コラム

2022年3月22日更新

スタッフの成長も、良好な人間関係維持も可能にする!上手な注意の仕方

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監修者プロフィール/本間 義昭(ほんま・よしあき)
株式会社キャリアファクトリー21代表取締役/マスター講師
過去、金融市場の営業や外資系生保エージェントとして経験を積み、税務・財務・法務案件を解決するコンサルティング企業で、経営コンサルや医療コンサルの実務と知識を習得。2019年5月より2020年1月まで介護老人保健施設で理事長代行として職員の定着に尽力し、半年間に渡り離職者0を達成する。「中堅・管理職・リーダー育成等階層別研修」をはじめとした「階層別研修」「リーダーシップ」「経営業務改善」「意識改革」「コーチング」等のジャンルで指導を行い、幅広い年齢層の人材育成に力を注ぎ、公益財団法人等の諸団体をはじめ介護施設や企業等で指導・セミナー及び講演を多数行う。

現場のリーダーや主任など部下の教育を担当されている方の中には、注意をしたいスタッフがいても「注意したことがきっかけで辞められたら困る」という思いから、注意すべきことを伝えられないと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
 
そこで今回は本間義昭氏監修のもと、良好な関係性を維持しつつもスタッフの成長につながる適切な注意の仕方をご紹介します。

  • 本媒体では施設職員を「スタッフ様」と表記しておりますが、本記事では「スタッフ」としております。

注意するときの基本原則

スタッフとの関係性を保ちながら成長につながるような注意をするには、守るべき基本のポイントがいくつかあります。

アイメッセージで伝える

相手を注意する際の表現方法としては「ユー(You)メッセージ」と「アイ(I)メッセージ」の2つがあります。ユーメッセージとは「(あなたは)これに気をつけなさい」「(あなたは)その場合はこうして」と、注意される相手を主語に置いた方法です。一方アイメッセージは「(あなたが)こうしてくれると(私は)安心する」「こうなっていたら(私は)助かる」と、注意する側を主語に置く表現になります。
 
ユーメッセージは命令のような強いニュアンスで伝わってしまい、注意された相手もつい反論をしたくなってしまいます。注意された側を責められた気分にせず、気持ちよく行動に移してもらうためには、あくまで自分の気持ちを伝えるだけのアイメッセージのほうが効果的です。

改善提案を取り入れて話す

「ここができてない」と伝えるのではなく「こうすればもっと良くなる」と改善のためのアドバイスをするようにしましょう。自分の至らない点をただ指摘されるだけでは、スタッフは仕事に対する自信を失ってしまいます。スタッフの成長を促すために、改善点を伝えるようにしましょう。

失敗したプロセスに目を向ける

ミスが起きた原因が部下にではなくプロセスにあると考えることが大切です。例えば同じ失敗を繰り返すスタッフに対して「やる気がないのではないか」など相手を否定するような注意をしてもミスの防止にはつながりません。「ミスをしたとき、具体的に何の作業をしていたのか」など失敗までのプロセスを具体的に整理してから、スタッフに改めてもらう必要がある部分については指摘するようにしましょう。

叱るときはスタッフとの関係修復を意識する

何度か注意をしても改善されない場合は、別のタイミングをつくり、スタッフ様ができていない点を明確に示して次の改善行動に導く「叱り」が必要になります。叱りは人間関係を壊してしまうものであるため、いくつかポイントを押さえて行うことが大切です。
 
まず、叱る際は大勢のスタッフがいる場所ではなく、個別に話せるような別室で行いましょう。人前で叱責されるとスタッフの心理的なストレスは大きくなってしまいます。暗い雰囲気は周りに伝わってしまうため、施設全体の明るい空気感を壊さないためにも個別で行うことが原則です。
 
また、叱るときは話の要点を絞り、手短に終わるようにしましょう。話が長くなるとスタッフの緊張感が薄れ、叱られることに対する不満が募ってしまいます。そして、叱った後は必ず「いつも助かっている」「これからも期待しているよ」とフォローを入れましょう。「叱って終わり」では、スタッフとの関係はぎくしゃくしたままです。関係を修復するためには1回の叱りに対して10回のアフターフォローが必要と考えたほうが良いでしょう。

【ケース別】適切な注意の仕方

では、上記の基本のポイントを押さえた上で、現場で具体的にどのように注意すればよいのか、2つのシーン別に例をご紹介します。

ご利用者様に対して不適切な言動をするスタッフ

■状況
ご利用者Aさんは、ご家族が全く面会に来ないことに対して孤独感を抱いています。スタッフBさんがAさんに対して「Aさんの息子さんはホームに顔も見せないし、何も協力してくれない。どうにかならないのかしら」などと話したところ、Aさんはその後居室に引きこもりがちになります。その後、他のスタッフがAさんから涙ながらに「家族が会いに来ないことをBさんになじられてつらい思いをした」と聞いたことで、施設全体で問題が発覚します。
 
■適切な注意の仕方
まずは、不適切な言動が起こってしまったプロセスを確認することが大切です。この場合、BさんはAさんの詳しい家族背景や入居事情の受け止め方について詳しく理解していなかった可能性があります。そこで、改善提案として「ご利用者様はそれぞれ家族関係や施設に入る事情が異なるため、個々人の背景を理解すればより適切なケアやコミュニケーションにつながる」と伝えることで注意を促しましょう。
 
またAさんの家族の事情を把握していなかったとしても、Bさんの発言はもう少しご利用者様への配慮が必要であると考えられます。「高齢だからこういう話し方をしても問題ないだろう」といった思い込みがあったのかもしれませんが、言語(語彙)能力や日常問題解決能力は70歳まで向上し続けるという研究結果もあります。発言内容について注意するときは、なぜそのような声かけをしたのか理由を聞いて背景を深掘りしながら、不適切な発言であったことをスタッフ自身に理解してもらうことが大切です。

他のスタッフに対して感情的になるスタッフ

■状況
スタッフCさんは働き始めて3ヶ月の新人で、なかなか仕事を覚えられずミスばかり起こしています。教育係であるスタッフDさんはつい感情的になって「同じ間違いばかり繰り返して迷惑だ」「仕事をなめている」とCさんに怒りをぶつけました。驚いたCさんはリーダーに「Dさんが怒るのが怖くて、分からないことがあっても相談する気になれない」と相談し、事態が発覚します。
 
■適切な注意の仕方
まずは、Dさんと個室で話す機会を設け、Cさんに対して感情的になる背景をヒアリングしましょう。例えば、Dさんは人手が足りていない中で業務と教育を行わなければならないことに負担を感じているのかもしれません。その場合は、業務が偏りすぎていないか管理側でしっかり検討した上で、アンガーマネジメントなどCさんとのコミュニケーションについて感情的にならない方法をDさんに提案するといった対応が考えられます。
 
また、背景の深掘りや改善案の提案だけでなく、Dさんに教育を任せている理由を話して、管理側としてDさんに期待していることを伝えると良いでしょう。注意を受けたDさんのモチベーション維持につながります。

まとめ

質の高いケアを提供し続けるためにはスタッフの成長が欠かせないため、スタッフに対する注意はリーダー職や管理職の方にとって避けては通れないものです。その場の感情に流されず、ポイントをおさえながら適切に注意することが大切です。


参考:
・伊東明『ほめる技術、叱る作法』PHP新書

・認知症介護研修・研究センター「高齢者虐待を考える 養介護施設従事者等による高齢者虐待防止のための事例集
・秋山弘子「超高齢社会のサクセスフル・エイジング

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