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コラム

2025年9月30日更新

看護職の離職を防ぐには?介護施設に求められる研修・勉強会

監修者 伊藤亜記氏のプロフィール画像

監修者プロフィール/伊藤 亜記(いとう・あき)
株式会社ねこの手 代表取締役
短大卒業後、大手出版会社へ入社。祖父母二人の介護と看取りの経験を機に、社会人入学にて福祉の勉強を始める。98年、介護福祉士を取得し、老人保健施設で介護職を経験し、ケアハウスで介護相談員兼施設長代行を務める。
その後、大手介護関連会社の支店長を経て、介護コンサルタント「株式会社ねこの手」を設立。
現在、旅行介助サービスや国内外の介護施設見学ツアーの企画、介護相談、介護冊子制作、介護雑誌の監修や本の執筆、連載、セミナー講師、TVコメンテーター、介護事業所の運営・営業サポートなど、精力的に活躍中。現在、年間200回以上の全国での講演やセミナーをこなす。特に介護記録の書き方や実地指導対策、介護業界の集客法、介護職のモチベーションアップ、介護職の人材育成、離職防止などの講義で全国的に高い人気を得ている。
2010年4月、子どもゆめ基金開発委員就任。医療・福祉法人の顧問や大手介護会社のコンサルタントも多数務める。
介護福祉士/社会福祉主事/レクリエーションインストラクター/学習療法士1級/シナプソロジーインストラクター/スマート介護士

超高齢社会の進展に伴い、2040年に向けて85歳以上の高齢者が大幅に増加すると予測されており、医療と介護の複合的なサービスへのニーズが高まっています。こうした中、介護施設では、医療と介護、生活支援を連携させ、ご利用者様を支える「看護職」の役割が一層重要になっています。施設の運営者にとっては、看護職の専門性を育て、定着を図るための取り組みが欠かせません。

そこで今回は、その取り組みの一つとして「研修・勉強会」に注目し、現場の実態や求められる研修内容について紹介します。

看護職の研修・勉強会の重要性と実施状況

看護職にとって研修・勉強会がなぜ重要なのか

「施設看護師」と呼ばれる介護施設で働く看護職には、医師の指示書を基にした医療的な処置に加え、ご利用者様の生活に寄り添うための知識やスキルが求められます。たとえば、嚥下褥瘡ケアといった基本的なケアのほか、看取り期のケア、感染対策を含む安全管理体制の構築など、多岐にわたる専門性が必要になります。

医療機関での勤務経験を持つ施設看護師は多いものの、医療現場での臨床との違いや介護施設ならではの役割に戸惑い、必要なスキルの習得に悩む人も少なくありません。だからこそ、研修や勉強会の存在が重要になります。

研修や勉強会は、施設看護師の満足度や定着率にも影響します。令和5年介護労働実態調査*1では、看護師2,240名のうち24.2%が、働き続ける上で役立っている取り組みとして「研修機会の充実」を挙げており、研修体制の整備は定着につながる要素の一つであることがわかります。

看護職の研修・勉強会の実施状況

実際に、施設看護師向けの研修は、多くの介護施設で実施されています。日本看護協会*2の調査によると、「施設内での教育・研修」を実施している割合は、介護老人福祉施設(特養)で57.6%、介護老人保健施設(老健)で73.9%に上ります。特に老健では実施率が高く、現場での教育体制が一定程度整ってきていることがわかります。

「施設外での教育・研修」についても、特養で83.2%、老健では79.3%といずれも高い水準にあり、外部機関を活かした学習機会も多くの施設で確保されているようです。

看護職員に対する教育・研修を行っている割合

 
 

介護老人福祉施設(特養)
※回答:549件

介護老人保健施設(老健)
※回答:610件

施設内での教育・研修を行っている

57.6%

73.9%


施設外での教育・研修に参加させている

83.2%

79.3%


出典:
日本看護協会「介護施設等における看護職員に求められる役割とその体制のあり方に関する調査研究事業報告書」P.15より改変

こうした実施率の高さを踏まえると、対応が遅れている施設は、人材確保や定着の面で課題が生じる可能性があり、採用や離職に影響が出ることも考えられます。安定した施設運営のためにも、研修体制の整備は欠かせない取り組みです。

  1. *1
    公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」
  • *2
    日本看護協会「介護施設等における看護職員に求められる役割とその体制のあり方に関する調査研究事業報告書」

介護施設における看護職の業務内容

看護職と介護職の役割の違い

介護施設では、施設看護師と介護職員が協働でご利用者様の生活を支えていますが、役割には共通点もある一方で、それぞれの専門性を活かした役割分担があります。ここで改めてそれぞれの役割を見てみましょう。

介護職員は、食事・排泄・入浴などの身体介護に加え、掃除や洗濯、食事の準備といった生活援助を通じて、日常生活全般を支援するのが主な業務です。一方、施設看護師は医療従事者として、多職種連携のもとでご利用者様の健康状態を継続的に観察し、健康管理や医療的ケアや担います。

基本的にはこのような役割分担がなされていますが、職員数の限られた小規模な施設やご利用者様との普段の関わりを重視する施設では、看護師が入浴や排泄介助などの身体介護を兼務することもあります。

具体的な看護職の業務

施設看護師は、医療・介護の両面から、以下のような幅広い業務を担っています。

施設看護師が行う主な業務例

  1. 日常生活を支援するための基本的ケア業務
    フィジカルアセスメント*3や認知症ケア、排泄・摂食・褥瘡予防などの基本的ケア、リハビリテーション支援などを行う。
  2. 急変時の対応
    ご利用者様の急変時に、初期対応や救急要請、医師との連携などを担う。
  3. 看取りに関する業務
    看取り期にあるご利用者様が最期を穏やかに迎えられるよう、身体的・精神的な苦痛の緩和やご家族対応を担う。
  4. セーフティマネジメント
    感染症の予防や介護事故の防止、苦情対策など、安全な生活環境を守るための対策体制づくりや職員指導を行う。

多職種と連携し、これらの多様な業務に対応するには、実践に即した研修や勉強会を通じて、専門的な知識とスキルを学べる環境づくりが重要です。

  • *3
    フィジカルアセスメント:聴診、触診、打診などの身体診査技術を用いて、健康状態を評価・判断すること

看護職に実施すべき研修内容の具体例

ここでは、前項で示した1〜4の業務内容に即した研修の具体例を紹介します。施設によって業務範囲は異なるため、自施設の状況に合わせた研修内容を検討・整備すると実践で活かせる学びにつながります。
日本看護協会では介護施設における看護職向けの研修プログラムを公表しています。その内容を参考に研修例を紹介します。

1.日常生活を支援するための基本的ケア

業務 

目的

研修内容

フィジカルアセスメント

加齢に伴う身体・精神機能の変化を踏まえ、入居者の健康状態を適切な方法でアセスメントする

講義:入居者の身体・精神機能の特徴、心身および生活機能のアセスメント方法

実技:聴診・触診・打診、機能検査(MMSE,HDS-R)


認知症ケア

「パーソン・センタード・ケア」の理念を 踏まえたケアを理解する

講義:パーソン・センタード・ケアの理念、認知症ケアにおける看護の視点・生活の視点コミュニケーション技術等

演習:事例検討(事例に基づき看護計画立案、症状に対するケアの検討を行う)


摂食・嚥下ケア

嚥下の機能とメカニズムについて理解する

講義:嚥下の機能とメカニズム、胃ろうの種類と特徴、胃ろう造設後の観察のポイント等

実技:栄養剤注入の手技、ポジショニングの考え方と方法、栄養剤の種類と選択等


排泄ケア

排泄機能の低下がみられる入居者の尊厳を守る役割を理解する

講義:排泄のメカニズム、入居者の特徴、疾患別特徴、ケアの基本、ケアの実践、補助用具の選び方等

実技:オムツの選び方と使い方、補助用具の使い方等


褥瘡ケア

褥瘡予防・治療方針について、多職種で協働、連携を図る

講義:褥瘡の発生要因と発生過程、治癒過程、治療方法等

実技:褥瘡予防のためのポジショニングの考え方と方法、福祉用具の種類と選択


2.急変時の対応

目的

研修内容

●高齢者の状態変化の特徴を理解する
●急変時における症状を理解する
●急変時に入居者、家族、医療機関等と円滑な対応をするために、看護職と介護職の連携体制強化が重要であることを理解する

講義:高齢者の状態変化の特徴について、状態変化のサインとなる症状について、急変時マニュアルおよび手順書について

演習:事例検討(自施設のマニュアルなどの見直し等)


3.看取り期のケア

目的

研修内容

●看取り期にある入居者および家族の意思を尊重しながら多職種で協働し、安らかな最期が迎えられるよう支援する
●遺族へのグリーフケアができる

講義:意思決定の支援等

演習:事例検討(その人らしい看取りケアとは、症状マネジメント、グリーフケア、多職種との連携・調整等)


4.セーフティマネジメント

業務 

目的

研修内容

介護事故予防と対応

介護施設における安全管理のあり方を理解し、介護事故予防に向けた組織的な取り組みに参画する

演習:事例検討、グループワーク(危険予知トレーニング等)


感染管理

介護施設における感染対策について理解する

演習:グループワーク(自施設の課題を出し合い、解決策を検討する等)


施設における安全管理体制の整備

介護施設のセーフティマネジメントにおける看護職の役割を理解し、組織的な管理体制を整備する

演習:グループワーク(自施設の委員会活動など組織的な取組みに関する意見交換)


新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえ、感染対策は近年特に重要性が増しており、令和6年度の介護報酬改定でも「高齢者施設等における感染症対応力の向上」が求められています。感染対策ができる看護師の配置は、人員配置基準を満たすためや加算取得の要件としてだけでなく、施設の安全・安心な運営を続けるためのBCP(事業継続計画)の観点からも欠かせない要素です。

定着率向上の第一歩として

看護職の専門性を高める研修や勉強会は、個々のスキル向上にとどまらず、施設全体のケアの質の向上や定着率の改善にも繫がる重要な取り組みです。日々の業務に追われる中で後回しにされがちですが、体系的な学びの場を整えることこそが、現場の不安を軽減し、人材の定着を支える基盤となります。こうした認識を持ち、積極的に多職種も交えた研修の整備に取り組んでいく姿勢が、これからの介護施設運営には求められています。

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