2024年3月19日更新
【弁護士監修】介護職員の個人アカウントにも注意が必要!施設管理者ができるSNSのリスクマネジメント
監修者プロフィール/中野 秀俊(なかの・ひでとし)
グローウィル国際法律事務所代表弁護士。早稲田大学政治経済学部卒。東京弁護士会所属。
大学時代、システム開発会社を立ち上げ、一時期は月商4,000万円以上を売り上げるIT企業を経営するも、契約トラブルなどの法律問題が原因で、事業に失敗。その後、弁護士へ。
IT企業を経営していた経験から、IT・ウェブ関係の案件を数多く担当し、その相談件数は2,000件以上。IT・ウェブ法務の知識を生かし、企業のSNS運用について、法律面のアドバイスも多数行っている。
SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を利用して、個人の趣味、私生活のことを誰もが発信できるようになりました。介護スタッフ様も例外ではなく、中には自身の仕事や職場について投稿する人もいるかもしれません。
投稿した内容が介護業界の理解や施設のアピールになることもある一方、使い方を間違えると個人情報の流出をはじめ、施設全体にマイナスの影響を与える恐れもあります。
今回は介護施設のリスクマネジメントの一環として、スタッフ様のSNSトラブルを防ぐ対策と万が一発生した際の対処法を解説します。
SNSトラブルでよくある事例
介護現場で働くスタッフ様が個人アカウントでSNSに投稿したことによるトラブルについて、よくある事例を3つ紹介します。
【事例1】利用者の顔や名前などを投稿していた
顔や名前を勝手に公開することはプライバシーの侵害に当たります。ご利用者様がとても楽しそうにレクリエーションに参加していた様子、笑顔で会話している様子など、ポジティブなシーンであっても、施設、ご本人様、ご家族様の許可なしに投稿してはいけません。
仮に許可を得て投稿した場合でも、後々トラブルに発展するリスクがあります。そのため、スタッフ個人のSNSには、基本的にご利用者様の写真などを投稿しないルールを設けておく方が安全です。
【事例2】利用者の病状などを投稿していた
ご利用者様の病歴、健康状態などの情報は、取り扱いに特に配慮が必要な「要配慮個人情報」に当たります(個人情報保護法第2条第3項)。漏えいした場合、個人情報保護委員会への報告と本人(ご利用者様)への通知が必要です。さらに、施設が管理義務を怠っていたと判断されれば行政指導の対象となる恐れもあります。
介護における個人情報の保護については「介護事業者として知っておくべき個人情報保護のポイント」でも解説しています。あわせてご覧ください。
【事例3】施設や同僚の愚痴を投稿していた
匿名のアカウントでSNSに投稿した業務に関した愚痴が施設、同僚に知られてしまうことは介護職員に限らず、よくあるSNSトラブルです。個人名や施設名が分からないように投稿しているつもりでも、写真や過去の投稿などから特定されることは十分考えられます。不適切な投稿で職場の人間関係が悪くなり、業務に支障が出るかもしれません。
また、施設名が特定されてしまうと、個人の投稿であっても施設のイメージダウンにつながったり、投稿内容が炎上したりする恐れもあります。
介護施設がSNSトラブルを避けるポイント
SNSトラブルを避けるには、スタッフ様に正しく使ってもらうことが大切です。仕組みづくりや教育など、施設管理者が取り組める対策を紹介します。
SNS利用に関する就業規則やガイドラインの策定
トラブルを招く投稿を抑制するには、個人アカウントの利用であってもルール作りが必須です。就業規則には基本的な禁止事項や違反した場合の処分内容を記載します。「勤務時間中のSNS、その他オンラインでの投稿を禁止する」「オフライン、オンライン上を問わず、施設の信用を毀損(きそん)する行為を禁止する」などの条項を追加し、詳細なルールをガイドラインに記載します。ガイドラインには、施設名や施設を特定できる内容の投稿を控えるような注意点などを明記します。スタッフ様には、規則とガイドラインを遵守する旨の誓約書の提出を求めましょう。
就業規則の策定はトラブル防止だけでなく、万が一トラブルが発生した際に迅速な対応を取り、施設を守るためにも必要です。
スタッフへのネットリテラシー教育の実施
スタッフ全員にネットリテラシー教育を実施し、新人スタッフ様が入所した場合も初日に実施します。研修の時間を設け、SNSの正しい利用方法や禁止事項、不適切な投稿が施設に与える影響について理解を深めてもらいます。丁寧な研修を実施しても、時間が経てば危機意識は薄れるものです。研修は定期的に実施して、常に意識を高く持ってもらえるよう努めます。
職場環境の改善
職場環境の改善も、SNSトラブルを防ぐには重要な要素です。施設や同僚の愚痴などを投稿する背景には、日頃の不平不満を相談できず、ストレスを発散するためのはけ口としてSNSを利用しているケースもあります。誰もが気持ちよく働ける職場環境を整えるのはもちろん、スタッフ様が不満を感じた場合でも、ため込まないよう意見を聞く機会を設けたり、相談窓口を設置したりすることも必要です。
SNSトラブルが起きた際の対処法
ここからはSNS投稿によりトラブルが発生してしまった場合の基本的な対処手順を紹介します。
1.投稿内容を記録する
不適切な投稿を見つけたら、スクリーンショットを撮るなどして証拠を残します。インターネット上では膨大な情報が日々更新されるので、問題の投稿を再び見つけるのが困難なケースもあります。後回しにすれば投稿者に削除される恐れもあるので、必ずその場で証拠を取りましょう。投稿内容は、事実関係の確認や法的措置を講じる際に必要です。
2.投稿者へ事実確認し、投稿の削除を要請する
投稿者を特定して投稿の経緯や理由などをヒアリングし、事実関係を明らかにします。確認が取れたら投稿者に削除を要請します。放置すると問題の投稿が拡散し、施設に悪影響を及ぼす恐れがあります。
就業規則に削除に関する規定がない場合、命令することは難しいため、投稿者に任意で削除してもらわなければいけません。改めて規定を確認し、必要に応じて内容を見直しましょう。
3.SNSトラブルの発生を公表・謝罪する
問題の投稿がある程度拡散されている場合は、施設の公式サイトやSNSアカウントで事実関係を公表し、謝罪を行います。迅速に対応することで、信頼回復につながります。謝罪の際は、スタッフ個人のアカウントからの投稿であっても施設の責任を認め、以下に述べるような改善策を示すことが大切です。
4.再発防止策を立案する
トラブルの原因を分析し、同様の問題が再発しないよう対策を講じることが必要です。投稿者への指導や処分を行うだけでなく、施設全体の問題としてガイドラインと就業規則の見直し、スタッフ様への教育の強化、職場環境の改善を再検討し、再発防止に努めましょう。
SNS利用ルールの浸透がリスクマネジメントにつながる
スタッフ様のSNSアカウントであっても、施設には業務に関わる情報発信を管理・指導する義務があります。明確なガイドラインの策定、研修の実施などを通し、リスクを事前に防止し、安心・安全な施設運営につなげていきましょう。
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