コラム

2019年11月5日更新

【セミナーレポート】おむつ装着技術に関する取り組み

2019年8月23・24日、京都府京都市にて第21回日本褥瘡学会学術集会が開催されました。花王プロフェッショナル・サービス(以下、KPS)は同学術集会のハンズオンセミナーにて「美しすぎるおむつケア」を実施。大阪赤十字病院様で皮膚・排泄ケア認定看護師として従事されている安藤嘉子氏をお招きし、同施設におけるおむつケアの取り組みについてご講演いただきました。
 
そこで今回は、特に介護主任やリーダーの役割を担っているみなさまに、おむつ装着の技術指導を設計する際に役立つ、大阪赤十字病院様の取り組みをご紹介します。
病院における取組事例ではありますが、介護施設の介護職の方にも応用できる取り組みなので、ぜひご参考にしてください。

講演者プロフィール/安藤嘉子(あんどう・よしこ)氏
大阪赤十字病院 看護部 師長/皮膚・排泄ケア認定看護師

おむつの装着技術は、排泄ケアの重要なアプローチ

排泄物がおむつの外に漏れ出ると、さまざまな問題が起こり得ます。下記は大阪赤十字病院の安藤氏が示した内容ですが、すべて介護施設にも言える問題でしょう。

  • 失禁関連皮膚炎(IAD:Incontinence-Associated Dermatitis)
  • 褥瘡の要因
  • 患者様の自尊心の低下
  • 洗濯物の増加
  • 看護師の労力増加

安藤氏によれば、人は排泄を「コントロールできるもの」と思ってしまうといいます。そのため、仮にスタッフ様のおむつのあて方が悪かったり、粗悪な材質のおむつを使っていたりしたとしても、患者様やご利用者様は「自分が粗相をしてしまった」と感じてしまうそうです。

また、パジャマやシーツが排泄物で汚れれば、スタッフ様の仕事が増えてしまうことは言うまでもありません。「忙しくて時間がないのに、またシーツを交換しなければ……」という状況を経験したことがある方も多いでしょう。

排泄にまつわる問題はさまざまですが、安藤氏は「まずは正しくおむつをあてられるようになることが大事」とし、正しいおむつの装着技術を身につけることは「排泄ケアに貢献する重要なアプローチ手法の一つ」と話しました。

「例えば、排尿自立促進や尿路感染予防のためには早期に尿道留置カテーテルを抜去することが推奨されていますが、おむつの外に排泄物が漏れ出ることを考えると、及び腰になってしまうこともあると思います。しかし、きちんとおむつを装着できさえすれば、少なくとも外に漏れ出ることはないのです。」(安藤氏)

おむつ装着技術の指導・評価の取り組み事例

ここからは、大阪赤十字病院様が実施したおむつケアの改善策をご紹介します。同施設では2018年から「ハッピー・ナッピー・プロジェクト」という取り組みを開始。「正しいサイズ」「正しい種類」のおむつを選択できる環境を整えたといいます。
 
その上で、スタッフ様に対する技術指導と評価を実施したそうです。技術指導については、まず皮膚・排泄ケア認定看護師と感染管理認定看護師が技術のチェックリストを作り、コアメンバーに指導を実施。その後、コアメンバーが病棟ナースに指導を行うことで、ねずみ算式に技術の定着を図ったといいます。実践・評価方法は以下のとおりです。

【実践・評価方法】

  • 対象:A病棟およびB病棟の看護スタッフ30名
  • 期間:2018年9月3日~2019年3月29日
  • 方法:おむつモデル、疑似尿を使用して、おむつ交換技術の定量評価、漏れの有無
※練習はスタッフ間で実施し、評価はおむつ「おむつ交換トレーニングモデル」(株式会社京都科学)で実施。

以下が技術評価項目で、おむつ装着技術だけでなく、感染防止技術も身につけられる項目が設定されています(20点満点で評価)。これを元に、スタッフ様に正しいおむつの装着技術を指導したそうです。

【実践・評価方法】
①手指衛生
②おむつ交換の準備
③エプロン・マスク・手袋の着用
④シーツ汚染防止
⑤排泄物の処理
⑥おむつの破棄
⑦手袋を外す・手指衛生
⑧手袋の着用
⑨⑩おむつの準備
⑪撥水クリーム塗布

⑫手袋交換・手指衛生
⑬⑭インナー装着
⑮⑯アウターの準備
⑰⑱テープ止め

⑲手袋・エプロン・マスクを外す
⑳手指衛生

赤字:感染防止技術  10項目
青字:おむつ装着技術 10項目

指導を行う前は正しい手順・方法でおむつを装着できないスタッフ様が多かったといいますが、徹底的に指導を行った結果、多くのスタッフ様の技術が向上。指導前は平均6.8点だった技術評価項目の点数が、指導後は平均19.4点に増加したといいます。

指導前

疑似尿がインナーの範囲に収まっていない。足の細い患者様ならアウターの外に漏れ出ると予測される。

指導前

疑似尿がインナーの範囲に収まっている。

「アウターに少しでも排泄物が付着すれば交換しないといけないので、排尿がインナーに収まるのはすごく大事なことです。せっかく高性能のおむつがあるのに技術不足で活用できないのはもったいないし、無駄なことです。私たちは専門職として、患者さんにしっかり技術を提供しなければいけないと思います。」(安藤氏)

おむつ装着技術の指導・評価の成果

「おむつ交換トレーニングモデル」と疑似尿を使用した定量的な評価技術が向上しただけでなく、技術指導を行った結果、実際の現場でも成果が出たといいます。
 
まず、指導を受けたスタッフ様同士が「こうだったね、ああだったね」と話し合いながら、毎日のおむつ交換を行う姿が見て取れたそうです。このように日々実践を積んだことで患者様に対しても正しいおむつ交換が行われるようになり、その結果、「夜間のシーツ交換がかなり減った」と安藤氏は話されました。
 
また、スタッフ様からは以下のような声が寄せられたといいます。

【スタッフ様の声】

  • スタッフ同士で練習することで、患者さんの気持ちが分かった。
  • 正直、おむつのあて方に技術がいるとは思っていなかった。
  • 正しく装着することで、実際に尿漏れの軽減を実感した。
  • 実際に患者様におむつを装着するときも、手順を意識できた。

安藤氏は講演の最後に、おむつの装着技術を身につけることは「最低限の、初期の目標」と話されました。正しいおむつの装着によってモレを軽減することで、その先にある褥瘡や失禁関連皮膚炎の予防、患者様の安眠確保、スタッフ様の省力化を目指しているといいます。

「正しくおむつをあてることは、スタッフの意識改革や患者様のQOL向上など、さまざまな効果をもたらす第一歩になると思います。それらを実現させるため、おむつの装着技術が現場でたくさんの方に届くまで、みなさまにもしっかりとした指導と環境づくりを行っていただきたいと思います。」(安藤氏)

当日は、KPSより「おむつ交換時のスキンケアのご提案」に関するセミナーも行われました。

さらにKPSより、おむつのあて方に関するセミナーも。実践を交えつつフィッティングの講習が行われました。

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