コラム

2020年4月21日更新

介護ベッド用手すり・サイドレールの事故防止、あらためて対策を!

消費者庁が2019年10月29日に公表した「消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について」によると、公表制度が施行された2007年5月以降、報告のあった介護ベッド用手すりの事故件数は公表日時点で80件、うち死亡が44件にのぼるといいます。介護ベッド用手すり・サイドレールは立ち上がりサポートや転落防止など、本来はご利用者様の安全に寄与する介護用品ですが、使用方法を誤ると事故につながる恐れもあります。

そこで今回は、介護ベッド用手すり・サイドレールに関する事故リスクや、事故を防ぐ方法をご紹介します。

 

介護ベッド用手すり・サイドレールに潜む危険

2019年10月29日、消費者庁が「消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について」にて、特記事項として、介護ベッド用手すり事故に関する注意喚起を行いました。

これは、2019年9月に大阪府の施設で使用者(90歳代)が亡くなった事故を受けてのことです。同庁の報告によれば、ここ数年、以前に比べて事故件数は減少しているものの、未だに死亡事故が発生しています。

施設の管理者様・経営者様はあらためて介護ベッド用手すり・サイドレールに潜む危険性を意識し、事故防止策を徹底する必要があります。介護ベッド用手すり・サイドレールの事故を防ぐには、まず事故につながりやすい箇所と、特に注意したいご利用者様を理解することが大切です。

事故につながりやすい箇所

ここでは、介護ベッド用手すり・サイドレールの事故につながりやすい箇所を、起こり得る事故内容とともにご紹介します。

上記のうち、サイドレール内部の隙間や、サイドレールとサイドレール(手すり)の隙間に挟まる事故が多く発生しているようです。これらの箇所には特に注意を払いましょう。

特に注意したいご利用者様

医療・介護ベッド安全普及協議会によると、介護ベッド用手すり・サイドレールを使用するにあたって特に注意したいのは、以下のようなご利用者様です。

  • 自分の体を支えられずサイドレールなどに倒れ込む可能性のある方
  • 自力で危険な状態から回避することができないと思われる方
  • 認知機能障害などにより、ベッド上で予測できない行動をとると思われる方
  • 片マヒなどの障害などにより、体位を自分で保持できない方

出典:医療・介護ベッド安全普及協議会「続 医療・介護ベッドここが危ない!!」より

介護ベッド用手すり・サイドレールに関する事故事例

これまで実際に発生した介護ベッド用手すり・サイドレールに関する事故には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)が公表している情報から、3つの事故事例をご紹介します。

(1)サイドレールの隙間に挟まったことによる軽傷事故
2009年6月に発生。要介護および認知症の被害者の左腕が介護ベッドのサイドレールの隙間に入り、左脇の下付近にあざができた。

原因:
要介護および認知症の被害者がベッドから降りようとした際、介護ベッドのサイドレールの隙間に左腕が入り込み、動けなくなったと推定される。

(2)介護ベッド用手すりと介護ベッドの背部との間に挟まったことによる重症事故
2015年10月、東京都で発生。使用者(70歳代)が昇降機能のある介護ベッドのリモコンを操作したところ、介護ベッド用手すりと介護ベッドの背部との間に手が挟まり、負傷した。

原因:
夜間、暗い部屋で使用者(70歳代)が睡眠剤服用後に介護ベッド用手すりの隙間から手を出し、介護ベッドのリモコンを手探りで探し、通常の位置と異なる頭側の端部にあったリモコンを「通常速」で背上げ操作した。その結果、介護ベッド用手すりと介護ベッドの背部との間に手が挟まり事故に至ったと考えられる。
当該製品は使用していたベッドとの組み合わせでJIS認証を取得しており、製品の変形やリモコン動作の異常は認められないことから、製品に起因しない事故と推定される。

(3)手すりとフットボード(足側のついたて)の間に挟まったことによる死亡事故
2015年3月、広島で発生。使用者(80歳代)が介護ベッド用手すりと介護ベッドのフットボード(足側のついたて)の間に胴体部分が挟まった状態で発見され、病院に搬送後、死亡した。

原因:
適合サイズとは異なるベッドに介護ベッド用手すりを使用したことで、手すりとフットボード(足側のついたて)との隙間が広くなり、使用者(80歳代)の胴体部が挟み込まれたと推定される。
そもそも標準タイプのベッドに当該製品を使用すると、手すりとフットボードとの隙間が約12cmとJIS規格を満たさないため、レンタル事業者は安全策を講じる必要があると使用者家族に伝えていた。しかし、使用者家族は承諾の上、適合サイズと異なる製品を使用していた。

上記のように、JIS規格を満たさない製品の使用による事故だけでなく、製品に異常がなくとも事故が発生したケースもあります。介護ベッド用手すり・サイドレールの事故防止を考える際は製品そのものだけではなく、ご利用者様にも注意を向けることが重要であるとわかります。

 

事故を防ぐには?

ここからは、消費者庁が通知した「消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について」をもとに、介護ベッド用手すり・サイドレールの事故を防ぐための対策をご紹介します。

新JIS規格に適合しているか確認する

現在使用している介護ベッド用手すり・サイドレールが、2009年3月に改正された新JIS規格に適合した製品か確認しましょう。

新規格では事故発生リスクの軽減のため、手すりと手すりの隙間、手すりとヘッドボードの隙間などの基準が強化されています。例えば、サイドレール内の隙間の寸法については、「12cm以下」から「直径12cmの硬いものが通らない」に規定が変わっているように、改正後は実際の事故を想定した方法で測定されるようになりました。

新JIS規格への適合性を確認したいときは、レンタル契約先の事業者または販売事業者に問い合わせましょう。新JIS規格に適合していない製品を使用している場合は、適合製品への取り換えが推奨されています。

ただ、新JIS規格製品であっても使い方やご利用者様の状態によっては事故が起こる可能性があるため、取扱説明書の記載事項などを遵守し、ご利用者様にも注意を払いつつ使用しましょう。

新JIS規格製品に取り替えられない場合は?
新JIS規格製品への取り替えが難しい場合は、以下の対応が求められます。

・隙間をふさぐ
事業者が提供する補助具(※)や、クッション・タオルなどで隙間をふさぎます。このほか、サイドカバーや毛布などで手すり・サイドレール全体を覆う方法もあります。

  • 隙間をふさぐスペーサーなどは、各メーカーに問い合わせてください。

・ベッドの周りを整理整頓する
ご利用者様がベッドの外の物を取ろうとベッドから身を乗り出す事態を防ぐため、常にベッド周りを整理整頓しておきます。

・定期的に目視確認をする
ご利用者様が自分の体を支えられずサイドレール側に倒れそうになっているなど、事故につながる状態になっていないか、定期的に目視確認を行いましょう。

チェックリストで安全点検をする

事故を防止するためには、日頃から介護ベッドの安全点検を行うことも大切です。点検時に使用できるツールとして、医療・介護ベッド安全普及協議会が「医療・介護ベッド安全点検チェック表」を作成・公開しています。事故につながる可能性がある箇所への対応法などについて、くわしく解説されています。

チェック表は医療・介護ベッド安全普及協議会のホームページからダウンロードできるので、活用してはいかがでしょうか。

  • 製品に関する確認などは、レンタル契約先の事業者や販売事業者にお問い合わせください。

執筆:花王プロフェッショナル業務改善ナビ【介護施設】編集部

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