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コラム

2019年12月17日更新

元気な高齢者を起用する「介護助手」のメリットとは?

人手不足が叫ばれて久しい介護業界。厚生労働省によれば、2025年度末には約245万人の介護人材が必要になると推計されています。
新たな人材の採用が困難な状況にある中、人手不足を補う一つの方法として活発化しているのが、元気な高齢者の方に「介護助手」という役割を担っていただくという動きです。
 
施設管理者様、介護スタッフ様、ご利用者様、それぞれにプラスの影響をもたらすとされる介護助手の活用について、本記事では受け入れのメリットや、実際に介護助手を活用した施設のスタッフ様の声などをご紹介します。

介護助手の活用を検討されている施設管理者様は、参考にしてみてください。

 

介護助手とは?

まずは介護助手の役割と、介護助手が注目を集めている背景をご紹介します。

介護助手の役割

介護助手とは、施設や事業所などで介護スタッフ様をサポートする職種のことです。介護スタッフ様が専門性の高い介護業務に専念するために、その周辺作業を担うのが介護助手の役割といえます。

介護助手の業務内容は明確に定義されているものではありませんが、例えば、部屋の清掃や片付け、ベッドメイク、シーツ交換、ご利用者様の趣味の手伝い、ご利用者様の話し相手など、比較的簡単な単純作業が介護助手の仕事となります。

なお、介護助手の担い手となる上で年齢に関する定めはありませんが、政府は高齢者の方の起用を推奨しています。

介護助手が注目されている背景

冒頭でも触れたように、高齢化の進行によって、介護業界では2025年度末までに約245万人の人材が必要になると推計されています。2016年度の約190万人と比較すると、約55万人が不足する計算です。

介護労働安定センターが公表している「平成30年度 介護労働実態調査」では、約67%の事業所が介護職員の不足を感じており、そのうち約89%が「採用が困難である」ことを人材不足の理由に挙げたという結果が示されています。

こうしたマイナスの状況が介護助手活用の背景にあることは事実ですが、一方で、ポジティブな要素もあります。それは、長く働き続けたいと考える高齢者の方や、定年などでリタイアした高齢者の方の中に、再就職を希望している方が一定数いるということです。

高齢者の就労機会を生み出し、超高齢社会のファクターとなっている高齢者自身が介護助手として業界の人材不足を補い、就労を通して自身の介護予防と介護に関する知識の収集に役立ててもらう―。これらを実現できる方法として、高齢者の方を担い手とした介護助手の活用が注目されています。

 

介護助手を活用するメリットとは?

介護助手の活用は、その担い手となる高齢者の方だけでなく、施設管理者様、介護スタッフ様、ご利用者様のすべてにメリットがあるとされています。介護助手の活用により期待されるメリットについて、それぞれ見ていきましょう。

介助助手のメリット:再就労の機会になる・介護予防に役立つ

再就労を目指す高齢者の方にとって、介護助手の活用が普及し、就労機会が増えることはメリットになるでしょう。
また、高齢者の社会参加は健康維持や認知症予防につながるともいわれています。このほか、将来高齢者自身が介護サービスを選択する際に役立つ、情報収集の場となることも期待されています。

施設管理者様のメリット:人手不足の助けになる・地域貢献できる

施設管理者様のメリットとして期待できるのは、人手不足解消の一助になるという点だけではありません。もちろん、既存の介護スタッフ様と同等の働きを介護助手に求めることはできませんが、業務を適切に細分化・分担できれば、既存の介護スタッフ様の業務負担を軽減でき、職場環境の改善にもつながります。
また、高齢者の雇用を創出する立場となるため、地域社会にも貢献することができます。

介護スタッフ様のメリット:介護業務に専念できる

介護スタッフ様が担う業務を細分化し、介護スタッフ様にしか担えない介護業務に専念できる状況を作ることは、介護助手活用の目的の一つです。補助的な周辺作業を介護助手が担当することで介護スタッフ様の負担が軽減し、専門性の高い業務に時間を充てられるようにすることで、介護業務の質の向上が期待できるとされています。

ご利用者様のメリット:丁寧なサービスを受けられる

上述した介護スタッフ様のメリットが実現し、介護スタッフ様が専門的な業務に専念できるようになれば、ご利用者様はより丁寧なサービスを受けられるようになると期待されています。

 

介護助手を活用した施設のスタッフ様の声

ここからは、実際に介護助手を活用した施設様に所属するスタッフ様の声をご紹介します。
ポジティブな意見とネガティブな意見、それぞれご紹介します。

【ポジティブな意見】

  • 時間に追われることが少なくなることで、利用者全体にも目配りができる。
  • 職員が忙しそうにしていても、助手さんに声をかけ、助手さんから職員へ伝えてもらうことで利用者の訴えが届くことがある。
  • 介護助手の方と、利用者様との会話が楽しそうである。
  • 入浴後の衣類戻しも助手さんに行っていただけているので早めに休憩に入れる余裕ができた。
  • 間接業務を行ってくれることで、間接業務での残業は削減になってきている。
  • 周辺業務が減ったため、忙しさからのストレスは減ったように思う。
  • 今まで行っていたことを介護助手さんに振り分ける際に無駄を省けたこともありました。
  • 今では大切なチームの一員で、欠かすことのできない存在となっている。

【ネガティブな意見】

  • 介入しないところが増えた分、気付けていないことも多いと感じる(ご利用者様の変化について)。
  • ケアの向上に結びついたとは思わない。結果も出ていない。
  • 雑務は減ったがそもそも介護職員の人手自体が少ないので大きな変化は感じない。
  • インシデントが発生しやすい直接介護自体は変わっていないので減少していない(アクシデント・インシデントの件数について)。
  • リーダーはやることが沢山あるので、助手さんの有無にかかわらずバタバタしている。
  • リネン交換をやってもらっていますが、その後確認に回らなくてはいけないので2度手間になっています。
  • ストレスはもっと別なところにあって、介護助手さんが入っても変わらないと思います。
  • 本当に大変な必要な部分にいないので、どうなのかと思います(介護助手の継続的な活用について)。

出典:一般社団法人北海道老人保健施設協議会「地域人材を活用した労働環境改善促進事業(平成30年度他起動地域医療介護総合確保基金活用事業) 平成30年度事業報告書」より抜粋

 

介護助手をうまく活用するためには?

上記で介護助手に関するスタッフ様の声をご紹介しましたが、同じ事柄に関するものでも、全く異なる声が上がっていることが分かります。例えば、「ケアの向上につながった」という声がある一方で、「ケアの向上につながらなかった」という正反対の意見が見られます。これは、単に介護助手を受け入れるだけでは不十分、ということを示しているのではないでしょうか。

もちろん、施設様の種別や方針、既存のスタッフ様の人数やモチベーションなど、状況により介護助手に対する感じ方は異なるでしょう。しかし、そうであるからこそ、施設様の状況に応じた受け入れ体制を整えることが重要と思われます。どのような目的で介護助手を受け入れるのか、この認識を現場レベルで共有しておくことも必要なのではないでしょうか。

最後に、全国に先駆けて介護助手事業に着手した三重県が公表している「介護助手導入実施マニュアル」をご紹介します。介護助手の受入手順や、複数の施設様の導入モデルなどが紹介されているので、介護助手の活用を検討されている施設管理者様は、一読してみてはいかがでしょうか。

執筆:花王プロフェッショナル業務改善ナビ【介護施設】編集部

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