモチベーションアップ、介護職の人材育成、離職防止などの講義で全国的に高い人気を得ている。
2010年4月、子どもゆめ基金開発委員就任。医療・福祉法人の顧問や大手介護会社のコンサルタントも多数務める。
介護福祉士/社会福祉主事/レクリエーションインストラクター/学習療法士1級/シナプソロジーインストラクター/スマート介護士

介護施設ではさまざまな研修が実施されており、研修の成果を測るために研修報告書の提出を求めているケースも多くあります。しかしスタッフ様が報告書作成に意欲的でない、文章の作成が苦手であるなどの理由で、報告書の品質に課題を感じているリーダー様も少なくないでしょう。

そこで今回は、スタッフ様に効果的な研修報告書を書いてもらうためのポイントを紹介します。

研修報告書の役割は?

研修受講者自身の学びを深める

報告書は受講者自身の学びをより深めるために有効です。報告書の作成にあたって研修内容を振り返り、自分の言葉でまとめていくことで情報が整理され、知識やスキルの定着につながります。また研修を通して、今までの業務を振り返ったり、今後の業務にどう活かすかを考えたりするプロセスが、新たな学びを生み出します。

学びを共有して組織の成長につなげる

報告書を通して、研修を受講していないスタッフ様が研修内容から気付きを得ることで、組織全体のスキルアップが期待できます。また報告書がきっかけでスタッフ間での意見交換が行われ、ケアの質向上のためのアイデアや改善策が生まれるといった効果もあります。

研修の効果検証を行う

報告書には研修の効果を検証するという役割もあります。施設運営者様が期待していたような効果が得られたのか、得られなかった場合、何を改善すべきなのか、報告書を元に検討できます。また、今後の内部研修の内容や外部研修の選択を検討するにあたり、現場のニーズや課題を把握するための重要な資料になります。

法定研修を受けた証になる

運営指導においては、研修記録のテーマや時間、場所、参加者、内容、資料などを確認されますので、スタッフ様に研修報告書を作成いただくことは、法定研修を受けた証にもなり、介護施設全体で資質向上に努めている証にもなります。

●対象となる法定研修の一例
  • 認知症及び認知症ケアに関する研修
  • プライバシーの保護の取り組みに関する研修
  • 身体的拘束等の排除にかかる研修
  • 倫理及び法令遵守にかかる研修
  • 事故の発生防止等に関する研修
  • 事故の発生など緊急時の対応に関する研修
  • 非常災害時の対応に関する研修
  • 感染症及び食中毒の発生の予防等に関する研修

知っておきたい研修報告書の基本構成

研修報告書を活かすためには、事前にどのような内容を報告してもらうべきかを整理しておくことが重要です。基本的な構成は以下の通りです。

①氏名
②実施日時
③実施場所
④研修名
⑤講師名
⑥研修内容
⑦所感

⑥、⑦の「研修内容」と「所感」は報告内容に自由度が高いため、書き手の文章力によって品質が左右されます。この2項目は、今後の業務に影響を及ぼす項目のため、書き方にルールを設けるのが有効です。

「研修内容」は、文章で記載すると情報が散らばってしまい把握しにくいため、研修資料の目次などをもとに箇条書きで簡潔に記載するように促しましょう。

「所感」には、研修を通じてどんな知識やスキルを得たか、どのように実務に応用していくかなどを具体的に記載してもらいましょう。

●所感の例
  • 今回の「認知症ケア」の研修では、BPSD(行動・心理症状)の対処法が非常に役立つと感じました。特に、焦燥感や混乱が見られるご利用者様への対応について、声掛けやアイコンタクトを使った落ち着かせ方を具体的に学べたので、次回の現場で早速試してみようと思います。ケアがうまくいかないときに焦らず、時間をかける姿勢の重要性も再確認できました。
  • 今回の「高齢者の誤嚥予防」の研修では、誤嚥リスクが高いご利用者様に対する食事形態の工夫や嚥下体操の効果を学びました。特に、姿勢調整の重要性が実例を通じて具体的に理解でき、今後、リスクの高いご利用者様には食事時の姿勢指導を徹底しようと考えています。また、チーム内で誤嚥対策に関する情報共有の機会を増やすことも必要だと感じました。

このように形式を統一することで、書きやすいだけでなく、読み手も内容を把握しやすくなります。

効果的な研修報告書を書いてもらうためのポイント

テンプレートを用意する

職場として研修報告書のテンプレートを用意しておくと、報告書の質を保ちつつ、書き手の負担も軽減できます。読み手が必要とする情報をあらかじめ指定しておけば、書き手の文章力に関係なく、重要な情報を漏れなく記載してもらえます。書き手にとっても何を書くべきか迷わずに済むため、時間をかけすぎることなく報告書を作成できます。なお「喀痰吸引等研修」など、厚生労働省が参考となるテンプレートを用意しているケースもあります。

書き方を指導する

繰り返しになりますが、特に所感の部分は自由度が高いため、書き手によっては単なる感想や資料を記しただけになったり、時には、何を伝えたいのかわからない文章になってしまうこともあります。わかりやすく伝える手法の一つとしてPREP法(プレップ法)というものがあります。「Point(結論)」「Reason(理由)」「Example(具体例)」「Point(結論)」の頭文字を取ってPREP法といい、まず結論を述べ、それを支える理由を説明し、理由を裏付ける具体例を示し、最後に再度結論を確認する形で締めくくる構成方法です。これを用いて先ほどの所感の例文を書き直してみましょう。

●PREP法を用いた文章例
 
Point(結論)
今回の認知症ケア研修を通じて、利用者の症状に応じた対応力を向上させることができました。
 
Reason(理由)
認知症の進行度合いや症状に応じたコミュニケーション方法を学び、特に非言語的なサインに気づく重要性を詳しく知れたためです。
 
Example(具体例)
例えば、利用者が食事を拒否する際、単に言葉で促すのではなく、表情や動作からストレスや混乱の兆候を読み取り、静かな環境を整えることが有効であると教わりました。
 
Point(結論)
このアプローチを現場で実践することで、利用者の症状に応じた対応力が向上し、よりスムーズにケアが進むと感じています。

いかがでしょうか。このようにPREP法を用いれば、受講者自身が研修による学びを整理することができるだけでなく、読み手も研修の成果を明確に理解できます。

フィードバックを行う

研修報告書を受け取ったら、読んで終わりにせずに必ずフィードバックを行いましょう。フィードバックがないと報告書を書く意義が伝わりづらく、報告者のモチベーション低下につながりかねません。報告書作成が不慣れなスタッフ様の場合、何が正解かわからないまま書き続けることになり、心理的にも負担をかけてしまいます。次回以降、より効果的な研修受講と報告書を作成してもらうためには、良い点や改善点を具体的に伝えることが大切です。
 
慣れるまでは報告書の書き直しをしてもらう場合もあると思います。その際は書き直す理由を伝えた上で、どこをどう書き直すか、具体的な指示するようにしましょう。そうした積み重ねが書き方のスキルアップにもつながります。

チームで共有する

研修報告書をチームで共有する機会を設け、ケアの質の向上などに役立っていると実感してもらうことも重要です。研修内容について意見交換を行い、良い気付きは褒めたり、認め合ったりすることで、報告書作成や研修そのものへのモチベーション向上が期待できます。また、他のスタッフの報告書の内容を通して、自分の報告書の質を高める気付きを得られる場合もあります。

まとめ

人材育成が課題である介護業界において、一つひとつの研修の効果を最大化させるために研修報告書は欠かせません。今回紹介したポイントを踏まえ、学びの定着や研修の改善につながる取り組みを行うようにしてください。
 
 今回、研修報告書テンプレートをダウンロード資料としてご用意しました。効果的な研修報告書を書いてもらうために、ぜひご活用ください。

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