コラム

2020年12月15日更新

インフルエンザと新型コロナウイルス感染症、同時流行にどう備える?
症状の違いや感染予防策を解説

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秋から冬にかけて流行するインフルエンザ。ただ今年は新型コロナウイルス感染症との同時流行が懸念されているようです。

高齢者や基礎疾患のある方は、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスに感染すると「重症化するリスクが高い」といわれています。またご存じのように、一般的に高齢である介護施設のご利用者様は感染症に対する抵抗力が低いため、感染症を引き起こしやすいといわれています。これらのことから介護施設では、感染症が発生しないよう「インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症に関する正しい理解」と「感染予防策の徹底」が求められています。

そこで今回は「インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の類似点・相違点」や「感染予防策」などについてご説明します。

インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の類似点・相違点

インフルエンザと新型コロナウイルス感染症はどちらも呼吸器疾患を引き起こしますが、症状のいくつかは似ているため、症状だけで判別することは難しいとされています。そこでここでは、世界保健機関(WHO)とアメリカ疾病予防センター(CDC)が公開している「インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の類似点と相違点」をまとめたものをご紹介します。

インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の類似点・相違点

※発症間隔:一次感染者の発症から二次感染者の発症までの間隔

インフルエンザの流行状況

全国の定点医療機関から報告される患者数によると、今シーズンの日本国内のインフルエンザの発生は定点総数23人(令和2年第46週11月9日から令和2年11月15日まで)とされ、昨年の総数5082人と比べて大きく減少しています。
※定点医療機関:都道府県の指定を受け、対象の感染症の発生状況を指定の期間(週又は月)ごとにとりまとめて、保健所に届け出る医療機関のこと。

WHOは今年の南半球のインフルエンザの流行状況について「新型コロナウイルス感染症のパンデミックの中で、インフルエンザはほとんど検出されていない」と報告しています。日本の流行状況とWHOの発表から「今年のインフルエンザは流行しないのではないか」ということが最近いわれていますが、はっきりと判断できるわけではありません。

例年の傾向として、インフルエンザが最も流行する時期は年末から年が明けた1月から2月です。そのため、これから流行する可能性があることも考えられます。

【インフルエンザ 過去10年との比較】

インフルエンザ 過去10年との比較 グラフ

※国立感染症研究所 「インフルエンザとは」(2020年11月18日現在)を元に作成

平常時から実施したい予防策

新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスはどこに潜んでいるかわかりません。そこで介護施設では、ご利用者様や介護スタッフのみなさまの身を守るためにも、平常時から予防策を実施していくことが重要です。
現在は新型コロナウイルス感染症の予防策を中心に実施されている施設が多いと思いますが、インフルエンザの予防策の基本も、標準予防策(スタンダード・プリコーション)である「手指衛生」に「咳エチケット」、物を介しての感染を予防する「清掃」と「消毒」などです。新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスは飛沫感染と接触感染で広がりますので、感染経路別予防策である飛沫感染予防策と接触感染予防策を実施することで、インフルエンザも予防できることになります。
 
厚生労働省は、事務連絡「介護現場における感染対策の手引き(第1版)等について」の中で、「社会福祉施設等が提供する各種サービスは、利用者の方々やその家族の生活を継続する上で欠かせないものであり、十分な感染防止対策を前提として、利用者に対して必要な各種サービスが継続的に提供されることが重要である」と述べています。
 
本コラムでは、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザに焦点を当てていますが、その他の疾患についても同様のことがいえますので、平常時から予防策を実施することは必要不可欠です。「介護現場における感染対策の手引き【第1版】」には、新型コロナウイルス感染症の感染防止の対応について「感染防止(予防)に向けた日頃からの取組」が掲載されています。

【感染防止(予防)に向けた日頃からの取組】

 ▼職員・利用者ともに感染対策を徹底
介護職員は利用者の心身の介護をするため、密接に利用者と関わります。このため、介護における以下の標準予防策(スタンダード・プリコーション)について、職員・利用者ともに徹底することが重要です。

・マスクの着用を含む咳エチケット
・ケア提供前後や何かに触れた際の手指衛生
・清掃を徹底し、共有物(手すり等)については必要に応じて消毒
・発熱が認められる利用者にケアを行う場合(通所系では利用を控えてもらいます)には、エプロンを着用の上、必要時には手袋を着用し実施
 

▼職員・利用者の健康管理を徹底
感染の疑いについて、より早期に把握ができるよう努めることが重要です。サービス提供に際し、日頃からの利用者の検温等による健康状態の確認に加え、「いつもよりぐったりしている」「何か様子が変だ」等、状態の変化に注意することも重要です。
 
<職員の健康管理>
・職員は出勤前に体温を計測し、発熱等の症状が認められる場合には出勤を行わないようにします。
・職場の休憩所や職場外でも、換気が悪い空間に集団で集まることを避けましょう。食事を摂る等の際には、できるだけ2m以上離れて座る、向かい合わせにならないように1つずつ席をずらして座る等の工夫を徹底します。

ワクチンについて

新型コロナウイルス感染症のワクチンについては、早期の実用化を目指して、臨床試験を開始しているものがいくつかあります。インフルエンザワクチンでは、毎年インフルエンザウイルスA型株の2種類とB型株の2種類のそれぞれを培養して製造されている4価ワクチンがあります。インフルエンザワクチンは、そのシーズンに流行することが予測されると判断されたウイルス株を用いて製造されています。このため、昨年インフルエンザワクチンの接種を受けた方であっても、今年のインフルエンザワクチンの接種を検討することが必要です。
 
また、高齢者や基礎疾患を持つ方がインフルエンザウイルスに感染すると肺炎を伴うなど重症化することがあり、最悪の場合死に至ります。インフルエンザワクチンは重症化の予防効果があるとされ、予防接種法に基づく「定期接種」の対象者は以下の方々に定められています。

【インフルエンザ予防接種の対象者】

  1. 65歳以上の者
  2. 60歳以上65歳未満の者であって、心臓、腎臓もしくは呼吸器の機能に自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される程度の障害を有する者、またはヒト免疫不全ウイルスにより免疫の機能に日常生活がほとんど不可能な程度の障害を有する者

新型コロナウイルス感染症の流行が懸念される中で、この冬はインフルエンザワクチンの需要が高まる可能性があるとされています。より必要とされている方に確実に届くよう、予防接種法に基づく定期接種対象者(65歳以上の方など)の方々でワクチン接種を希望される方は、10月1日から優先して接種できるように配慮されています。インフルエンザワクチンの接種は流行前が有効とされているため、日本の状況を踏まえると12月中旬までにワクチン接種を終えることが望ましいと考えられます。
 
ワクチンの有効性については、高齢者は死亡の危険が1/5に、入院の危険が約1/3から1/2に減少するといわれています。なお現行のワクチンの安全性はきわめて高いものですが、高齢者の健康状態などによっては副反応などが生じる場合があるため、かかりつけの医師とよく相談の上、接種を受けるようにしてください。

執筆:花王プロフェッショナル業務改善ナビ【介護施設】編集部

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