コラム

2020年8月31日更新
2020年4月28日更新

認定介護福祉士とは?資格内容や研修の受講費用を紹介

「介護福祉士の上位資格」とされている認定介護福祉士。介護施設などで勤務されているスタッフ様なら、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。介護福祉士として活躍されているスタッフ様の中には、認定介護福祉士資格の取得を考えたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、認定介護福祉士がどのような資格なのかについて、求められる役割や資格を取得する条件、養成研修の内容やその受講料など、さまざまな側面からご紹介します。

認定介護福祉士とはどんな資格?

認定介護士とは、一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構」が認証・認定する、「介護福祉士の上位資格」に位置づけられる民間資格です。「居住・施設系サービスを問わず、多様な利用者・生活環境、サービス提供形態等に対応して、より質の高い介護実践や介護サービスマネジメント、介護と医療の連携強化、地域包括ケア等に対応するための考え方や知識、技術等を認定介護福祉士養成研修で修得した介護福祉士のこと」と同機構により定義されています。

認定介護福祉士は、以下のようなねらいで創設されました。

【認定介護福祉士のねらい】

  1. 介護福祉士の資質を高め、「ご利用者様のQOL向上」「地域包括ケアの推進」などに活かす。
  2. 他職種との適切な連携を介護サービスに活かす。
  3. 現任研修の受講促進などにより、自己研鑽の拠り所とする。
  4. 介護福祉士が資格を取得したあとのキャリアパスをつくる。
  • 一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構「認定介護福祉士とは」を元に作成

つまり認定介護福祉士は、超高齢化に伴い多様化・高度化するご利用者様のニーズに対応した、幅広い役割を担える介護福祉士の養成を目的につくられたものであり、スキルアップを促すだけでなく、キャリアアップの手段としても期待されている資格といえます。

なお認定介護福祉士登録名簿(2020年7月13日現在)によれば、60名の方が介護福祉士として登録されているようです。

認定介護福祉士に求められる役割・研修で獲得できるスキル

認定介護福祉士はご利用者様や介護スタッフ様だけでなく、医療職やリハビリ職などの他専門職、さらには地域に幅広く関わり、介護サービスの質を向上させる役割を担うことが期待されています。こうした役割を担うための知識やスキルは、認定介護福祉士養成研修を通して獲得することになります。

【認定介護福祉士に求められる役割】

▼施設・事業所のサービスマネージャー
介護職の小チーム(※)のリーダーに対する教育指導、介護サービスマネジメントを行い、介護サービスの質を向上させる役割。

  • ユニットなど、5~10名の介護職によるサービス提供チーム

▼介護サービス提供における連携の中核となる者
地域包括ケアを推進するため、介護サービス提供において他職種(医師、看護師、リハビリ職など)との連携・協働を図る役割。

▼地域における介護力向上のための助言
地域における施設・事業所、ボランティア、家族介護者、介護福祉士などの介護力を引き出し、地域の介護力の向上を図る役割。

【認定介護福祉士養成研修で獲得するスキル】

▼十分な介護実践力

  • どのようなご利用者様に対しても最善の個別ケアを提供できる。
  • リハビリテーションなどの知識を応用した介護を計画・提供でき、ご利用者様の生活機能を維持・向上させられる。
  • 認知症のBPSDを軽減させられる。
  • 障害特性に応じた介護が提供できる。
  • 心理的ケア、終末期ケアを実践できる。

▼介護職の小チーム(※)のリーダーへの教育・指導、介護サービスのマネジメントを行う力

  • 介護職の管理・運用を行い、介護サービスマネジメントや人材育成に責任を持ち、上司などにも働きかける。
  • ご利用者様やご家族のニーズが介護計画に反映されるようアドバイスするとともに、組織的に介護サービスが提供できるように取り組む。
  • 介護の根拠を説明し、指導するとともに、内省を習慣づける。
  • 記録様式などサービス管理に必要なツールを改善・開発できる。
  • 介護職チームの意識改革、サービスの提供方法や提供体制の改善、研修プログラムの編成などを行い、新しい知識・技術・実践をチームに浸透させられる。
  • ユニットなど、5~10名の介護職によるサービス提供チーム

▼他職種やそのチームと連携・協働する力

  • 他職種からの情報や助言を適切に理解し、介護職チーム内で共有し、適切な介護に結び付ける。
  • ご利用者様の日ごろの生活状況と、それを踏まえた介護の実践内容を、論理立てて他職種に伝える。
  • ご利用者様の状態像の変化に気づき、その状況を適切に他職種に伝え、連携を図ることで、ご利用者様の状態像の悪化を最小限にとどめることに寄与する。

▼地域と関わる力

  • ご家族に対して生活環境の整備や相談援助などができることで、ご家族の不安を軽減し、適切な関わりを支援する。
  • 地域におけるボランティア、介護者であるご家族、介護福祉士などに介護に関する助言・支援ができる。
  • 施設・事業所の介護力を地域の人々のために活用できる。
  • 介護に関する地域ニーズを把握・分析できる。
  • 一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構「認定介護福祉士の役割と実践力」を元に作成

認定介護福祉士と介護福祉士の違い

認定介護福祉士と介護福祉の違いは、資格の種類、求められる役割、資格取得に必要となる実務経験年数などさまざまです。両者にどのような違いがあるのか、簡単に表にまとめてみました。

【認定介護福祉士と介護福祉士の違い】

 認定介護福祉士と介護福祉士の違いの図

 認定介護福祉士と介護福祉士の違いの図

 認定介護福祉士と介護福祉士の違いの図

資格の種類については上記表の通り、「国家資格」か「民間資格」かの違いがあります。本記事公開時点では、認定介護福祉士が国家資格に移行する動きはないようです。

役割については「認定介護福祉士に求められる役割・研修で獲得できるスキル」でご紹介したように、介護福祉士とは大きな違いがあります。認定介護福祉士にも介護業務における高度なスキルが求められますが、他職種との連携やサービスマネジメント、人材育成などの役割も期待されていることから、仮にその役割を担う環境で働くとすれば、直接的な介護業務に携わる割合は介護福祉士より少なくなるかもしれません。

また、資格の取得に必要となる実務経験年数についても、介護福祉士は「介護等の業務に従事した期間が3年以上」、認定介護福祉士は「介護福祉士としての実務経験5年以上」という違いがあります。つまり認定介護福祉士になるための資格取得条件である「実務経験年数5年」には、介護福祉士になる前の実務経験の期間は加味されないということになります。詳しくは「認定介護福祉士資格を取得する方法は?」でご説明します。

なお待遇に関しては、勤務先の施設や事業所などに特別な手当がない限り、現状は介護福祉士とさほど変わりはなさそうです。実際、認定介護福祉士の資格手当を設けているところは多くないと思われます。

認定介護福祉士資格を取得する方法は?

認定介護福祉士資格を取得する方法は、養成研修の受講要件を満たした上で、カリキュラムを受講・修了することです。

資格取得の条件

認定介護福祉士の資格を取得するには、「認定介護福祉士養成研修」を受講・修了する必要があります。認定介護福祉士養成研修は「Ⅰ類」と「Ⅱ類」で構成されており、それぞれ以下のように受講要件が定められています。

【認定介護福祉士養成研修の受講要件】

▼認定介護福祉士養成研修Ⅰ類

  • 介護福祉士としての実務経験(5年以上)があること
  • 介護職員を対象とした現任研修の受講歴(100時間以上)があること
  • 研修実施団体のレポート課題または受講試験で一定水準の成績を修めていること(※)
  • 認定介護福祉士認証・認定機構が定める研修(介護福祉士ファーストステップ研修、認知症介護指導者養成研修、ぐんま認定介護福祉士養成研修)を修了している場合は免除

▼認定介護福祉士養成研修Ⅱ類

  • 認定介護福祉士養成研修Ⅰ類を修了していること
  • 介護職の小チーム(※1)のリーダー(※2)としての実務経験があること
  1. ※1
    ユニットなど、5~10名の介護職によるサービス提供チーム
  2. ※2
    ユニットリーダー、サービス提供責任者など
  • 一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構「認定介護福祉士 研修認証基準」を元に作成

上記のうち、Ⅰ類の受講要件であるレポート課題または受講試験が免除される研修については、認定介護福祉士養成研修の実施団体によって異なる場合があるため注意が必要です。

なお受講要件ではありませんが、Ⅰ類・Ⅱ類ともに、受講の際は「居宅、居住(施設)系サービス双方での生活支援の経験を持つことが望ましい」とされています。

申込方法

認定介護福祉士養成研修を実施しているのは認定介護福祉士認証・認定機構ではなく、同機構が認証した実施団体です。県の介護福祉士会や社会福祉協議会が研修を実施・募集しているので、資格取得に興味のある方は、まずお住まいの地域に実施団体があるか確認してみてください。

また、個人ではなく施設や事業所など法人単位で受講を申し込むケースもあるため、職場に団体受講の動きがないか確認してみましょう。

受講費用・期間

認定介護福祉士養成研修の受講費用と開催期間は全国一律ではなく、実施団体によって異なります。いくつかの団体の費用・期間を例示しますので、参考までにご覧ください。

【認定介護福祉士養成研修 実施団体の受講費用・期間(一例)】

認定介護福祉士養成研修 実施団体の受講費用・期間(一例)の図。例えば、長野県介護福祉士会では、受講費用は会員だと35万7千円であり、法人に対して長野県から一部助成する制度がある。

認定介護福祉士養成研修 実施団体の受講費用・期間(一例)の図。例えば、長野県介護福祉士会では、受講費用は会員だと35万7千円であり、法人に対して長野県から一部助成する制度がある。

認定介護福祉士養成研修 実施団体の受講費用・期間(一例)の図。例えば、長野県介護福祉士会では、受講費用は会員だと35万7千円であり、法人に対して長野県から一部助成する制度がある。

費用は会員で30万円前後、非会員で60万円前後と、気軽に受講を決断できる額とはいえません。また、期間も1年半~2年ほどかかるため、金銭面・時間面の双方に配慮してもらいつつ、施設・事業所から送り出してもらう形が現実的かもしれません。

認定介護福祉士養成研修のカリキュラム

認定介護福祉士養成研修のカリキュラムは計600時間です。Ⅰ類・Ⅱ類のそれぞれで、以下の領域・科目・単位・時間が設定されています。

【認定介護福祉士養成研修Ⅰ類のカリキュラム】

 認定介護福祉士養成研修Ⅰ類のカリキュラムの図

 認定介護福祉士養成研修Ⅰ類のカリキュラムの図

 認定介護福祉士養成研修Ⅰ類のカリキュラムの図

【認定介護福祉士養成研修Ⅱ類のカリキュラム】

 認定介護福祉士養成研修Ⅱ類のカリキュラムの図

 認定介護福祉士養成研修Ⅱ類のカリキュラムの図

 認定介護福祉士養成研修Ⅱ類のカリキュラムの図

  • 一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構「認定介護福祉士 研修認証基準」を元に作成

各科目の修了を評価する方法としては、レポート課題の提出、筆記試験、実技試験などが設定されています。例えばⅠ類の「認定介護福祉士概論」では、「本科目を終えて、今まで体験した事例を交えて学んだことを1600字程度(A4レポート1枚)にまとめる」ことが求められるようです。

なお、各科目の講義などの実施スケジュールは研修の実施団体により異なります。研修開始から資格取得までは長い時間(1年半~2年ほど)がかかるため、受講する場合は必ず事前にスケジュールを確認することをおすすめします。

認定介護福祉士資格を取得するメリットは?

今回ご紹介したように、認定介護福祉士には多様な役割が求められており、養成研修を受講・修了することで、それに見合ったスキルが身に付くとされています。認定介護福祉士資格の取得を通じて得られる最大のメリットは、介護のプロフェッショナルとして視野を広げられ、研鑽・スキルアップできることではないでしょうか。

ただし、決して安くはない研修の受講費用、長期の研修スケジュール、また資格取得後の待遇面を問題視する声があるのも事実です。養成研修を受講するかどうかについてはスタッフ様の向上心だけでなく、資格取得支援制度や研修期間中の働き方を考慮してくれる風土の有無など、現時点では勤務先の環境によるところも大きいといえそうです。

介護福祉士の上位資格とされる認定介護福祉士。介護スタッフのみなさまが資格の取得にモチベーションを感じ、その動きが広く普及するには、あらゆる面において「上位資格」となる必要があるかもしれません。

  • 認定介護福祉士について、くわしくは一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構にお問い合わせください。

執筆:花王プロフェッショナル業務改善ナビ【介護施設】編集部

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