コラム

2019年1月15日更新

介護人材の確保に自治体の支援を活用しよう! ユニークな取組事例4選

人材不足は介護業界の大きな課題であり、施設の経営者・責任者の方は頭を悩ませていることかと思います。一方で大都市への人口流出が進む中で、ご高齢者様の多い地域では介護人材の確保が急務とされています。「ベッドは空いているのに介護職員が足りず、受け入れられない」という事業所の声も聞かれるようになりました。

そこで各自治体では、介護職員を確保・定着させるために事業所や職員への支援体制を整備しています。今回は日本全国の都道府県で行われている取り組みから、ユニークな事例を4点紹介します。職員のモチベーションアップや待遇改善のアイデアとして自治体の支援を活用することも視野に入れてみてはいかがでしょうか。

 
1. 約9割が「採用が困難」と回答

介護労働安定センターの調査によれば、介護職員の平均離職率は16.2%。全産業平均の数値14.9%を上回っています。

採用活動についても難化しており、「平成29年度 介護労働実態調査」によれば人材採用について、事業所の88.5%が「採用が困難」と回答しています。これは前年の調査より15.4ポイント上昇した数値です。採用が困難な理由としては、「同業他社との人材獲得競争が激しい」「他産業に比べて、労働条件が良くない」が多数を占めました。その背景には、新卒採用が売り手市場となっていることも影響しているでしょう。

また、人材不足は経営者のみならず現場の介護職員の悩みでもあります。同調査で介護職員に対して職場の労働条件に関する悩みを尋ねたところ、最もポイントを集めたのは「職場の人手不足」であり、回答者の過半数(53.0%)が悩んでいることが分かりました。「職員数が足りないために満足な介護サービスを提供できない」という切実な声も聞かれます。

 
入職して3年未満の人が多く辞めている?

同調査では、介護業界の離職者の4割近く(38.8%)が、介護職経験1年未満ということが分かっています。さらに1年以上3年未満で離職した人は26.4%であることから、「介護業界に入ってから3年以内に辞めた人の割合」は離職者全体のうち65.2%とかなり大きなボリュームを占めています。介護業界に流入してきた人材を、どれだけ定着させるかが人材確保のカギといえるでしょう。

平成29年度の調査によると、介護業界に入ってから3年以内に辞めた人が6割以上であることを表わした図。

出典:介護労働安定センター「平成29年度介護労働実態調査」より(http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/h29_chousa_kekka.pdf

 
2. あなたの自治体でも行われている可能性が よく見られる定着支援の例

近年では介護職に対して独自の手当や奨励金を設けるなど、人材定着に力を入れる地方自治体が増えています。これらの制度を活用し、事業所の人材確保につなげることも可能です。よくある事例を見てみましょう。

 

若手介護職員向けの研修会・意見交換会 

介護業界で働く若手職員に対して、キャリアアップや介護手技の向上を目的とした研修会を開催する取り組みです。愛媛県や鹿児島県をはじめとした複数の自治体で行われています。介護技術を習得するほか、仕事の悩みについて相談したり、労働環境の改善につながるアイデアを出し合ったりすることで、若い人材を定着させる狙いです。外部の介護職員と交流することで新たな知見を得られるだけでなく、仕事に対する視野を広げる機会にもなるでしょう。

 

介護福祉士修学資金貸付制度

介護福祉士を目指して養成施設(専門学校等)で学ぶ方に対して、修学費用の貸付を行う制度です。千葉県や広島県をはじめとした複数の自治体が導入しており、貸付の条件や金額は自治体によって異なりますが、月額5万円、入学準備金や就職準備金として20万円程度が目安です。
また、多くの自治体では介護福祉士の資格を取得したのちに、県内の社会福祉施設等に一定期間勤務することで修学資金の返還が免除される仕組みとなっています。介護職を目指す方の資格取得を支援するとともに、県内に人材を定着させる狙いがあります。

 

復職・再就職支援

妊娠や出産、介護など何らかの事情で一度介護職から離れた方たちを「潜在介護人材」と呼びますが、いまこれらの人材を介護の現場へ呼び戻す動きが盛んです。埼玉県や青森県では潜在介護人材の復職・再就職支援に注力しており、再就職した職員を対象に「再就職準備金」を交付しています。この交付金は県内の社会福祉施設等で一定期間勤務することで返還が免除されます。
また、介護実技に関するセミナーや介護福祉士試験の受験対策を提供する自治体もあります。潜在的な介護人材を発掘し、介護の現場で活躍していただくための取り組みは続いています。

 
3. 介護人材確保に向けた自治体のユニークな取り組み

介護人材を確保するために、労働条件の見直しを検討する経営者・施設長の方も多いでしょう。これらの取り組みをバックアップするために、ユニークな支援制度を整えている自治体もあります。ここでは自治体の取り組みが給与待遇の改善や介護職のキャリアアップにつながった4つの事例を紹介します。

 

(1)埼玉県|介護職員モデル給与表

埼玉県では、介護職員の資格や能力等に応じた評価を行うための「介護職員モデル給与表」を公開しています。これは給与に関する規定が未整備の事業所を対象に、給与や昇給のモデルケースを示し、給与待遇の改善を図るものです。ちなみに、モデル給与表では大卒の初任給が16万9,500円、主任手当は1カ月あたり10,000円、介護福祉士手当は1カ月あたり15,000円と規定されています。
 
事業所が給与表を定めると、昇格した場合の報酬や年収の目安を把握できるようになるため、長期の勤続や仕事へのモチベーションアップにつながるとされています。
ただし、実際に施設の規定とするためには、社会保険労務士などに相談して施設に見合った給与表となるように改善していく必要があります。

 

(2)神奈川県|かながわ介護ベストセレクト

神奈川県では介護サービスの質向上や人材育成、待遇改善などに積極的に取り組み、成果をあげた事業所に対して奨励金を交付する制度「かながわベスト介護セレクト20」を実施しています。奨励金は1事業所あたり100万円で、事前のエントリーが必要です。平成30年には130の事業所から応募がありました。
 
また、同じくサービスの質や人材育成、処遇改善等について一定の水準を満たしている介護サービス事業所等を認証し、認証書を交付する優良介護サービス事業所「かながわ認証」も実施しています。
 
現在の介護保険制度では、ご利用者様の要介護度が改善するにつれて介護報酬が減額されがちです。そこには、在宅復帰を目指した適切な介護サービスや職員様の努力によって得られる成果(ご利用者様の容体改善)が、収益向上に反映されにくいという課題がありました。

 

(3)群馬県|ぐんま認定介護福祉士

群馬県では平成21年度より「ぐんま認定介護福祉士」という全国初の独自認定制度を設けています。これは資格取得後に目指す上級の国家資格がない介護福祉士の現状を踏まえたもので、評価・処遇の指標となる認定制度を設定し、職員の意欲向上と職場定着を図ることを目的としています。
条件としては下記の条件を満たした方のみが受験可能となっています。

  • 介護福祉士としての実務経験が5年以上
  • 所属する事業所に3年以上勤務している
  • 所属する事業所からの推薦を受けている

平成28年度までに634名の介護福祉士が認定を受け、県内の施設や事業所で活躍しています。この制度の創設は介護サービスの質向上だけでなく、給与の引き上げや手当の追加につながったとの報告もあります。

 

(4)山形県|介護のお仕事プロモーション事業

山形県では介護職のイメージアップを図るために、「介護のお仕事プロモーション事業」を行っています。地域の学生や子ども、その保護者などを対象に、出前授業や介護の職業体験イベントを行うことで、介護職への理解促進や興味関心の向上を狙っています。
対象となる事業には1件あたり100万円以内の補助金が支給されます。平成30年度は地域の介護福祉士会や介護福祉科を開設している専門学校などが介護施設の見学や職場体験などのイベントを執り行いました。
核家族化が進む現代では、ご高齢者様と子どもの触れ合う機会が減り、地域の年配の方とのつながりが希薄となっています。ご高齢者様との接し方や「介護」という仕事の魅力を子どもたちに知ってもらうためにも、これらのイベントに期待が集まっています。

 
まとめ

今回紹介したほかにも、地方自治体は介護人材の確保に向けてさまざまな取り組みを行っています。また、厚生労働省でも「介護職のイメージ刷新等による人材確保対策強化事業」を行うなど、人材発掘に力を入れています。まずは自治体や公的機関の支援について知ることが、人材不足を解消するヒントになるかもしれません。

  • 支援についての詳細は各自治体の窓口にお問い合わせください。

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