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コラム

2018年8月29日更新

シリーズ:介護現場で役立つアンガーマネジメント(全3回)

【第1回】アンガーマネジメントでイライラ介護を“いきいき介護”に変えよう

著者プロフィール / 田辺有理子(たなべ・ゆりこ) 一般社団法人日本アンガーマネジメント協会シニアファシリテーター、横浜市立大学医学部看護学科講師

仕事でイライラしていませんか?

いま、介護現場では介護職のストレス対策や感情のコントロールが求められています。
スタッフのみなさまも大変な思いで介護しているのに、感謝されるどころか怒鳴られたりして、疲弊してしまう経験があるのではないでしょうか。しかし、こちらが感情的になって怒鳴り返したり、押さえつけたり、あるいは手をあげたりするようなことがあれば、それは虐待に発展しかねません。とはいえ、忙しい時間帯は焦って介助が荒っぽくなってしまう、何度もコールで呼ばれると「ちょっと待って!」など強い口調になってしまう、という経験がある人も多いのではないでしょうか。
 
介護の最前線に立っているみなさまは「イライラしていてはよいケアを提供できない」とわかっているでしょう。しかし、それができないから困ったり悩んだり、落ち込んだりするのです。もちろん不要な怒りやイライラは少ないほうが良いのですが、完全になくすことは難しい。だから自分の感情とうまく付き合っていくスキルを身につけていく必要があります。
介護職の方がイライラから解放されると、いきいき働ける活気ある職場を作ることができます。介護現場ではそれが虐待防止や人権擁護などの感性を高め、安全な介護ケアの提供につながります。

アンガーマネジメントとは

アンガーマネジメントは、怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニングです。これは、単に怒らないという意味ではなく、必要なときは上手に怒るということも含みます。私たちは、カッとなった勢いで声を荒げてしまうなど、感情にのまれることがあります。また、誰かに怒りをぶつけられたときに、その場では何も言えずに「あの時、やっぱり言えばよかった」と悔やむこともあります。
アンガーマネジメントは不要な怒りに振り回されず、そして必要な時には怒りを表現できるように、怒りにまつわる後悔を減らすことを目指します。
 
怒りはすべての人に備わった感情のひとつですからなくすことはできません。しかし、不適切な怒り方はちょっとしたトレーニングで改善できます。
たとえば、一度火がつくと一気に爆発するような怒り方をする人は、ささいなことも大事に捉える傾向があります。怒りには強弱の幅がありますから、小さなものは受け流すことも必要です。
 
過去の出来事を思い出していつまでも怒り続ける人もいます。怒りを引きずる時間は人それぞれですが、怒りが長引く人は気持ちの切り替えを意識し、気分転換のメニューを持つのがおすすめです。
 
朝から晩までずっと怒って、不満や愚痴が止まらない人もいます。これは職場の雰囲気を悪くさせるだけでなく、周囲からの信頼を失うことにもつながります。小さなことには目をつぶり、いざという場面にしっかり怒るというメリハリが大切です。
 
また、怒りの勢いにまかせて相手を攻撃してしまうことがあれば、それは虐待です。人を殴らなくても相手が傷つくような嫌味を言うなど、言葉による精神的な虐待もありますので、身近な問題として意識しておく必要があります。

今日からできる! 怒りを逃すテクニック

怒りによる攻撃的・破壊的な衝動はそれほど長くは続きませんが、そのとき反射的な行動に出ると、相手を傷つけたり、周囲からの信頼を失ったりする危険があります。そこで日本アンガーマネジメント協会では、怒りによる衝動に対して6秒間やり過ごすことを推奨しています。6秒で怒りが完全に消失するわけでなくても、冷静さを取り戻し、不適切な対応を回避することができます。怒りに対処するための目安として「6秒間」を意識しておくことがポイントです。
 
その場ですぐに怒りを鎮められそうにないときは、いったんその場を離れて気分転換やリラックスを図るなど、怒りを増幅させない対処法を試してみます。気負わずにできる自分に合った方法を準備しておきましょう。

1.グーパー運動

イラっとしたら、手をグーパー、グーパーしてみましょう。その怒りを握りつぶすように手を握り、怒りを放すようなイメージでパッと開く。これを落ち着くまで繰り返します。手を動かすことで怒りから意識をそらしやすくなります。

2.笑顔を作る

怒っていると表情が険しくなります。眉間にシワが寄り口元がへの字になっていると感じたら、意識して口角を上げて笑顔を作ってみましょう。これはフェイシャルフィードバック効果といって、笑顔を作ることで脳からポジティブな気分になる指令が出るとされています。

3.その場を離れる

冷静に対応できなければ、一度その場を離れてみるのも一つの方法です。もし介護場面であれば黙って立ち去るのでなく、「ちょっと確認してきます」などと伝えて距離を置くという方法もあります。同僚に交代してもらうということもできるでしょう。

4.リラックス

短時間でも怒りの出来事から離れられたら、その時間はリラックスして気持ちを落ち着けることだけを考えましょう。好きな飲み物を飲む、窓を開けて外の空気を吸う、ゆっくりと深呼吸をするなどの方法が有効です。

怒りの感情を抱いていると、不適切なケアを引き起こす危険性があります。また、職場の人間関係にも影響します。いきいきと働き続けるために、アンガーマネジメントを身につけていきましょう。
今回はアンガーマネジメントの基本的な考え方についてご紹介しました。次回は怒り(アンガー)とは何かについて、事例を交えて解説します。

参考書籍
田辺有理子:イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ(中央法規出版)
田辺有理子:イライラと賢くつきあい活気ある職場をつくる
介護リーダーのためのアンガーマネジメント活用法(第一法規出版)
安藤俊介,デューク更家:アンガーマネジメント×怒らない体操
たった6秒で怒りを消す技術(集英社)

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