コラム

2019年6月18日更新

介護職員等特定処遇改善加算と介護職員処遇改善加算はどう違う?

介護職員の平均月給は293,450円で、看護職員(368,560円)や理学療法士(343,760円)など、介護に関するほかの職種を下回っています。一方で介護職員の需要は増え続けており、2025年には34万人の人手不足が生じると予測されています。

こうした状況を改善するため、2019年10月から、新たに介護職員等特定処遇改善加算が創設されます。加算取得にはどのような要件があるのか、また既存の「介護職員処遇改善加算」とはどんな違いがあるのか、詳しく解説します。

※平均月給は2017年9月時点、常勤職員の場合。介護職員処遇改善加算の届け出を行っていない事業所を除く。

現行の「介護職員処遇改善加算」のおさらい

初めに、現行の加算制度である介護職員処遇改善加算(以下、処遇改善加算)について、改めて確認しましょう。

処遇改善加算は、介護職員の賃金向上を目的に、介護報酬を加算して支給する制度です。
2011年まで実施されていた介護職員処遇改善交付金を引き継ぐ形で、2012年に運用が開始されました。加算を取得した事業所は、加算額に相当する賃金改善を実施しなければなりません。

キャリアパス整備や職場改善に取り組んでいる事業所は、加算率が高くなる

処遇改善加算の加算率は、事業所のサービス区分と、算定要件により決定します。算定要件にはキャリアパス要件と職場環境等要件があり、満たす要件に応じて5段階に分かれています。要件を多く満たしている事業所ほど加算率が高くなります。

処遇改善加算の算定要件

キャリアパス要件①:
職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系を整備すること。

キャリアパス要件②:
資質向上のための計画を策定し、研修の実施または研修の機会を設けること。

キャリアパス要件③:
経験もしくは資格などに応じて昇給する仕組み、または一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること。

職場環境等要件:
賃金改善以外の処遇改善の取り組みを実施すること。

処遇改善加算の加算率

なお2018年4月の審査時点で、処遇改善加算を請求した事業所は全体の90.7%、そのうち加算(Ⅰ)を請求した事業所は全体の67.9%に達しました。加算率の低い(Ⅳ)(Ⅴ)の算定要件は廃止される見通しです。

加算の取得には、計画書と報告書の提出が必要

処遇改善加算を取得するには、事業所が「介護職員処遇改善計画書」を作成し、自治体(都道府県知事または市町村長)に届け出る必要があります。
また加算を取得した事業所は、加算分の支給を受けた後、自治体に「介護職員処遇改善実績報告書」を提出する必要があります。加算に相当する賃金改善が行われていない場合や、事業所が算定要件を満たさない場合、自治体は加算分を不正受給として返還させたり、加算を取り消したりすることができます。

新設される「介護職員等特定処遇改善加算」とは?

続いて、2019年10月から新たに運用が開始される、介護職員等特定処遇改善加算(以下、特定処遇改善加算)について解説します。

特定処遇改善加算は、技能・経験のある介護職員の処遇改善を目的に、介護報酬をさらに加算して支給する制度です。内閣府が2017年12月に閣議決定した「新しい経済政策パッケージ」で提示された、「勤続年数 10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行う」という方針に基づき、制度設計が行われています。

介護職員処遇改善加算に上乗せして、介護報酬が加算される

特定処遇改善加算を取得すると、既存の処遇改善加算に上乗せする形で、介護報酬が加算されます。加算率は2段階に分かれており、ほかに取得している加算の有無によって傾斜がつけられています。

下記の取得要件を満たせば、「勤続10年以上の介護福祉士」がいない事業所でも加算を取得することができます。

特定処遇改善加算の取得要件

  • 処遇改善加算の、加算(Ⅰ)から(Ⅲ)のいずれかを取得していること。
  • 処遇改善加算の職場環境等要件の中で、「資質の向上」「労働環境・処遇の改善」「その他」の各区分について、1つ以上の取り組みを行っていること。
  • 処遇改善の取り組みについて、厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」やホームページへの掲載を通じて、「見える化」を行っていること。

特定加算(Ⅰ)の取得要件

  • サービス提供体制強化加算、特定事業所加算、日常生活継続支援加算、入居継続支援加算のいずれかを取得していること。ただしサービス提供体制強化加算は最も高い区分、特定事業所加算は従事者要件のある区分に限られる。

※上記の加算を1つも取得していない場合は、特定加算(Ⅱ)となる。

特定処遇改善加算の加算率

経験・技能のある職員の処遇改善を目的としつつ、柔軟な配分が可能

特定処遇改善加算は、技能・経験のある、勤続年数の長い介護職員の処遇改善を目的としています。加算分の配分については事業所の裁量が認められていますが、制度本来の目的が守られるように、一定のルールも定められています。

特定処遇改善加算の配分ルール

  • 「経験・技能のある介護職員」の中で、月8万円の処遇改善となる人、または年収の見込み額が440万円を超える人がいること。
  • 「経験・技能のある介護職員」の平均引き上げ額を、「その他の介護職員」の2倍以上とすること。
  • 「その他の職種の職員」の平均引き上げ額が、「その他の介護職員」の2分の1を上回らないこと。

なお「経験・技能のある介護職員」は、勤続10年以上の介護福祉士が基本となりますが、「勤続10年以上」の判断には事業所の裁量が認められています。ほかの法人などでの勤務期間を勤続年数に加えることや、「勤続10年以上」ではない人を独自の能力評価に基づいて加算の対象とすることも認められています。

計画書と報告書の提出に加え、根拠となる資料の保存が必要

特定処遇改善加算を取得するには、事業所が「介護職員等特定処遇改善計画書」を作成し、自治体(都道府県知事または市町村長)に届け出る必要があります。また加算を取得した事業所は、加算分の支給を受けた後、自治体に「介護職員等特定処遇改善実績報告書」を提出する必要があります。職員の賃金額や改善額などの資料については、提出の必要はないものの、求められれば提出できる状態にしておかなければなりません。
加算に相当する賃金改善が行われていない場合や、事業所が算定要件を満たさない場合、自治体は加算分を不正受給として返還させたり、加算を取り消したりすることができます。

特定処遇改善加算は、処遇改善加算と何が違う?

特定処遇改善加算は、内閣府が「新しい経済政策パッケージ」で示した「勤続年数 10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行う」という方針に基づいて制度設計されています。現行の処遇改善加算とは異なり、技能・経験を持ったリーダー級の職員の処遇改善を目的としていることから、計算方法や配分ルールなどにも違いがあります。

特定処遇改善加算の狙いは、リーダー級の職員の処遇改善

現行の処遇改善加算と新設される特定処遇改善加算は、いずれも介護職員の処遇改善を目的としたものですが、改善の対象が異なります。

特定処遇改善加算が新設される背景には、リーダー級の介護職員の賃金を向上させることで「長く働いても給料が上がらない」という介護業界のイメージを払拭し、人材不足の解消につなげる狙いがあります。

特定処遇改善加算は、処遇改善加算に上乗せして支給される

特定処遇改善加算は、現行の処遇改善加算の(Ⅰ)から(Ⅲ)に該当する事業所を対象に、上乗せする形で介護報酬の加算が行われます。特定処遇改善加算に独自の要件としては、職場環境等要件に該当する複数の取り組みを行うこと、処遇改善の取り組みをホームページなどで「見える化」することがあります。

特定処遇改善加算は、加算率が2段階に分かれる

現行の処遇改善加算の加算率は、キャリアパスや職場環境などに関する要件に基づき、5段階に分かれています。一方、特定処遇改善加算の加算率は、ほかの加算を取得しているかを基準に、2段階に分かれています。なお特定加算(Ⅰ)の加算率を0.9倍した値が、特定加算(Ⅱ)の加算率となるように設定されています。

特定処遇改善加算は、配分にルールがある

特定処遇改善加算は、技能・経験を持ったリーダー級の職員の処遇改善を主な目的としています。加算分を全て勤続年数の長い職員に配分しなければならないわけではありませんが、優先して処遇が改善されるように、「経験・技能のある介護職員の平均引き上げ額を、その他の介護職員の2倍以上とする」などのルールが定められています。

2019年10月に向けた準備を

特定処遇改善加算は、介護現場で長く活躍してきた職員の賃金向上を通じて、介護業界の処遇改善を図る制度です。事業所にとっては、給与条件の向上を通じて、人材確保につなげられるメリットがあります。現行の処遇改善加算の請求率は90.7%に達しており、2019年10月以降は、多くの事業所が新しい加算制度を利用すると見られます。制度開始に合わせて加算を受けられるよう、あらかじめ準備を進めておきましょう。

介護報酬について詳しくは各自治体の窓口にお問い合わせください。

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