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コラム

2023年12月26日更新

効率的な新人介護職員教育にはチェックシートが必須!【排泄介助編】

監修者 伊藤亜記氏のプロフィール写真

監修者プロフィール/伊藤 亜記(いとう・あき)
株式会社ねこの手 代表取締役
短大卒業後、大手出版会社へ入社。祖父母二人の介護と看取りの経験を機に、社会人入学にて福祉の勉強を始める。98年、介護福祉士を取得し、老人保健施設で介護職を経験し、ケアハウスで介護相談員兼施設長代行を務める。
その後、大手介護関連会社の支店長を経て、介護コンサルタント「株式会社ねこの手」を設立。
現在、旅行介助サービスや国内外の介護施設見学ツアーの企画、介護相談、介護冊子制作、介護雑誌の監修や本の執筆、連載、セミナー講師、TVコメンテーター、介護事業所の運営・営業サポートなど、精力的に活躍中。現在、年間200回以上の全国での講演やセミナーをこなす。特に介護記録の書き方や実地指導対策、介護業界の集客法、介護職のモチベーションアップ、介護職の人材育成、離職防止などの講義で全国的に高い人気を得ている。2010年4月、子どもゆめ基金開発委員就任。医療・福祉法人の顧問や大手介護会社のコンサルタントも多数務める。
介護福祉士/社会福祉主事/レクリエーションインストラクター/学習療法士1級/シナプソロジーインストラクター/スマート介護士

介護現場での新人教育の進め方に悩んでいる教育担当の方は多いのではないでしょうか。そうした際に役立つのが教育チェックシートです。チェックシートを活用することで、新人介護職員様、教育担当者様の双方にメリットが生まれます。

そこで今回は教育チェックシートの有用性とともに、介護の基本業務と言える排泄介助を教える際に活用できるチェック項目についても紹介していきます。

教育チェックシートとは

教育チェックシートは、職員のスキルを可視化するために使われるチェックシートです。
業務に必要なスキルや知識を一覧にし、その習得具合を追跡できる教育支援ツールとして活用され、介護職に限らず、さまざまな職種の新人教育で取り入れられています。

習得状況の把握に加え、教育担当者と介護職員のコミュニケーションツールとしても活用できます。

  • 教育チェックシートのイメージ

教育チェックシートの必要性

ここでは、教育チェックシートを介護教育現場に取り入れるメリットを紹介します。

教育の一貫性を保てる

教育チェックシートの大きなメリットは、教育内容の一貫性を保てる点です。新人介護職員が身に付けるべきスキル項目が明確にリストアップされ、網羅的に学ぶことができます。

教育内容が一貫していない場合、指導スタッフによって教え方や教育項目にばらつきが生じ、新人介護職員のスキル習得に差が出る恐れがあります。また、介護施設の勤務は早番、遅番、日勤等の交代勤務が多く、毎回同じ教育担当の方が教えることは難しいでしょう。加えて、教育担当以外の方が指導する場合、指導の進捗が不明確の状態だと、何を指導すればいいのか迷う場面もあります。チェックシートがあれば、教育担当以外の方とも進度を共有しながら指導ができます。

習得状況やフィードバックが分かりやすい

教育チェックシートを活用すると、新人介護職員のスキル習得状況が一目で確認できるのも大きなメリットです。各項目に習得有無や評価を記録することによって、身に付いているスキルとサポートするべき項目が明確になります。さらに、どの項目にフォーカスして指導するか、個別のサポートが必要かどうかなどの判断も容易になります。

フィードバックの指標としても有効です。新人介護職員に「ここはうまくできているね」「この項目はもう少し頑張ろう」とフィードバックをすると、具体的な改善点を把握でき、スキル習得のスピードアップも期待できます。また、できている・できていないが可視化されるので自ら成長を実感することもでき、モチベーションの向上にもつながるでしょう。

習得状況の把握、フィードバックがしやすいチェックシートは、新人介護職員・指導担当者の双方にとって有益なツールと言えます。

基本的な排泄介助スキルのチェック項目

排泄介助でチェックシートが重要な理由

排泄介助は介護の基本的なスキルの一つです。身体の清潔を保つだけではなく、感染症予防や皮膚のトラブル防止にもつながる重要な役割があります。不適切な排泄介助は、尿路感染や皮膚トラブルのリスクを高め、ご利用者様の健康に害を与える恐れがあります。排泄はプライバシーに関わる介助なので、技術面だけでなく、ご利用者様の気持ちに寄り添い、尊厳を守ることも求められます。

教育チェックシートを活用することで、介護現場で必須の基本スキルを体系的に習得できます。また、自立して排泄ができる方、トイレ誘導が必要な方、おむつ交換が必要な方など、介護場面に応じたケアを各スタッフが確実にできるようになり、施設全体としてもケアの質が高まります。

次に、排泄介助業務の基本となる「排泄介助の基礎」「おむつ交換」「トイレ誘導」「排泄記録」のチェック項目例を紹介します。

排泄介助の基礎

ご利用者様の身体状況に応じた排泄介助をする上で、基礎的な知識は必要不可欠です。特に「事故が発生した場合、異常を確認した場合、誰に何を伝えるべきか」の手順をきちんと教えることが大切です。

●チェック項目例

□失禁に関する基礎知識を理解できている
□排泄介助の種類(おむつ、尿器、便器、ポータブルトイレ、トイレ誘導)を理解できている
□ご利用者様ごとの排泄状況を理解できている
□介助用具の使い方が理解できている
□尊厳に配慮した声掛け、トイレのドアを閉めるなどプライバシーに配慮できている
□ご利用者様の体調確認から、排泄介助方法の変更等の判断ができている
□介助中に中座する場合は、ご利用者様がナースコールを押せるADLを有しているかを確認し、ご利用者様の安全を確保できている
□排泄物の量や色を観察し、異常があれば上司や看護師等に報告・連絡・相談ができている

おむつ交換

おむつにシワができていないかなどの装着スキルはもちろんですが、会話ができないご利用者様にも必ず声を掛けて説明できているかも大切なチェックポイントです。
例えば、おむつ交換の際に、「下着を替えましょうか」と説明するなど、「おむつ」の言葉を避けられていることも確認します。ご利用者様に安心感を与えるような声掛けを行えるよう指導しましょう。

●チェック項目例

□物品準備(湯・タオル・ティッシュペーパー等)と新しいおむつの準備ができている
□使い捨て手袋を両手にはめている
□おむつ交換時はエプロンを着用している
□プライバシーを適切に確保できている(カーテンを閉め、周囲から見えないように配慮、羞恥心に配慮しバスタオルなどをかけている)
□ご利用者様に声掛けし不安のない配慮を行っている
□皮膚の状態を確認できている
□汚れの度合いにより清拭を行い、清潔保持に努めている
□前から後ろ(陰部から肛門)にかけて清拭している
□体位変換ができている
□おむつ交換後、衣類の背部、シーツなどのしわを伸ばしている
□体調・体位の確認ができている
□残存機能を確認している
□行為ごとの声かけ・残存機能を生かす声がけができている
□陰部洗浄は上から下に向かって行っている
□ご利用者様の膝を伸ばし着用している
□オムツの位置は適切である
□声かけ・説明ができている
□脱衣(おむつを開く→尿とりパッドをとる)→陰部・臀部洗浄(皮膚の状態などの観察、 乾いたタオルで優しく拭いて乾燥)→おむつの装着→おむつの具合の確認→着衣ができている
□汚れたおむつの後始末→使用物品の後始末ができている
□転落を予見して、適切な位置で介助できている
□基底面を広くとり重心を下げた介助ができている
□自然な動きに沿った介助ができている
□自身の清潔動作(手指衛生、うがい、手袋・ガウン・マスクの装着)ができている
□(場合により)おむつから漏れて汚れたリネン等の交換ができている
□(必要に応じ)ご利用者様へ水分補給のお声かけをしている

トイレ誘導

ご利用者様が歩いて行ける場合と、車椅子利用の方をトイレの近くまで誘導する場合の2パターンが考えられます。
トイレ誘導の際の基本的なチェック項目を自立支援や安全の確保からも確認ができると、指導の際も手順の確認もでき、指導者の指導と共に介護職員の理解がしやすくなります。

杖や歩行器なども使用しながら歩いて行ける場合

チェックポイントはご利用者様の歩行の安定性を確認しているかという点です。必要に応じて、手すりの利用を促すお声がけや、介助をするなどのサポート方法があることを伝えます。

●チェック項目例

□床が濡れていないかなどの安全確認ができている
□立位が安定しているか確認できている
□手すりを使用するよう声掛けできている
□便座に座る際の安全を確認できている
□体調・体位の確認ができている
□ご利用者様の歩くスピードに合わせている
□心身状況により手でご利用者様の骨盤を支えている
□残存機能を確認している
□トイレまでの安全確認ができている
□行為ごとの声かけ・残存機能を生かす声がけができている
□トイレへの移動介助(見守りを含む)ができている
□脱衣→排便・排尿→後始末→着衣→ご利用者様の手洗い、手指消毒までの介助ができている
□介助→居室への移動介助ができている
□転倒・転落を予見して、適切な位置で介助できている
□自身の清潔動作(手指衛生、うがい、手袋・ガウン・マスクの装着)ができている

車椅子を利用する場合

車椅子の方を誘導する場合は、トイレと車椅子を適切な位置に配置するよう指導します。
また、ブレーキの場所や収納方法などを理解しているかも確認します。

●チェック項目例

□車椅子を便座位置に近づけている
□車椅子のブレーキ確認ができている
□安全に車椅子への移動介助ができる
□残存機能を生かした支援ができている
□体調・体位の確認ができている
□残存機能を確認している
□トイレまでの安全確認ができている
□行為ごとの声かけ・残存機能を生かす声がけができている
□トイレへの移動介助(見守りを含む)ができている
□脱衣→排便・排尿→後始末→着衣→ご利用者様の手洗い、手指消毒までの介助ができている
□介助→居室への移動ができている
□基底面を広くとり重心を下げた介助ができている
□ご利用者様の前かがみの邪魔をしない姿勢ができている
□自然な動きに沿った介助ができている
□転倒・転落を予見して、適切な位置で介助できている
□自身の清潔動作(手指衛生、うがい、手袋・ガウン・マスクの装着)ができている

排泄記録

排泄記録の付け方を教える際は、排泄記録表に日時や排尿・排便の色や量、便秘や下痢の症状が記入されているかがポイントになります。また気づきがあった際に、上長や看護師に報告した内容等が記載されていることもご利用者様の健康状態の把握の観点から必要です。
ご利用者様の体調不良の際には、排泄記録表をもとに医師に速やかに看護師等が報告、その後の対応を確認する、ご家族にもケアマネジャーを通し、報告を行う等、一連のプロセスの正確な内容の記載が求められます。ご利用者様の体調把握や管理に活用する大切な記録である点を必ず伝えておきましょう。

●チェック項目例

□5W1Hの記録表の記入の仕方を理解している
□日付、時間、ご利用者様名、記載者名の記入漏れがない
□排便の形状、量、色をマニュアルを基に適正に記載している
□ご利用者様の表情や様子、体調、排泄状況なども細かく記載している

まとめ

教育チェックシートを活用し、排泄介助を効率的に学べる仕組みをつくることは、介護職員の成長を早めることにもつながります。今回紹介した内容が参考になれば幸いです。

「教育チェックシート」
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