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コラム

2024年5月28日更新

プライバシー保護に配慮した介護。気を付けるポイントや場面は?

著者 中村亜美氏のプロフィール写真

著者プロフィール/中村 亜美(なかむら・あみ)
介護福祉士としてユニット型特別養護老人ホームに約11年勤務。ユニットリーダーとして従事する。その後、経験を活かし、フリーライターとして在宅介護者・介護職員・介護事業者向けの取材・コラム記事を執筆している。

介護現場ではご利用者様のプライバシーに関わることが多々ありますが、気付かないうちにプライバシーを侵害してしまいご利用者様やご家族に不信感を与えてしましまうケースもあります。

プライバシー保護に努め、組織・チーム内でも認識を統一するために、今回は介護現場におけるプライバシー保護の大切さを改めて紹介していきます。

介護におけるプライバシーとは

総務省はプライバシーの定義を「他人の干渉を許さない、各個人の私生活上の自由」と表現しています。一般的なプライバシーの概念は、介護現場においても同様です。
ただし、何らかの疾患により、ご自身で判断することが困難な方や身体動作が困難な方など、ご利用者様の状況はさまざまです。そのため、ご利用者様が思うように意思表示できないことを踏まえ、職員がご利用者様の尊厳を守るために、プライバシー保護の意識がより一層求められます。

  • 総務省「プライバシー情報の取扱い」より引用

個人情報はプライバシー情報の一部

プライバシーに関する情報は、他人に知られたくない情報とも言えます。個人情報を同じものととらえてしまいがちですが、次に示すイメージ図のように、個人情報はプライバシー情報の一部ということになります。

プライバシーに関する情報のイメージ画像

プライバシーに関する情報のイメージ画像

プライバシーに関する情報のイメージ画像

厚生労働省の医療・介護関係事業者向けガイダンスによると、個人情報とはご利用者様の氏名や生年月日、住所や顔写真など個人を特定できる情報や、個人識別符号が含まれる情報そのものを指します。同じように、ケアプラン等の記録なども該当します。
これらの個人情報は特に厳重に管理しなければいけません。決して外部に漏洩することのないよう、責任を持って事業所内で管理するようにします。

個人情報の取り扱いについては、「介護事業者として知っておくべき個人情報保護のポイント」でも詳しく紹介しています。

  • 参考:厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」

介護施設でプライバシー保護が重要な理由

介護施設におけるプライバシー保護を考える際、ご利用者様の気持ちをくんだ考え方が重要です。ご利用者様は、日ごろから、行動を監視されていると感じられておられることが多く、入浴、排泄および排便のケア時では一層の配慮が求められます。

また、ご利用者様は疾患や障害のため日常生活の動作や認知が難しくなることもあります。しかし、常に相手は「プライドも意思もある大人」だということを忘れてはなりません。配慮の無い言動によってご利用者様がプライバシーを侵されたと感じるとスタッフに対して信頼することができなくなり、今後の介護にも悪影響を与えてしまう恐れがあります。

介護は、常に「人」相手の仕事であるという認識を持つことが大切です。
ご利用者様からの信頼を失わず、介護をよりよく進めていくためにも、相手の立場に立ち、プライバシー保護をすることは重要です。

プライバシー保護に注意が必要な場面

プライバシー保護を意識すべきタイミングは、介護現場のさまざまな場面にあります。
ここからは、具体的な介護のシーンに沿って守るべきプライバシーや注意点、適切な対応などを解説していきます。

排泄介助

ご利用者様は、排泄介助時に羞恥心や不快感を持っている前提で対応する必要があるでしょう。
例えば、ドアを開けっ放しにして排泄時の姿が見えるような状況にすることなどは、プライバシーを侵すことになりご利用者様の心を傷つけてしまいます。要介護度が高く、意思疎通が難しいご利用者様でも、「恥ずかしい」「悲しい」という気持ちは当然あるため、配慮が必要です。

配慮のポイント

  • 個室ならドアを閉める
  • 排泄介助前後には、必ず声掛けをする
  • 相部屋ならカーテンなどで仕切り、周囲から見えないようにする
  • 排泄物などの情報を不必要に大きな声で話さない

わたしが以前働いていた介護施設では、排泄物の状態を他職員や看護師などに報告する際、花に例えて伝えていました。ご家族や他のご利用者様が聞いても、排泄に関することであると推測されないためです。
このようにほんの少しご利用者様に配慮する気持ちを持つことで、プライバシーを守ることにつながります。

入浴介助

入浴介助の際にも、プライバシーに配慮した介助が必要です。排泄介助と同様、ご利用者様の肌の露出が増えるシーンです。浴室のドアを開けっぱなしにしたり、裸のままタオルもかけずに放置したりするなどは厳禁です。

配慮のポイント

  • 洗身や入浴以外で裸にならないようタオルをかけるようにする
  • 介助者以外のスタッフが浴室に入る際には必ずノックをする
  • ドアやカーテンは必ず閉める
  • ご利用者様の身体の状況を不必要に大きな声で言わない
  • 不必要な露出は避ける
  • 介助時には必ず声かけをする

他者に入浴を介助されるだけで、ご利用者様は恥ずかしい思いをしていることを念頭に置き、心を傷つけることがないような対応を心がけましょう。

職員同士の会話

職員同士でご利用者様について会話するときにも、ご利用者様に関しての情報は基本的にプライバシー情報だという意識を持ちましょう。ご利用者様の悪口や噂話をすることは論外ですが、申し送りや身体の状況を共有する際も注意が必要です。勤務先の介護事業所内ではもちろんこと、事業所の外に出たときも当然ご利用者様の情報を口外してはいけません。

配慮のポイント

  • ご利用者様の個人情報が、他のご利用者様やそのご家族に知られないように注意する
  • 情報共有の際は、場所や声の大きさに配慮する
  • ご利用者様の個人情報に関わるような疾患の有無や心身の状態、ご家族状況など、特に繊細な情報である場合は小声で話す

守られるべきご利用者様のプライバシーを、職員の不注意で侵害してしまうと信頼を大きく失ってしまいます。ご利用者様、ご家族との信頼関係を構築するうえでも、プライバシー保護には十分配慮するようにしていきましょう。

プライバシー保護を意識した介護の統一化を図る

プライバシー保護に対する認識が職員によって違うこともあり、配慮の意識にズレが生じてしまうこともあるかもしれません。そうした際は職員を集めて研修や会議などを行い、プライバシー保護に関する知識を深めたり、意見を出し合い意識を高めたりするのも効果的です。
ご利用者様やご家族に信頼いただけるような、プライバシー保護を意識した介護を目指していきましょう。

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