入浴ケアは道具の準備から始まり、洗髪や洗身、お風呂上がりのスキンケアなど、いくつかのステップがあります。ご利用者様のQOLを高めるためには、正しい入浴ケアの手順を知っておくことが大切です。適切なケアでムダを省き、ご利用者様・スタッフ様双方のご負担を軽減しましょう。
介護の観点から見ると、入浴には主に4つの目的があります。
■身体の清潔
■血行促進
■リラックス効果
■肌トラブル(床ずれなど)の早期発見
身体を清潔にするだけでなく、気分もリフレッシュできる点は入浴の大きなメリットです。
一方で、高齢者の入浴は体に大きな負担がかかります。湯あたりや湯冷めを起こして体調を崩すケースも珍しくありません。入浴前はご利用者様の体調を念入りに確認し、スムーズなケアを行えるよう準備を万全にしておきましょう。
入浴前には、ご利用者様自身に入浴の意思があるか確かめます。その後、血圧や体温を測定し異常がないか、顔色や食欲の状態に変化はないかをチェックします。もし体調が悪いときは入浴を見合わせます。空腹時や食後すぐの入浴は貧血や体調不良を招くため控えてください。
なお、排泄は入浴前に済ませておきましょう。
■脱衣場・浴室・浴槽の準備
脱衣場と浴室の間に温度差があると、ご利用者様の体に大きな負担がかかります。脱衣場は24℃、浴室は22℃位に調整しましょう。
お湯の温度は、夏は38℃、冬は40℃位が適温です。
また、ご利用者様の安全に配慮して、必要であれば補助用具(シャワーチェア・バスボード、滑り止めマット)を用意します。
■入浴に必要な道具や着替えの準備
体を洗う道具は浴用の綿タオルや柔らかいスポンジ、または手でやさしく洗って差し上げるのがよいでしょう。ナイロンタオルでゴシゴシ洗ってしまうと肌を傷付け、肌荒れを招く可能性があるため避けましょう。
入浴ケアでは、小さなミスや不注意が思わぬ事故につながります。ここでは入浴ケアの正しいステップと、スタッフ様が気を付けるべきポイントを紹介します。
1.シャワーの温度を確かめる
最初にスタッフ様の手でシャワーの湯温を確かめてください。
その後、ご利用者様本人の手や足で適温かどうか確認していただきます。
2.お湯をかける
ご利用者様の足元から陰部、全身へとお湯をかけます。
お湯に浸したタオルを肩にかけると、湯冷めを予防できます。
3.お湯に浸かる
ご利用者様が浴槽に入れる様子であれば、最初に2~3分お湯に浸かり温まっていただきます。
入浴ケアではこまめに声がけを行い、ご利用者様の状態に異変がないか観察してください。
4.髪を洗う
洗髪はシャワーチェアに腰掛けた状態で行います。
洗髪が終わった後は顔、髪の水分をタオルでしっかりと拭き取ってください。
なお、洗髪で耳や目に水が入ることを嫌がり、入浴を拒否するご利用者様もいらっしゃいます。
その場合は耳栓やシャンプーキャップを活用しましょう。
5.体を洗う
洗浄料を充分に泡立て、顔→首→胸→腕・手→足→背中→お尻→陰部の順に洗います。
つま先からふくらはぎ、手のひらから二の腕へというように、体の末端から中枢に向かって優しく洗うことがポイントです。
可能な範囲でご利用者様自身に洗っていただき、スタッフ様は洗い残しのないようにサポートを行います。
6.お湯に浸かる
体を温めるために浴槽に入ります。入浴時間の目安は5分程度です。
浴槽から出たらシャワーで体を洗い流し、タオルでやさしく押さえるようにして水分を拭き取ります。
■刺激の少ない洗浄料を使う
洗浄料は肌に刺激の少ない「弱酸性」「低刺激性」のものを使用しましょう。
市販している石けんの多くは「弱アルカリ性」です。高齢者の皮膚には強い刺激となるため使用は控えてください。
■こすらずに泡で優しく洗う
皮膚表面の汚れは、少量の洗浄料をしっかりと泡立て、泡でなでるようにして落とします。泡で包み込むようにして洗うと、摩擦による刺激が少ないため皮膚トラブルを防げます。
■スキンケアタイプの入浴剤を使う
入浴時はスキンケアを効率的に行えるよい機会です。浴槽のお湯にはスキンケアタイプの入浴剤を使いましょう。
1.タオルで拭く
脱衣場に移ったらタオルで押さえるようにして水分を拭き取ります。髪はドライヤーで手早く乾かします。
2.保湿
皮膚の状態を観察して異常がなければ、ローションやクリームを塗布して保湿します。
3.休憩
水分補給を行って休息をとります。必要であれば、爪切りや耳の掃除を行います。
■入浴後には保湿を
保湿はタオルで体を拭いたあと、肌に湿り気が残っているうちに行います。
保湿剤は毎日使うものですから、低刺激で使用感が良いものを選びましょう。特にうるおい成分「セラミド」の働きを補える製品がおすすめです。
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