コラム

2025年1月28日更新

【食事介助編】教育チェックシートを活用して、新人介護職員教育を効率化!

監修者 伊藤亜記氏のプロフィール写真

監修者プロフィール/伊藤 亜記(いとう・あき)
株式会社ねこの手 代表取締役
短大卒業後、大手出版会社へ入社。祖父母二人の介護と看取りの経験を機に、社会人入学にて福祉の勉強を始める。98年、介護福祉士を取得し、老人保健施設で介護職を経験し、ケアハウスで介護相談員兼施設長代行を務める。
その後、大手介護関連会社の支店長を経て、介護コンサルタント「株式会社ねこの手」を設立。
現在、旅行介助サービスや国内外の介護施設見学ツアーの企画、介護相談、介護冊子制作、介護雑誌の監修や本の執筆、連載、セミナー講師、TVコメンテーター、介護事業所の運営・営業サポートなど、精力的に活躍中。現在、年間200回以上の全国での講演やセミナーをこなす。特に介護記録の書き方や実地指導対策、介護業界の集客法、介護職のモチベーションアップ、介護職の人材育成、離職防止などの講義で全国的に高い人気を得ている。
2010年4月、子どもゆめ基金開発委員就任。医療・福祉法人の顧問や大手介護会社のコンサルタントも多数務める。
介護福祉士/社会福祉主事/レクリエーションインストラクター/学習療法士1級/シナプソロジーインストラクター/スマート介護士

教育チェックシートは、職員のスキルを可視化できる教育支援ツールです。教育チェックシートを活用することで、適切・効率的かつ一貫した教育が可能です。新人職員のスキルに合わせた育成ができ、品質や内容が一貫した介護サービスの提供を目指せます。

今回は「食事介助」をテーマに、教育チェックシートの重要性や具体的なチェック項目を紹介します。

教育チェックシートとは

教育チェックシートは、職員のスキルを可視化できるツールです。業務に必要なスキルや知識を整理し、それらの習得状況を確認するためのツールとして、主に新人教育で活用されています。

食事介助教育チェックシートのイメージ

  • 食事介助教育チェックシートのイメージ

教育チェックシートを活用するメリットとしては、「教育の一貫性を保てる」「習得状況が把握しやすくフィードバックが行いやすい」ことなどが挙げられます。また、教育担当者と新人介護職員とのコミュニケーションをスムーズにするための手段としても有効です。

介護現場で教育チェックシートを取り入れる必要性については、「効率的な新人介護職員教育にはチェックシートが必須!【排泄介助編】」でご説明していますので、詳しくはそちらをご覧ください。

食事介助におけるチェックシートの役割

食事介助は排泄介助や入浴介助などと並ぶ基本的な介護業務の一つです。
高齢者は嚥下能力が低下していることが多いため、正しい介助が行われないと、窒息事故や誤嚥を引き起こす恐れがあります。食事の際は、飲み込みに問題がないか、義歯の装着状況などを確認しながら、ご利用者様のペースに合わせて介助を行うことが重要です。

ご利用者様によって食事形態が異なる点にも注意が必要です。調理や配膳を正しく行い、ご利用者様に適した食事が提供されているかのチェックが求められます。

新人職員がこれらのポイントを確実に身に付けるには、スキルを一覧化し、計画的な習得を促す教育チェックシートが役立ちます。

基本的な食事介助スキルのチェック項目

食事介助の基本

適切な食事介助を行うには、まずその基本を理解しておく必要があります。食事介助の目的や介助時の適切な姿勢、ご利用者様ごとに個別に配慮すべき点と、その管理方法などをしっかり理解できているかが大切なチェックポイントです。

●チェック項目例

□食事介助の目的を理解している
□食事介助時の正しい姿勢を理解している
□アセスメントの内容(経口摂取の可否・食形態・アレルギー・水分摂取量・主食の形態・嗜好・歯の状況・食事制限・器具)を理解している
□食札の見方を理解している

事前準備

食事の前に、ご利用者様に排泄や手洗いを促す声がけができているか確認します。とろみ剤の必要性や義歯の装着状況など、個別に必要な配慮についても確認し、誤った介助が行われないよう注意が必要です。窒息や誤嚥を防ぐために、正しい姿勢は特に念入りに確認します。

介助者は手指衛生を行い、必要に応じて手袋、ガウン・エプロン、マスク、ゴーグルなどの個人防護具を着用します。テーブルの清掃を行うなど、感染予防に努め、衛生面への配慮も常に徹底します。ご利用者様が安全かつ衛生的な環境で食事を楽しめるよう努めましょう。

●チェック項目例

□介助者の体調確認(平熱を超える熱はないか?怠さはないか?咳は出ていないか?)を行っている
□食事をする環境(ゆったりした曲調の音楽を流す・室温)を整えている
□食べる前に準備体操(嚥下体操)を実施している
□調理から喫食までの時間が2時間以内であることを確認している
□ご利用者様の座席の把握をしている
□食事前に排泄の声がけをしている
□食事前にご利用者様の手指衛生(手洗い・アルコール消毒)を実施している
□エプロン、箸、身体に合わせた自助食器、飲み物、タオルなど個別の準備をしている
□個別の補食(家族持ち込みなど)の準備をしている
□とろみ剤の使用目的を理解している
□とろみ剤が必要なご利用者様を把握している
□義歯が正しく装着されているか確認をしている
□急いで食事を召し上がられる傾向のご利用者様を把握している
□座位で食事を召し上がる方が、正しい安全な姿勢であるか確認している
※少し前かがみになる・背は90度にする・足は必ず床につく・体とテーブルの間に握りこぶし一つぐらいの隙間をあける・深く腰をかける・椅子の高さは、膝が90度に曲がるくらいにする・ テーブルの高さは腕を乗せて肘が90度に曲がるくらいにする・ 麻痺側に傾かないようクッションなどで支える など
□ご利用者様の覚醒状態を確認している
□配膳車が到着したら「今からお食事を皆さまのお席までお持ちいたします」などのお声がけをしている
□配膳車を安全に所定の場所まで移動させている
□配膳時は食札(食札の色含め)を確認し、ご利用者様のお名前を呼んで、適した食事であることを確認している
□介助者は手指衛生を行っている
□介助者は必要に応じて個人防護具(手袋、マスク、エプロン、ゴーグルなど)を着用している
□テーブルと床の上を清潔に整えている

食事中

食事中の介助では、唾液の分泌や咀嚼の準備を促すために、まず食事内容を説明します。職員が立って介助するとご利用者様が見上げる形になり、誤嚥を引き起こす恐れがあるため、目の高さを合わせることが大切です。

また、飲み込みの確認や、顔色・表情などの観察を忘れず、異常時には速やかに上長などに報告・相談を行うよう指導しましょう。無理強いをせず、ご利用者様の体調やペースに合わせた対応が重要です。

●チェック項目例

□ご利用者様の身だしなみを整え、衣服を汚さないようにエプロンを使用している
□食事の時間であることをお声がけし、食事内容を説明している
□介助者は健側に座り、ご利用者様と同じ目の高さで介助している
□安定した座位が取れているか、確認している
□食べる前に水分を飲んでいただき、喉の通りを良くし、誤嚥を防止している
□お声がけし、飲み込みを確認してから次の食事をおすすめしている
□ご利用者様の習慣に合わせ、1品ずつおすすめしている
□自力摂取のお声がけをしている
□ご利用者様の能力に合わせた介助を実施している(全・一部介助、見守り、声がけなど)
□介助者は食事中の誤嚥などに注意して見守りや観察(顔色、表情、食欲、口内・嚥下状態など)し、監視にならないように配慮している
□食事中、周りのご利用者様にも注意を向けている
□摂取が進まないときは無理強いせず、上長や看護職員に報告・相談をしている
□異常時には上長や看護職員に報告している

食事後

食事後にはまず口内に何も残っていないことを確認し、義歯の洗浄や歯磨きなどの口腔ケアを適切に行えているか確認します。食べ物が口内に残っていると、虫歯や歯周病、誤嚥、窒息などの原因になるため注意が必要です。

下膳や片付けも食事介助の一環です。感染対策を考慮し、テーブル周りの湿式清掃やエプロンの処理が適切に行えているかもチェックしましょう。ご利用者様の意向や傾向を把握するために、記録を残すことも重要です。

●チェック項目例

□口内に何も残っていないことを、口腔ケアの際に確認している
□ご利用者様ごとに義歯の使用を、口腔ケアの手順に沿って把握している
□義歯の着脱、洗浄や歯磨きなど、口腔ケアを手順に沿って適切に行っている
□口腔清拭の理由、方法を口腔ケアの手順に沿って、理解して行っている
□口腔ケア時は必要に応じて個人防護具(手袋、エプロン、マスク、ゴーグルなど)を着用している
□自分でできる口腔ケアは自分でしていただくよう、お声がけし促している
□口腔ケア後、すぐにベッドでお休みにならないようお声がけや留意をしている
□食事量の確認と記録の仕方を理解し、適切に下膳をしている
□お食事中のご利用者様に配慮し、配膳車移動のタイミングを理解し適切な移動を行っている
□テーブル上下の清掃と片付けを実施している
□個人防護具(手袋、ガウン・エプロン、マスク、ゴーグル・フェイスシールドなど)の片付けを、感染予防の手順を理解した上で適切に実施している

適切な食事介助で食事時間を楽しく

ご利用者様が安全に楽しく食事をしていただくためには、食事の準備から食後に至るまで、さまざまな介護スキルが必要です。教育チェックシートを活用し、食事介助スキルを適切に学べる仕組みをつくることで、新人職員が介護場面に応じたより良いケアを提供できるようになります。

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