コラム

2018年5月14日更新

介護報酬と診療報酬の改定から見る介護事業者の未来
急がれる医療ニーズへの対応 自立支援・重度化防止にも重点

2018年度の診療報酬改定と介護報酬改定の全容が明らかになりました。6年に一度の診療報酬・介護報酬同時改定となった今回の内容を見ると、介護報酬では医療ニーズへの対応や自立支援・重度化防止に重点的な配分がされ、診療報酬では入退院時における介護事業所との連携を評価するなどの改定がなされました。今回の改定率は介護報酬が0.54%、診療報酬がわずかに高い0.55%となりましたが、限られた財源の中でいかに収益を維持拡大させていくか、介護事業者の経営努力が試されることになりそうです。

 
特養は終の棲家として、老健は在宅復帰をさらに推し進める役割
有料など特定施設には医療ニーズ対応と生活の場としての自立支援が求められる

「介護老人福祉施設(特養)」では、基本報酬は従来型・ユニット型個室・従来型個室・地域密着型特養でおしなべて増となりました。医療との連携部分では、特養の配置医師が施設の求めに応じ、早朝、夜間、または深夜に施設を訪問して入所者の診療を行った場合に算定される配置医師緊急時対応加算の新設や、特養内での看取りを進めるため、一定の医療提供体制を整えた施設内で実際に利用者を看取った場合の評価をより充実させるための看取り介護加算の見直し・新設があり、終の棲家としての役割が求められています。
また、生活機能向上連携加算、排せつ支援加算、褥瘡マネジメント加算、低栄養リスク改善加算、再入所時栄養連携加算等が新設されたほか、口腔衛生管理加算、栄養マネジメント加算、夜勤職員配置加算等、要件が見直された加算、そして身体拘束廃止未実施減算の見直し等もありました。
 
介護老人保健施設老健)」は、自立支援と重度化防止の機能をより強化するため、その役割を果たしている老健ほど、高い基本報酬が付くしくみとなりました。その一方で役目を果たせない老健に対しては報酬上のメリハリがつけられ、在宅復帰をめざす中間施設としての立ち位置がより明確化されました。在宅復帰・在宅療養支援機能加算が見直され、在宅強化型老健により厚く付くようになったことと、療養体制維持加算の見直しと新設もそれを後押しするものです。
また、かかりつけ医連携薬剤調整加算の新設、所定疾患施設療養費の見直しほか、特養と共通の、褥瘡マネジメント加算(特養と同様)の新設、口腔衛生管理加算(特養と同様)の見直し、栄養マネジメント加算の要件緩和、低栄養リスク改善加算、再入所時栄養改善加算の新設、身体拘束廃止未実施減算の見直し等もありました。
 
「特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、サ高住、養護老人ホーム、軽費老人ホーム等)では、基本報酬は1単位ずつと微増。自立支援・重度化防止を柱にさまざまな加算の新設が行われ、医療ニーズへの対応と入居者の生活と健康を支える場としての役割が求められてきます。
加算面では、退院・退所時連携加算、入居継続支援加算、生活機能向上連携加算、若年性認知症入居者受け入れ加算、栄養スクリーニング加算、身体拘束廃止未実施減算等の新設。
機能訓練指導員の要件緩和、利用者数上限に見直し、運営推進会議開催方法の緩和等々の変化も見られました。

 
在宅ではケアマネジャーを中心に医療との連携を強化、
他の在宅サービスにおいても自立支援に資する取り組みを評価

「訪問介護」については、身体介護中心型は基本報酬が微増し、当初は大幅減とも予測されていた生活援助中心型については各2単位だけ引き下げ、従来からの介護職員に加えて新たな担い手が創設されました。身体介護への算定のしかたとしては、老計第10号の見直しが行われ、「自立生活支援のための見守り的援助」が明確化されました。従来生活援助に位置付けられていた支援内容も、これに該当すれば身体介護と算定されるようになった点が大きな変化です。加算面での変動は少ないですが、従来加算取得が伸び悩んでいた、生活機能向上連携加算の見直し・新設が行われ、リハ職や医療職との連携に関し算定要件を緩和して取得しやすくなりました。
 
「通所介護」は、基本報酬の設定が従来の「2時間ごと」から「1時間ごと」に見直され、大型事業所は減、通常型は一部減、前回下がった地域密着型(小規模)は増となりました。
生活機能向上連携加算が新設、またADL維持等加算の新設により、バーセルインデックスが導入されて、事業所が自立支援にどれだけ資するサービスを提供したか、アウトカム評価(数値化)が求められるようになっています。栄養改善の取り組みでは、栄養改善加算の見直しにより、外部の管理栄養士による実施でも算定が認められるようになったほか、管理栄養士以外の介護職員等でも介護支援専門員に文書で利用者の栄養状態を共有した場合に算定可能な栄養スクリーニング加算も創設さています。
 
「居宅介護支援」では医療機関との連携強化を見直す内容となっています。「退院・退所加算」として医療機関のカンファレンスに参加した場合は初回600単位(従来300単位)、2回目750単位(同600単位)と大幅に引き上げられました。終末期のケマネジメントについては、末期がんの利用者に対するケアマネジメントに対し、月400単位のターミナルケアマネジメント加算が新設。また、訪問介護等の事業所から伝達された利用者の口腔や服薬の状態等について主治医等に必要な情報を伝達することも義務付けられました。
質の高いケアマネジメント推進において、管理者要件が主任ケアマネジャーであることに変更。公正中立なケアマネジメントの確保の一環として、契約時の説明義務の内容が付加され、特定事業所集中減算の見直しも行われています。
 
「訪問リハビリテーション」においては、自立支援・重度化防止の観点から報酬が引き上げられ、リハビリテーションマネジメント加算を従来の2区分から4区分に見直し、報酬単価は加算(Ⅰ)が230単位(従来60単位)、加算(Ⅱ)が280単位(同150単位)、加算(Ⅲ)が320単位(同150単位)に引き上げられ、加算(Ⅳ)420単位が新設されました。また要支援もリハビリテーションマネジメント加算が適用され、基本報酬は290単位(同302単位)に引き下げられます。
 
「通所リハビリテーション」においても、医師の詳細な指示を加算の要件としたうえで、訪問リハビリテーション同様に手厚く評価され、要支援者についても同加算が新設されました。
 また、障害福祉制度の居宅介護事業所や重度訪問介護事業所が、介護保険サービスも提供する「共生型訪問介護」が新設されています。

 
診療報酬では介護との連携を評価

前回の診療報酬改定で退院支援加算が新設され、患者が退院する際の院内でのカンファレンスや介護事業所との連携が評価されることになりましたが、今改定においては入退院加算と名称を改めます。また入院予定の患者に対し、患者の情報を共有し入院中の生活や治療に対する説明を行うと入院時支援加算が算定できるようになりました。患者の情報は「身体的・社会的・精神的背景」の他、褥瘡リスク、栄養状態、持参薬などとしています。
介護サービスを提供する有床診療所が高齢者の入院を受け入れた場合、「介護連携加算」で評価します。65歳以上が対象ですが40~64歳の特定疾病も対象で入院日から15~30日に限り算定されます。
「訪問診療」では包括的支援加算が新設されました。対象となるのは①要介護2以上②認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱb以上③訪問看護を月4回以上利用④訪問診療(看護)時に処置を行っている⑤特定施設の場合、医師の指示のもとに看護師がたん吸引、胃ろう・腸ろう等の処置を行っている⑥その他、関係機関等との連携のために特に重点的な支援が必要、となっています。

 
介護報酬の大幅アップは見込み薄 事業者はICTの活用で合理化を

以上、駆け足で今期の診療報酬改定と介護報酬改定についてみてきました。医療と介護のニーズは今後ますます高まらざるを得ないのですが、膨張する社会保障給付費と財政赤字のことを考えると、今後の診療報酬や介護報酬が大幅にアップするとは考えられません。将来的には風邪薬や消化薬は自費でとか軽度の人の介護サービスは保険外という事態も起きてくるかもしれません。
 
介護事業者に求められているのは介護の質を落とさないでコストダウンを図るということではないでしょうか。そのためには事務管理コストをどうやって削減するかが課題となります。そのためにはICTの活用は不可避です。さらにAIによるケアプランの作成や介護ロボットの活用も一部では試験的に行われています。人手不足は介護業界の問題だけでなく日本の全産業を覆う大問題です。あの中国ですら「一人っ子政策」の影響で労働力不足に陥るとも言われています。
労働力不足は先進国の共通の課題と言っても過言ではありません。また、今後数年間で介護業界の大幅な再編も考えられます。そうした事態にも対応できる経営者、管理者でありたいものです。

監修:株式会社エス・エム・エス

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