コラム

2020年6月23日更新

人材確保につながる!人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度とは

2019年4月、厚生労働省は各都道府県に対して「人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度」の導入を促す通知を発出しました。

株式会社日本総合研究所が2018年9月28日~10月12日に47都道府県を対象に実施したアンケートによれば、同制度を実施していると回答したのは24件。ただ、上述の厚労省の動きから、今後自治体での導入が加速する可能性があります。

そこで今回は、同制度の概要や認証を取得するメリットをご紹介します。制度を利用したことがない施設の管理者様・事業所の経営者様は、ご参考にしてください。

 

人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度とは

人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度(以下、認証評価制度)は、職員の人材育成や人材確保、就労環境などの改善につながる事業者の自発的な取り組みについて、都道府県が審査し、一定の水準を満たした事業者に対して認証を付与する制度です。

介護事業者の認証評価制度の狙い

高齢化が進む中で介護サービスの需要はますます増えており、厚生労働省は2025年度末までに約55万人の介護人材を確保する必要があるとしています。介護職のニーズは高いものの、労働力人口も減少していくことから、新たな人材の確保は容易ではありません。

こうした状況において、地域全体で介護人材の確保と育成を図ることを目的に、一部自治体で運用されているのが認証評価制度です。事業者による介護人材の確保・育成につながる取り組みを公表(見える化)することで、「求職者に介護の仕事や個々の介護事業者に関心をもってもらえる」「働きやすい環境の整備や業界全体のレベルアップ・ボトムアップが促進される」といった効果が期待されています。

また、人材の確保と育成が「サービスの安定供給」や「人材のスキルアップ」につながるという意味で、認証評価制度は「サービスの質の向上につながる制度」ともいえます。サービスの質の向上を見据えた介護分野の評価制度はほかにもありますが、同制度は「職場環境の改善に関する取り組みを評価すること」と「求職者に情報を提供すること」に主眼を置いているのが特徴です。

認証評価制度で評価される項目と認証基準

介護事業者が認証を取得するには、認証評価にかかる評価項目および評価基準をもとに、都道府県に審査してもらう必要があります。

評価項目と評価基準は、厚生労働省が通知した「人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度の実施について」に記載されてある評価項目例・評価基準例を参考に、地域の実情に合わせて設定されます。下記に評価項目・認証基準例の一部をまとめました。

評価項目(例)

評価基準(例)

労働環境、処遇の改善

  • 明確な給与体系の導入
  • 休暇取得、育児介護との両立支援
  • 業務省力化への取り組み

  • 給与支給基準、昇給基準等の策定、周知
  • 有給計画的付与、産休育休中の代替職員確保、ハラスメント対策
  • ICT活用、介護ロボットやリフト等による腰痛対策


新規採用者の育成体制

  • 新規採用者育成計画の策定、研修の実施
  • OJT指導者、エルダー等への研修実施

  • 新規採用者への育成手法、内容、目標が明確な計画策定・OJT指導者等の設置、職員への公表、研修の実施


キャリアパスと人材育成

  • キャリアパス制度の導入
  • 資格取得に対する支援

  • キャリアパスの策定、非正規から正規職員への登用ルール明確化
  • 職員の能力評価、小規模事業者の共同採用・共同研修の実施
  • 介護福祉士等資格取得のためのシフト調整、休暇付与、費用援助


評価項目・認証基準は都道府県によって異なるため、くわしくは各都道府県のホームページなどをご確認ください。

 

認証を取得するメリットとは

では、介護事業者が認証を取得するとどのようなメリットがあるのでしょうか。3点ご紹介します。

求職者との接点が得やすくなる

認証を取得すると、都道府県のウェブサイトや冊子などで「認証事業者」として事業者名や取り組み状況が公表されるため、知名度向上が期待できます。また、求職者に職場体験先として優先的に紹介してもらえたり、都道府県内の専門学校・養成機関等へ就業につながるように優良事業所として情報を発信してもらえたりすることもあるので、求職者との接点が得やすくなります。都道府県が提供する認証マークを事業者のウェブサイトやチラシ、名刺などに付ければ、求職者に「認証事業者=信頼感のある事業者」とアピールできます。

株式会社日本総合研究所が公表している「介護事業所の認証評価制度の普及に向けたガイドラインの策定に関する調査研究事業 報告書」によると、「認証を取得したことによりハローワークや福祉人材センターからの紹介が増えた」と回答した事業所もあるようです。

インセンティブが付与されることもある

都道府県によっては、認証事業者に対してインセンティブを付与するケースもあります。例えば、青森県では以下のような支援を受けることができるようです。

◆融資での優遇

  • 県内金融機関による低利融資

◆補助・助成時の優遇

  • 県が実施する施設整備等の各種補助金を優先的に採択
  • 県の推薦が必要な助成制度、研修等において優先的に推薦

◆事業経営上の配慮・優遇

  • 青森県介護サービス事業者等指導における実施指導頻度の緩和
  • 特定事業所集中減算除外要件である正当な理由として考慮
  • 県主催の研修の優先的な受講決定

働く環境の改善につながる

繰り返しになりますが、認証評価制度は職場環境の改善に関する取り組みを評価する制度なので、認証の取得に向けて取り組めば、必然的に働く環境の改善につながります。

また、制度には自己点検・評価の実施や評価基準に基づいた審査を受けるフローが組み込まれているため、事業所の現状を客観的に知ることができます。評価・審査結果をもとに振り返れば、さらなる改善にも役立ちます。

【認証評価制度開始後に得られた効果】

  • 認証取得後に離職率が改善(低下)している。
  • 仕組み、取り組みを見直す契機となり、就労環境改善のきっかけとなった。
  • 現場が評価されることで、職員のモチベーションが上がった。

 

自治体の動きに注目を

記事の冒頭で述べたように、47都道府県のうち「地域医療介護総合確保基金を活用して認証評価制度を実施している」と回答したのは24件です。

まだまだ全国的な取り組みとはいえませんが、厚労省が公表している「令和元年度介護事業者認証評価制度実施状況 ※平成31年4月1日現在」によれば、制度の実施を「検討中」としている自治体が10件あります。気になる方は同資料を確認いただき、今後の自治体の動きに注目してみてください。

すでに制度を導入している都道府県で働く介護施設の経営者・管理者様の中で、制度についてくわしく知りたい方は、各自治体の窓口にお問い合わせいただければと思います。

執筆:花王プロフェッショナル業務改善ナビ【介護施設】編集部

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