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コラム

2019年10月22日更新

2019年からどう変わった?介護施設への実地指導

2019年5月、厚生労働省は「介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針について」で新たな実地指導の方針を開示。各自治体に対し、今後は「標準確認項目」と「標準確認文書」に重きを置いて実地指導を行うよう通知しました。

今回は、運用指針が見直された背景と、新たな指針の具体的な内容をご紹介します。これまで実地指導を受けたことがない、または今回の変更点をまだ確認されていない施設管理者様は、ご参考にしてください。

 

実地指導の方針が見直された背景

従来の実地指導は「介護保険施設等の指導監督について」(以下、指導監督通知)に基づいて全国の自治体が実施してきました。しかし、「自治体によって指導内容や確認する項目・文書が異なる」「実地指導の実施が低調な自治体がある」といったことが課題となっていました。

厚生労働省は各自治体に対して「指定の有効期間内に最低でも1回以上は実地指導を行うよう」に求めていますが、介護施設が年々増加し対応が難しくなっているという背景もあり、指導の標準化・効率化を図るべく指針の見直しに至ったようです。

厚労省は現在、新たな指針と指導監督通知を踏まえた実地指導を行うよう、各自治体に求めています。

 

新たに示された実地指導の指針とは

上述のように、今回の指針見直しのねらいは、より多くの介護施設に実地指導を行うために、指導の標準化・効率化を図ることです。具体的にどのような指針が示されたのか、施設管理者様が特に押さえるべきポイントを抜粋してご紹介します。

ポイント1:「標準確認項目」と「標準確認文書」の設定

今後は「標準確認項目」と、それを確認するための「標準確認文書」に基づいて実地指導が行われることになりました。介護サービスの質の確保とご利用者様を保護する観点で重要とされる項目・文書が確認対象となり、「不正が見込まれる」などの事情がなければ、原則としてその他の文書は確認されません。

なお、指導対象としては下記7サービスが示されています。サービス名をクリックまたはタップすると、それぞれの標準確認項目と標準確認文書を確認できる外部のページが開きます。まだ確認されていない方はチェックしておきましょう。

  • その他のサービスについては、上記を参考に各自治体が検討するとされている。

ポイント2:実施時間の短縮

標準確認項目と標準確認文書を定めることで、一施設にかかる実地指導の時間を「できる限り短縮する」ねらいがあります。従来は1日がかりで実施していた指導を半日程度に短縮することで効率化を図り、多くの施設に実地指導を行うことができるからです。

ポイント3:集団指導の可能性も

実地指導の頻度についてはこれまでと同じく「指定期間内(6年間)に最低でも1回以上」が基本とされていますが、実現が難しい場合は集団指導にすることも認められました。集団指導の対象となるのは、「過去の実地指導等で事業運営に特に問題がないと認められる」施設とされています。

ポイント4:運用の標準化

実地指導が実施される際は、原則1カ月前までに通知があり、当日の「概ねの流れ」が示されることになりました。また、ケアの質を確認するための記録のチェックは、原則として3名以内となります。ただし居宅介護支援事業所については、介護支援専門員1人あたり1~2名のご利用者様の記録を確認するとしています。

ポイント5:確認対象文書の限定

実地指導で自治体が確認するのは、原則として実地指導の前年度から直近の実績に係る書類とされました。また、実地指導当日に提出する資料の部数は1部とし、すでに自治体に提出している文書については「再提出を求めず、自治体内での共有を図る」とされています。

ポイント6:管理者以外の同席も可能に

従来は施設管理者様が実地指導に立ち会うのが基本でしたが、実情に詳しいスタッフ様や、労務や会計などの担当者様が同席することも問題ないとされました。

その他

以上でご紹介したほかにも、「同一所在地や近隣の実地指導は同日または連続した日程で行う」「老人福祉法等介護保険法に関連する法律に基づく指導・監査などとの合同実施を一層推進する」といった指針が示されています。

また、「自治体担当者の主観による指導や前回の指導内容と大きく異なる指導を行わないこと」「指導内容について根拠規定やその趣旨・目的などを懇切丁寧に説明すること」などが自治体への留意事項として示されました。

介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針の概要

介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針の概要を表した図。背景としては、介護サービス事業所の増加や、自治体間の確認項目・実施状況に差異が生じており、標準化・効率化が必要とされたということがある。運用指針を明確にし、より多くの事業所を指導することで、効果としてサービスの質の担保と利用者の保護が期待できる。

介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針の概要を表した図。背景としては、介護サービス事業所の増加や、自治体間の確認項目・実施状況に差異が生じており、標準化・効率化が必要とされたということがある。運用指針を明確にし、より多くの事業所を指導することで、効果としてサービスの質の担保と利用者の保護が期待できる。

介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針の概要を表した図。背景としては、介護サービス事業所の増加や、自治体間の確認項目・実施状況に差異が生じており、標準化・効率化が必要とされたということがある。運用指針を明確にし、より多くの事業所を指導することで、効果としてサービスの質の担保と利用者の保護が期待できる。

出典:厚生労働省「介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針について」を元に作成

 

実地指導マニュアルとの兼ね合いは?

自治体が実地指導を行う際に参考にする「介護保険施設等実地指導マニュアル(平成22年3月改訂版)」という資料があります。施設管理者様の中には、同マニュアルに基づいて実地指導対策を取っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回新たに示された指針との兼ね合いについては、一定期間経過後アンケート調査などによって実地指導の状況や課題を把握して改善を図るとされています。マニュアルも見直しが行われる予定であるため、実地指導対策の参考資料としてマニュアルの活用を検討されている施設管理者様は、最新情報を継続的に確認されることをおすすめします。

  • 「実地指導」について、くわしくは各自治体の窓口にお問い合わせください。

執筆:花王プロフェッショナル業務改善ナビ【介護施設】編集部

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