お知らせ

2022年9月30日更新

高齢者介護施設における新型コロナウイルス感染症関連情報(2022年8月24日時点)

新型コロナウイルス感染症とは

「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」はコロナウイルスのひとつです。コロナウイルスには、一般の風邪の原因となるウイルスや、「重症急性呼吸器症候群(SARS)」や2012年以降発生している「中東呼吸器症候群(MERS)」ウイルスが含まれます。

■主な症状

発症時の症状は、発熱、呼吸器症状、倦怠感、頭痛、消化器症状、鼻汁、味覚異常、嗅覚異常、関節痛、筋肉痛の順に多くみられています。インフルエンザや普通感冒と比較して、鼻汁・鼻閉は少なく、嗅覚・味覚障害の多いことが新型コロナウイルス感染症の特徴と考えられていましたが、オミクロン株による感染では、ウイルスが上気道で増殖しやすい特性に伴い、鼻汁、頭痛、倦怠感、咽頭痛などの感冒様症状の頻度が増加したとされています。また、嗅覚・味覚障害の症状の頻度が減少した報告もされています。

引用・参考文献:
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第 8.0 版 厚生労働省
医療機関向け情報(治療ガイドライン、臨床研究など)厚生労働省

■感染経路

新型コロナウイルスの主な3つの感染経路
①空中に浮遊するウイルスを含むエアロゾルを吸い込むこと(エアロゾル感染)
②ウイルスを含む飛沫が口、鼻、目などの露出した粘膜に付着すること(飛沫感染)
③ウイルスを含む飛沫を直接触ったか、ウイルスが付着したものの表面を触った手指で露出した粘膜を触ること(接触感染)

引用文献:
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染経路について 掲載日:2022年3月28日 国立感染症研究所

感染者(無症状病原体保有者を含む)から咳、くしゃみ、会話などの際に排出されるウイルスを含んだ飛沫・エアロゾル(飛沫より更に小さな水分を含んだ状態の粒子)の吸入が主要感染経路と考えられています。医療機関では、エアロゾルが発生する処置が行われる場合には、空気予防策が推奨されています。
SARS-CoV-2が環境に付着した場合の生存期間は、プラスチック表面で最大72時間、ボール紙で最大24時間とWHOは発表しています。

引用・参考文献:
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第 8.0 版 厚生労働省
医療機関向け情報(治療ガイドライン、臨床研究など)厚生労働省

 

エアロゾルが発生する処置については、「ICNet 新型コロナウイルス感染症 関連情報 標準予防策の一時的に大量のエアロゾルが発生しやすい状況」をご参照下さい。

■⾶沫、微⼩⾶沫、エアロゾル、⾶沫核の概念について

WHOは、「呼吸器系の飛沫は直径5~10μm以上であるのに対し、直径5μm未満の飛沫は飛沫核またはエアロゾルと呼ばれる」としています。
WHOの考え⽅を参考にすると、⾶沫は径が5〜10μmの⼤きさを有し、それ以外のものは5μm未満の径を有する粒⼦と考えられます。さらに国内ではエアロゾル以外にマイクロ⾶沫という⽤語も使⽤されていますが、これも⾶沫よりも⼩さな浮遊しやすい粒⼦であり、基本的には微⼩⾶沫と同じ概念と考えます。
⾶沫はその重みによって落下しやすいため、通常2m程度の範囲内にいる⼈にしか感染は成⽴しません。一方、微⼩⾶沫やエアロゾルは軽いため、より遠くまで、さらに⻑時間の浮遊が可能と考えられます。医療現場における検証では、患者から4〜6m離れた距離においてサンプリングされた空気中からウイルスが検出されています。また、レストランでエアコンによる気流の影響下では10m程度まで到達する可能性が報告されています。
⾶沫核(droplet nuclei)は病原体周囲の⽔分が蒸発して病原体のみで浮遊できる状態となって感染するため、空間を共有している⼈全員が感染するリスクを有する状態となります。

表1 呼吸器から分泌される飛沫、微小飛沫、エアロゾルおよび飛沫核の比較

表 1 呼吸器から分泌される飛沫、微小飛沫、エアロゾルおよび飛沫核の比較

表 1 呼吸器から分泌される飛沫、微小飛沫、エアロゾルおよび飛沫核の比較

表 1 呼吸器から分泌される飛沫、微小飛沫、エアロゾルおよび飛沫核の比較

医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第4版 ⼀般社団法⼈ ⽇本環境感染学会 を参考に作成

■潜伏期・感染可能期間

潜伏期1〜14日間で、5日程度で発症することが多いとされています。発症前から感染性があり、発症から間もない時期の感染性が高いことが市中感染の原因となっており、SARSやMERSと異なる特徴です。
感染可能期間は発症2日前から発症後7~10日間程度と考えられています。血液、尿、便から感染性のあるSARS-CoV-2が検出されることは稀であるとされています。

■変異株について

一般的にウイルスは増殖や感染を繰り返す中で少しずつ変異していきます。新型コロナウイルスも約2週間で一箇所程度の速度で変異していると考えられています。新たな変異株が世界各地で確認されており、こうした変異株に対して警戒を強めていく必要があります。
 
国立感染症研究所では、こうした変異をリスク分析し、その評価に応じて、変異株を「懸念される変異株(Variant of Concern:VOC)」、「注目すべき変異株(Variant of Interest:VOI)」、「監視下の変異株(Variants under Monitoring :VUM)」に分類しています。

引用文献:
新型コロナウイルスに関するQ&A 2-2.変異株について 厚生労働省 利用:2022年8月5日


 
国内における変異株の分類については、下記のリンクをご参照下さい。
国立感染症研究所 SARS-CoV-2変異株について
 

■変異株に対する感染対策

変異株であっても基本的な感染予防策は、3密(密集・密接・密閉)対策や、適切なマスクの着用、手洗いの徹底など、これまでと同様に有効とされています。引続き感染対策を続けていくことが重要です。

■介護従事者である濃厚接触者に対する外出自粛要請への対応について

介護従事者が濃厚接触者となった場合の対応については、下記のリンクをご参照下さい。
事務連絡 令和4年7月26日一部改正 介護従事者である濃厚接触者に対する外出自粛要請への対応について 厚生労働省 

施設での感染対策

新型コロナウイルス感染症は、高齢者と基礎疾患がある方については重症化しやすいため、感染経路を絶つことが重要です。新型コロナウイルスの感染経路は飛沫感染、接触感染です。感染が疑われる者や感染者が発生した場合は、標準予防策に加えて感染経路別予防策を実施することが必要です。この基本的な対策方法を踏まえて新型コロナウイルスを「持ち込まない」「広げない」ことに留意して具体的な対策を実施しましょう。
さらに、日常的に実施していただく手指衛生などの「標準予防策」と、新型コロナウイルス感染予防のために、常日頃からのマスクの着用や3つの密の回避、換気、新しい生活様式の実践を行うことが重要です。

■標準予防策

標準予防策は感染対策の基本となる考え方です。全ての血液、体液、分泌物(喀痰等)、嘔吐物、排泄物、傷のある皮膚、粘膜等は感染源となり、感染する危険性があるものとして取り扱うという考え方です。そして、この対策は感染者、非感染者を問わずに実施される対策です。
標準予防策は以下の10要素で構成されています。これらは、医療施設での対策を考慮したものなので、介護を提供する施設においては、①手指衛生から⑧咳エチケットを実施していく必要があります。

施設内での手指衛生、咳エチケットの啓発にポスターをご活用ください

■感染経路別予防策

新型コロナウイルス感染症は飛沫感染、接触感染の可能性があるため、標準予防策に加え、飛沫予防策・接触予防策を実施することが必要となります


飛沫感染

接触感染


定義

患者の気道から出た病原性微生物が、飛沫(咳、くしゃみ等)を介してヒトに伝播すること。2m以内の範囲で伝播の恐れがあると言われている。

病原性微生物が感染者から他者へと伝播、あるいは汚染された物あるいはヒトの介して伝播すること。


主な対策

  • 個室管理、もしくは集団隔離
  • 個人防護具の使用
  • 個室管理、もしくは集団隔離
  • 個人防護具の使用
  • 環境整備

■ウイルスを持ち込まない

  • 職員は、出勤前に体温を計測し、発熱等の症状が見られる場合には出勤を行わないことを徹底する。
  • 委託業者等については、物品の受け渡しは玄関など施設に限られた場所で行う。立ち入る場合には、体温を計測してもらい、発熱が認められる場合には立ち入りを断る。
  • 不要不急の面会は中止し、やむを得ず面会される場合にはマスク着用をお願いする。
  • 施設内での密集するようなイベントや、外出するようなレクリエーション、延期可能な定期検診などは控える。
  • 地域の流行状況を十分に考慮し、高齢者の不活発化にともなうフレイルにも注意する必要があることから、換気や入居者同士の距離(1-2m以上離れる)に留意してプログラムを組む。

■ウイルスを拡げない

厚生労働省が示した感染対策マニュアル等に基づき下記のような対策を行う。

  • 手洗い・手指消毒用アルコールによる消毒。
  • 患者周囲の高頻度接触部位などのアルコールあるいは 0.05%の次亜塩素酸ナトリウムによる清拭。
  • サービス提供時におけるマスクやエプロンの着用。
  • 手袋の着用、食事介助の前の手洗いや清潔な食器での提供の徹底。
  • 居室、サロン、食堂、リハビリ室、診察室、職員休憩室など施設内すべての換気。
  • 空調による換気に加え、開窓による定期的な換気(例:日中は1時間に1回、1回10分程度)。
  • 開窓による換気は風の流れができるように2方向以上で実施。

■濃厚接触が疑われる利用者に対する個別のケア時の感染対策

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食事の介助等

  • 原則として個室で行う。食堂で食事をする際は、換気に留意して間隔を空けるなどする。
  • 食事前に利用者に対し、(液体)石けんと流水による手洗い等を実施する。
  • 食器は使い捨て容器を使用するか、または、濃厚接触が疑われる利用者のものを分けた上で、熱水洗浄が可能な自動食器洗浄機(80℃10分間)を使用する。
  • まな板、ふきんは、洗剤で十分洗い、熱水消毒するか、次亜塩素酸ナトリウム液(0.05~0.1%)に浸漬後、洗浄する。

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清潔・入浴の介助等

  • 介助が必要な場合は、原則として清拭で対応する。
  • 清拭で使用したタオル等は熱水洗濯機(80℃10 分間)で洗浄後、乾燥を行うか、または、次亜塩素酸ナトリウム液浸漬後、洗濯、乾燥を行う。
  • 個人専用の浴室で介助なく入浴ができる場合は、入浴を行ってもよい。その際も、必要な清掃等を行う。
  • 浴室清掃を行う場合は、手袋を着用し、洗剤で洗い、温水(熱水)で流し、乾燥させる。体液等が付着したときは、次亜塩素酸ナトリウムで清拭する。

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排泄の介助等

  • 使用するトイレの空間は分ける。
  • おむつ交換の際は、排泄物に直接触れない場合であっても、手袋に加え、サージカルマスク、使い捨て袖付きエプロンを着用する。
  • 使用後ポータブルトイレは洗浄し、次亜塩素酸ナトリウム液(0.1% 5分間)等で処理を行う。

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リネン・衣類の洗濯等

  • 当該利用者のリネンや衣類については、その他の利用者と必ずしも分ける必要はないが、熱水洗濯機(80℃10 分間)で処理し、洗浄後乾燥させるか、または、次亜塩素酸ナトリウム液(0.05~0.1%)浸漬後、洗濯、乾燥を行う。

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ゴミの処理等

  • 当該利用者が鼻をかんだティッシュ等のゴミの処理は、ビニール袋に入れて感染性廃棄物として処理を行う。
  • おむつは感染性廃棄物として処理を行う。

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