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コラム

2024年7月30日更新

介護施設で行う園芸療法。心身に対して期待できること・実施ポイントも紹介

監修者 浅野房世氏のプロフィール写真

監修者プロフィール/浅野 房世(あさの・ふさよ)
元 東京農業大学農学部バイオセラピー学科植物介在(園芸)療法学研究室 教授
技術士(都市及び地方計画)、一級造園施工管理技師、高等園芸療法士(アメリカ)、日本園芸療法学会上級園芸療法士、上智大学経済学部卒業
九州大学にて「癒しの風景」に関して博士号取得:専門研究はタナトロジー(死生学)と風景の関係
人間・植物関係学会代表理事、林野庁 林政審議委員を務める。現在は日本園芸療法学会代表理事。
受賞:
日本造園学会 学会賞(2000年)、リー・マッキャンドリス賞(アメリカ園芸療法協会 2004年)
ロン・メイス賞:国際ユニバーサル・デザイン・センター(2004年)、人間・植物関係学会大賞(2020年)
著書多数

植物の育成・収穫を通して、心身のリラックスや機能回復を目指す園芸療法というものがあります。主に医療・福祉分野で取り入れられ、当然、介護分野でも広がりが期待できる療法です。

そこで今回は、介護施設で行う園芸療法で期待されることやはじめ方、ポイントについて紹介します。

園芸療法とは

園芸療法とは、自然や植物との関わりを通して、心身の健康促進、社会性の維持・向上などを目指すリハビリの手法です。園芸療法の研究や発展のための活動を行う日本園芸療法学会は「医療や福祉分野をはじめ、多様な領域で支援を必要とする人たち(療法的かかわりを要する人々)の幸福を、園芸を通して支援する活動」と定義しています。

日本では1990年頃から、主に高齢者介護施設や障害者施設で導入され、普及してきました。具体的な活動としては、植物の栽培や庭園の手入れ、植物を用いた創作活動などがあります。

*日本園芸療法学会「園芸療法とは」より引用

園芸療法で期待されること

心の健康維持・脳の活性化

屋外で作業し、土や草花、外気などの自然を肌で感じることは気分転換になり、ストレスの軽減につながります。また、自分の手で育てた植物が開花したり、収穫したりする経験は、達成感や満足感を得られ、心の健康を維持する一因になります。

育てた植物を使ったクラフト作業では、完成品を想像し、より素敵な作品を作るために試行錯誤もします。そうした行為を通じて想像力や思考力が刺激され、脳の活性化にもつながります。

運動能力・生活の質の向上

園芸作業には、歩く、掘る、水をまく、草を取る、収穫する、洗う、など多くの動作がともないます。これらの動作は全身の骨や筋肉を使用するので、ADL(日常生活動作)の向上や体力の維持・増進が期待されます。普段は消極的になりがちなリハビリ運動でも、花を咲かせることや実を実らせることへの楽しみ、喜びを想像することで、意欲的に取り組めることでしょう。

日光を浴び、体を動かすことで適度な疲労感を感じられるのも園芸療法の特徴で、睡眠の質が向上したり、食事をおいしく感じたりと、生活の質(QOL)の向上にもつながります。

コミュニケーションの活性化

グループで行う園芸作業は、声をかけあって協力する必要があるため会話が生まれやすくなります。作業中だけでなく、日々の会話でも植物についての話題が出やすくなり、ご利用者様同士はもちろん、スタッフ様とのコミュニケーションのきっかけにもなります。

さらに、グループで1つの目標に向かって共同作業をすることで責任感が生まれ、社会の一員である意識も高まり、社会性向上にもつながります。

プランターでも始められるのが魅力

広い庭や花壇がないと園芸療法を実施できないと思われるかもしれませんが、プランターでも十分に実施できます。大掛かりな園芸を始める前に、まずは手軽に始められるプランターから始めてみてもよいかもしれません。用意するものは一般的な園芸と同様ですので、準備もしやすいでしょう。

▼プランター園芸の準備品(一例)

  • 育てたい苗または種
  • プランター(植物の大きさに合わせて準備する)
  • 鉢底ネット(プランターに穴が開いているタイプの場合)
  • 培養土・元肥(固形肥料など)
  • 鉢底石
  • 鉢底石を入れるためのネット袋(キッチンの排水口用のネットなど)
  • スコップ
  • じょうろ

園芸療法を効果的に行うためのポイント

季節に合わせて計画する

育てる花や植物、草花で作製するクラフトを季節に合わせて選び、活動を計画することで、四季のうつろいを感じやすく、ご利用者様の心の安らぎにつながります。
季節についてのコミュニケーションが活発になったり、過去の記憶を思い出すきっかけになったりもします。植物の開花時期や収穫時期を踏まえ、年間を通して園芸ができるよう活動内容を計画するのがおすすめです。

作業がしやすいように配慮する

車椅子や杖歩行のご利用者様が多い場合は、座ったままでも作業ができるような準備が必要です。座ったまま作業をする際の最適な高さは、座った状態でプランターの土の表面がご利用者様の脇より5cmほど低いか、床からプランターの土の表面までが65cmほどの高さです。これらの基準に合った作業台、もしくは昇降式の作業台があれば、ご利用者様の体に負担をかけずに座ったままでも快適に作業ができます。

利用者に合わせた役割分担をする

園芸療法では、水やりや間引きなどさまざまな作業が発生します。活動計画を立てるときには、ご利用者様の認知症の程度や社会性、ADL能力に合わせて、それぞれに適した役割を担当してもらうと充実感を得やすくなります。

例えば、社交性はあるものの施設内での役割を見つけられず、ほかのご利用者様との交流が少ない方に対して、各部屋の入口付近に置いた植物の水やりを担当してもらったとします。自分の役割を得たことで、部屋を出入りするほかのご利用者様との交流が増えるなどの変化が期待できます。

体調管理も忘れずに

園芸療法を実施する前後には、必ず体温や血圧の測定などの体調チェックを行います。体調がすぐれない状態で屋外に出たり、体を動かしたりすると、悪化してしまう恐れがあります。また園芸療法を安全に行うためだけではなく、園芸療法を取り入れた影響を把握するためにも、体調チェックは重要です。
気温が高い日は熱中症にも注意し、こまめな水分補給も忘れてはいけません。

専門家と目的・目標・活動計画を設定する

園芸療法を実施する際は、目的と目標の設定、それに基づいた具体的な活動計画の検討が重要です。それらを具体的に定めることで、ご利用者様も目的を理解し、目標に向かって意欲的に取り組むことができます。
目的・目標・活動計画を設定する際には、園芸療法士や看護師、作業療法士理学療法士、または介護福祉士などの意見を踏まえ、ご利用者様に無理のない、かつ安全な範囲で検討しましょう。

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