コラム

2020年7月21日更新

【現状まとめ】どうなる?介護分野の文書負担軽減

人手不足が叫ばれて久しい介護業界。現場で働くスタッフ様の介護業務に関する負担増もそうですが、複雑な事務処理もまた、業務の効率化を阻害する課題となっています。

そうした状況を受け、厚生労働省は社会保障審議会介護保険部会に「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」(以下、専門委員会)を設置。2019年8月から介護分野の文書負担軽減に関する議論を行ってきました。

今回は、2019年12月に公表された「中間とりまとめ」と、2020年3月の第6回専門委員会で示された「今後の進め方」の資料から、どのような方向性で文書負担軽減策が講じられていくのかを簡潔にご紹介します。

 

介護分野の文書負担軽減が推進されている背景

介護分野で文書負担軽減が推し進められている背景には、大きく2つの課題があります。
「手続きの複雑化による負担増」と「ローカルルールへの対応による負担」です。こうした文書負担に関する課題の解決が、介護現場の業務効率化に向けた取り組みの一環として推進されています。

手続きの複雑化による負担増

介護保険制度が創設されてから約20年が経ちますが、その間に制度は繰り返し改正され、姿を変えてきました。「介護予防サービス」のようなサービス類型の増加、「介護職員処遇改善加算」のような新たな加算の創設などにより、指定申請、報酬請求、指導監査に関する手続きが次第に複雑化。事業所と自治体、双方の負担増が課題となっています。

ローカルルールへの対応による負担

事業者の視点では、自治体によって求める文書に差が生じていたり、様式が異なっていたりする点が課題とされています。このような各自治体のローカルルールについて、全国介護事業者連盟は専門委員会に対し、以下のような内容とともに改善要望を提言していました。

【文書負担に関する事業者の意見(一例)】

  • 拠点を広げて複数事業所を展開している事業者にとっては、膨大な事務作業が発生している(本来の専門業務へ従事する時間が少なくなっている)。
  • 書類対応専門職を採用している事業者も散見される(公金である介護報酬がそうした業務の人件費へと流用されている現状に対し、いち早い改善を強く望む)。

 

文書負担軽減策の方向性

専門委員会は「指定申請」「報酬請求」「指導監査」の3分野について、以下3点を念頭に取り組みを推進するとしています。

  1. 個々の申請様式・添付書類や手続きに関する簡素化
  2. 自治体ごとのローカルルールの解消による標準化
  3. 共通してさらなる効率化に繋がる可能性のあるICT等の活用

2019年12月の中間とりまとめでは、時期を「2019年度中」「1~2年以内」「3年以内」の3段階に分け、取り組みを進めることが示されました。

介護分野の文書に係る主な負担軽減策

文書負担の軽減について、簡素化、標準化、ICT等の活用に分けて対策を示した図。取組時期を、2019年度内の取組、1から2年以内の取組、3年以内の取組に分けて示されている。

文書負担の軽減について、簡素化、標準化、ICT等の活用に分けて対策を示した図。取組時期を、2019年度内の取組、1から2年以内の取組、3年以内の取組に分けて示されている。

文書負担の軽減について、簡素化、標準化、ICT等の活用に分けて対策を示した図。取組時期を、2019年度内の取組、1から2年以内の取組、3年以内の取組に分けて示されている。

  1. ※1
    介護保険法施行規則の改正(H30年10月施行)の内容を踏まえた、老人福祉法施行規則上の規定の整理も含む。
  2. ※2
    前倒しで実現出来るものがあれば、順次取り組んでいく。
  • 介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会「中間とりまとめ」より抜粋・一部編集

以下、専門委員会が2020年3月に示した「今後の進め方」の資料に記載のある「簡素化・標準化」と「ICT等の活用」に関する取り組みの中から、2020年度以降に進められる取り組みを一部抜粋してご紹介します。

「簡素化・標準化」に関する取り組み(一部)

指定の更新申請を行う際、すでに提出している文書を再度求められるケースがあるほか、新規申請時と同様の文書一式を提出しなければならない自治体もあれば、簡素化している自治体もあったりと、ローカルルールの差が問題となっています。

例えば特養の更新申請について、求める文書が最も少ない自治体(2枚)と最も多い自治体(149枚)とでは大きな開きがあります。こうした現状について専門委員会は、提出文書をすでに簡素化を実行している自治体に合わせる方向で、見直しを検討するとしています。

このほか、指定申請や報酬請求に関する様式例の整備が進められる予定です。また、あいまいなルールの解釈の幅を狭めるため、ガイドラインやハンドブックなどを活用した周知方法の検討も行うとしています。

「ICT等の活用」に関する取り組み(一部)

指定申請や報酬請求に関して、ウェブ入力・電子申請を推進する動きがあります。ただし、上述の簡素化・標準化がICT等の活用の前提となるため、まずは「自治体が様式を定める規則や要綱の改正」「自治体のシステム改修などによる影響」といった課題を整理するとしています。

ウェブ入力・電子申請については2020年度中に方針を定める予定で、具体的には「介護サービス情報公表システム」を用いた標準化とウェブ入力の実現可能性や技術的課題、費用対効果について検討が行われます。あわせて、自治体が使用している管理システムとの連携についても検討が行われる予定です。なおICT等の活用については、2022年度の実現を目指して取り組みが進められる旨が専門委員会から示されています。

 

取り組みが前倒しになる可能性も

上述のように、ICT等の活用は2020年度を実現の目処に進められる予定が示されていました(2020年3月に開催された第6回専門委員会より)。ただし同年6月22日に開催された経済財政諮問会議で、厚労相が「介護文書の簡素化・標準化・ICT化について、取り組みを早期に前倒しし、負担を抜本的に軽減すべき」と表明したことから、文書負担軽減策の実施が予定より早く推し進められる可能性も考えられます。

なお専門委員会の議論では、介護スタッフ様が主業務として作成する文書(ケア記録など)については「留意が必要」とされつつ、負担軽減の検討対象とされていません。一方で、中間とりまとめの資料には「ICT化が両輪で進むことにより、ケア記録作成と報酬請求業務を一気通貫で行うことが促進される」といった記述があることから、現場の効率化が期待されている面も伺えます。

文書負担軽減に関するICT導入の支援策は具体的に明言されていませんが、現時点では「ICT導入支援事業」の利用が考えられます。補助率は2020年度から都道府県が設定、事業所規模に応じて上限額が設定されています。事業を実施していない都道府県もあるため、くわしく知りたい方は各自治体の窓口までお問い合わせください。

執筆:花王プロフェッショナル業務改善ナビ【介護施設】編集部

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