「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」はコロナウイルスのひとつです。コロナウイルスには、一般の風邪の原因となるウイルスや、「重症急性呼吸器症候群(SARS)」や2012年以降発生している「中東呼吸器症候群(MERS)」ウイルスが含まれます。
引用・参考文献:
新型コロナウイルスに関するQ&A 2.新型コロナウイルスについて 厚生労働省 利用:2022年8月5日
発症時の症状は、発熱、呼吸器症状、倦怠感、頭痛、消化器症状、鼻汁、味覚異常、嗅覚異常、関節痛、筋肉痛の順に多くみられています。インフルエンザや普通感冒と比較して、鼻汁・鼻閉は少なく、嗅覚・味覚障害の多いことが新型コロナウイルス感染症の特徴と考えられていましたが、オミクロン株による感染では、ウイルスが上気道で増殖しやすい特性に伴い、鼻汁、頭痛、倦怠感、咽頭痛などの感冒様症状の頻度が増加したとされています。また、嗅覚・味覚障害の症状の頻度が減少した報告もされています。
引用・参考文献:
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第 8.0 版 厚生労働省
医療機関向け情報(治療ガイドライン、臨床研究など)厚生労働省
新型コロナウイルスの主な3つの感染経路 引用文献:
①空中に浮遊するウイルスを含むエアロゾルを吸い込むこと(エアロゾル感染)
②ウイルスを含む飛沫が口、鼻、目などの露出した粘膜に付着すること(飛沫感染)
③ウイルスを含む飛沫を直接触ったか、ウイルスが付着したものの表面を触った手指で露出した粘膜を触ること(接触感染)
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染経路について 掲載日:2022年3月28日 国立感染症研究所
感染者(無症状病原体保有者を含む)から咳、くしゃみ、会話などの際に排出されるウイルスを含んだ飛沫・エアロゾル(飛沫より更に小さな水分を含んだ状態の粒子)の吸入が主要感染経路と考えられています。医療機関では、エアロゾルが発生する処置が行われる場合には、空気予防策が推奨されています。 引用・参考文献:
エアロゾルが発生する処置については、「ICNet 新型コロナウイルス感染症 関連情報 標準予防策の一時的に大量のエアロゾルが発生しやすい状況」をご参照下さい。
SARS-CoV-2が環境に付着した場合の生存期間は、プラスチック表面で最大72時間、ボール紙で最大24時間とWHOは発表しています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第 8.0 版 厚生労働省
医療機関向け情報(治療ガイドライン、臨床研究など)厚生労働省
WHOは、「呼吸器系の飛沫は直径5~10μm以上であるのに対し、直径5μm未満の飛沫は飛沫核またはエアロゾルと呼ばれる」としています。
WHOの考え⽅を参考にすると、⾶沫は径が5〜10μmの⼤きさを有し、それ以外のものは5μm未満の径を有する粒⼦と考えられます。さらに国内ではエアロゾル以外にマイクロ⾶沫という⽤語も使⽤されていますが、これも⾶沫よりも⼩さな浮遊しやすい粒⼦であり、基本的には微⼩⾶沫と同じ概念と考えます。
⾶沫はその重みによって落下しやすいため、通常2m程度の範囲内にいる⼈にしか感染は成⽴しません。一方、微⼩⾶沫やエアロゾルは軽いため、より遠くまで、さらに⻑時間の浮遊が可能と考えられます。医療現場における検証では、患者から4〜6m離れた距離においてサンプリングされた空気中からウイルスが検出されています。また、レストランでエアコンによる気流の影響下では10m程度まで到達する可能性が報告されています。
⾶沫核(droplet nuclei)は病原体周囲の⽔分が蒸発して病原体のみで浮遊できる状態となって感染するため、空間を共有している⼈全員が感染するリスクを有する状態となります。
表1 呼吸器から分泌される飛沫、微小飛沫、エアロゾルおよび飛沫核の比較
医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第4版 ⼀般社団法⼈ ⽇本環境感染学会 を参考に作成
潜伏期1〜14日間で、5日程度で発症することが多いとされています。発症前から感染性があり、発症から間もない時期の感染性が高いことが市中感染の原因となっており、SARSやMERSと異なる特徴です。
感染可能期間は発症2日前から発症後7~10日間程度と考えられています。血液、尿、便から感染性のあるSARS-CoV-2が検出されることは稀であるとされています。
一般的にウイルスは増殖や感染を繰り返す中で少しずつ変異していきます。新型コロナウイルスも約2週間で一箇所程度の速度で変異していると考えられています。新たな変異株が世界各地で確認されており、こうした変異株に対して警戒を強めていく必要があります。 引用文献:
国立感染症研究所では、こうした変異をリスク分析し、その評価に応じて、変異株を「懸念される変異株(Variant of Concern:VOC)」、「注目すべき変異株(Variant of Interest:VOI)」、「監視下の変異株(Variants under Monitoring :VUM)」に分類しています。
新型コロナウイルスに関するQ&A 2-2.変異株について 厚生労働省 利用:2022年8月5日
国内における変異株の分類については、下記のリンクをご参照下さい。
国立感染症研究所 SARS-CoV-2変異株について
変異株であっても基本的な感染予防策は、3密(密集・密接・密閉)対策や、適切なマスクの着用、手洗いの徹底など、これまでと同様に有効とされています。引続き感染対策を続けていくことが重要です。
参考文献:
新型コロナウイルスに関するQ&A 2ー2. 変異株について 問3 厚生労働省 利用:2022年8月5日
介護従事者が濃厚接触者となった場合の対応については、下記のリンクをご参照下さい。
事務連絡 令和4年7月26日一部改正 介護従事者である濃厚接触者に対する外出自粛要請への対応について 厚生労働省
新型コロナウイルス感染症は、高齢者と基礎疾患がある方については重症化しやすいため、感染経路を絶つことが重要です。新型コロナウイルスの感染経路は飛沫感染、接触感染です。感染が疑われる者や感染者が発生した場合は、標準予防策に加えて感染経路別予防策を実施することが必要です。この基本的な対策方法を踏まえて新型コロナウイルスを「持ち込まない」「広げない」ことに留意して具体的な対策を実施しましょう。
さらに、日常的に実施していただく手指衛生などの「標準予防策」と、新型コロナウイルス感染予防のために、常日頃からのマスクの着用や3つの密の回避、換気、新しい生活様式の実践を行うことが重要です。
参考文献:
「高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版(2019年3月)」の公表について 2019年3月 厚生労働省
介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第2版 厚生労働省
標準予防策は感染対策の基本となる考え方です。全ての血液、体液、分泌物(喀痰等)、嘔吐物、排泄物、傷のある皮膚、粘膜等は感染源となり、感染する危険性があるものとして取り扱うという考え方です。そして、この対策は感染者、非感染者を問わずに実施される対策です。
標準予防策は以下の10要素で構成されています。これらは、医療施設での対策を考慮したものなので、介護を提供する施設においては、①手指衛生から⑧咳エチケットを実施していく必要があります。
①手指衛生
流水と石けんを用いた手洗いと、アルコール手指消毒剤を用いた手指消毒をさす
➁個人防護具
手袋、マスク、ガウン、エプロン、ゴーグル、フェイスシールド等の感染から身を守るために着用するもの
③医療器材・器具・機器の取り扱い
使用した器具や機器をその種類や使用方法に応じて、洗浄・消毒・滅菌などの管理を行うこと
④環境整備
患者、利用者のケア区域内の清掃と消毒のこと
⑤リネンの取り扱い
リネンに付着した病原体が、人や周囲の環境に拡散しないように取り扱う方法のこと
⑥患者配置
病原体が人や周囲の環境に拡散しないように患者を配置、移動をする方法のこと
⑦職業感染防止
血液媒介病原体(HBV/HCV/HIVなどのウイルス性疾患等)への曝露を防止し、感染を防ぐこと
⑧咳エチケット
呼吸器病原体の伝播を防ぐために行う対応のこと
参考文献:
新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け) 厚生労働省
CDC. Guideline for isolation precautions : Preventing transmission of infectious agents in healthcare settings, 2007.
新型コロナウイルス感染症は飛沫感染、接触感染の可能性があるため、標準予防策に加え、飛沫予防策・接触予防策を実施することが必要となります
飛沫感染
接触感染
定義
患者の気道から出た病原性微生物が、飛沫(咳、くしゃみ等)を介してヒトに伝播すること。2m以内の範囲で伝播の恐れがあると言われている。
病原性微生物が感染者から他者へと伝播、あるいは汚染された物あるいはヒトの介して伝播すること。
主な対策
厚生労働省が示した感染対策マニュアル等に基づき下記のような対策を行う。
食事の介助等
清潔・入浴の介助等
排泄の介助等
リネン・衣類の洗濯等
ゴミの処理等
参考文献:
事務連絡 社会福祉施設等における感染拡大防止のための留意点について (その2)(一部改正)(令和2年10月15日) 厚生労働省
高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版(2019年3月) 厚生労働省
高齢者介護施設における感染対策 第1版 一般社団法人 日本環境感染学会
CDC. Guideline for isolation precautions : Preventing transmission of infectious agents in healthcare settings, 2007.
高齢者施設や自治体における新型コロナウイルス感染症対策に係る取組については下記のリンクをご参照下さい。
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