2024年9月24日更新
【入浴介助編】教育チェックシートを活用して、新人介護職員教育を効率化!
監修者プロフィール/伊藤 亜記(いとう・あき)
株式会社ねこの手 代表取締役
短大卒業後、大手出版会社へ入社。祖父母二人の介護と看取りの経験を機に、社会人入学にて福祉の勉強を始める。98年、介護福祉士を取得し、老人保健施設で介護職を経験し、ケアハウスで介護相談員兼施設長代行を務める。
その後、大手介護関連会社の支店長を経て、介護コンサルタント「株式会社ねこの手」を設立。
現在、旅行介助サービスや国内外の介護施設見学ツアーの企画、介護相談、介護冊子制作、介護雑誌の監修や本の執筆、連載、セミナー講師、TVコメンテーター、介護事業所の運営・営業サポートなど、精力的に活躍中。現在、年間200回以上の全国での講演やセミナーをこなす。特に介護記録の書き方や実地指導対策、介護業界の集客法、介護職のモチベーションアップ、介護職の人材育成、離職防止などの講義で全国的に高い人気を得ている。
2010年4月、子どもゆめ基金開発委員就任。医療・福祉法人の顧問や大手介護会社のコンサルタントも多数務める。
介護福祉士/社会福祉主事/レクリエーションインストラクター/学習療法士1級/シナプソロジーインストラクター/スマート介護士
人材不足が課題の介護業界では、現場で即戦力になる人材を迅速に育成するため、効率的な新人教育体制の構築が重要です。そのような際に役立つのが教育チェックシートです。チェックシートの活用により、新人介護職員様がスキルや知識を体系的に習得できるだけでなく、教育担当者様が教育内容の一貫性を保てる点などにおいても有用なツールです。
そこで今回は教育チェックシートを活用するメリットや、「入浴介助」の教育に活用できるチェック項目についても紹介します。
教育チェックシートの必要性
教育チェックシートは、職員のスキルを見える化できるツールです。業務ごとに必要なスキルや知識を一覧化し、その習得状況を追跡するための教育支援ツールとして利用されています。習得状況の把握に加え、教育担当者様と新人介護職員様のコミュニケーションを円滑にするツールとしても取り入れられています。
教育チェックシートは、「教育の一貫性を保てる」「習得状況やフィードバックが分かりやすい」といったメリットがあります。介護教育現場で教育チェックシートを取り入れる必要性については、「効率的な新人介護職員教育にはチェックシートが必須!【排泄介助編】」でご説明していますので、詳しくはそちらをご覧ください。
入浴介助で教育チェックシートが重要な理由
入浴介助は排泄介助や食事介助などと並ぶ基本的な介護スキルの一つです。まずは入浴介助の際には、ご利用者様の安全・安心を第一に考えましょう。入浴介助は身体を清潔に保つだけではなく、ご利用者様を精神的にも安らげる作用があります。生活の中で入浴を楽しみにされているご利用者様も少なくありません。正しく入浴介助をしないと皮膚トラブルのリスクが高まる恐れがあります。
入浴はご利用者様の心身のリラックスにもつながります。生活の一つの楽しみとして快適に入浴していただくためには、ご利用者様のプライバシーに配慮した介助スキルや心構えが求められます。
また、お湯につかるため心臓には負担がかかり、床は滑りやすく、転倒の危険も伴ったりします。浴室内では「歩行=リハビリ」という考え方は止め、ご利用者様の安全・安心を第一に考えた介助を実践しましょう。
教育チェックシートを活用すると、介助スキルを体系的に習得できます。また、体調(顔色・熱・呼吸など)、めまいや頭痛など不調の訴え、体の痛み、皮膚の状態など、介助中に行う確認から、介護場面に応じたケアを各スタッフが確実に行えるようになり、施設全体としてもケアの質が高まります。
次に、入浴介助業務の基本となる「事前準備」「入浴前」「入浴中」「入浴後」のチェック項目例を紹介します。
基本的な入浴介助スキルのチェック項目
事前準備
入浴介助を始める前に、まず必要な準備物をそろえられているかをチェックします。準備が不十分だと、忘れたものを取りに行くわずかな時間であってもご利用者様を一人にすることになり、転倒などの事故が起こりかねません。物品の準備以外にも、ご利用者様への事前の連絡や、入浴のタイミング、入浴方法について確認が取れているかも大切なチェックポイントです。
入浴環境の確認
□段差の有無や床の滑りやすさを確認している
□室温を確認した
□脱衣所・浴室の室温を適温に調整する
□窓を閉め、寒くないように室温を調整している
□暖房器具が無ければ、浴槽のフタを開けるなどして蒸気で暖めている
□浴室と脱衣所の温度差が急激にならないよう注意している
□お客様の状態(ふらつきがある等)に応じて、着替え時に座る椅子を用意している
□入浴に必要な物品(福祉用具)を準備し、安全点検をする
□適切な高さに調整されている
□ネジがゆるんでないか確認をしている
□滑り止めのゴムが擦り減ってないかの確認をしている
□浴槽のお湯の温度を確認している
※好みもありますが38℃~40℃のぬるめに設定するのが適切です
□前に浴室を利用されたご利用者様が入浴した際の湯水や石鹸などが床に残っていないか確認をしている
□浴室のドアを閉めているなどのプライバシーの確保ができている
ご利用者様に関する事前確認
□ご利用者様に合わせて以下の準備物を用意できている
□タオル
□着替え(おむつや尿とりパッド、パウチ(装具)なども含む)
□シャンプーやボディソープ、スポンジなど
□入浴直後に塗布する軟膏や保湿剤など
□介助を行うための以下の準備物を用意できている
□濡れたとき用の着替え、もしくは入浴介助用のエプロン
□入浴介助のサンダルや長靴
□手袋
□ご利用者様に入浴することを事前に伝えている
□入浴の前に、排泄の確認をしている(トイレは事前に済ませている)
□空腹時や食後すぐの入浴はできるだけ避けている
□ご利用者様に十分な水分補給を済ませてもらっている
□事前に、ご利用者様に合わせた入浴方法を手順書などで確認している
入浴前
入浴前はご利用者様の体調チェックを行えているかを確認します。健康状態によっては入浴が容態を悪化させる恐れがあるため、体調が優れない場合無理に入浴をしないように、清拭に切り替えるなどのケアプランができているかもチェックしましょう。
そのほか、安全のために脱衣所・浴室の環境の確認や、排泄・水分補給の促し、着替えの際の配慮を適切に行えているかの確認も重要です。
□バイタルチェックを行っている
□ご利用者様の体調の確認(顔色・熱・呼吸、めまい、頭痛、身体の痛みなど)を行い、上長に報告・連絡・相談をしながら入浴可否の判断を行っている
□乾燥や傷、湿疹などがないか、皮膚の状態を確認できている
□体調や身体の状態がすぐれない場合は、事前にケアプランを確認し、上長に報告・連絡相談しながら、上長の指示に従って清拭に切り替えている
□十分な水分補給を済ませてもらっている
入浴中
入浴中は事故が起こりやすいので、一つひとつの介助行為に細心の注意を払うよう指導を行う必要があります。特に入浴中はご利用者様から絶対に目を離してはいけません。広い浴槽・深い浴槽は、おぼれる危険性が高く、生死に関わる事故を引き起こします。また、万が一おぼれそうになった際にすぐに介助可能な位置にスタッフが待機していることが重要です。
入浴方法によって必要な介助や注意点が異なるため、それぞれのチェックポイントに基づいて習得状況を確認することが重要です。
一般浴(全身浴)の場合
一般浴(全身浴)は、日常生活動作(ADL)が比較的自立しているご利用者様においてはご自分で浴槽の出入りを行う場合もありますが、その際も転倒やふらつきなどの見守りが必要です。浴槽をまたぐときや立ち座りのときに転落・転倒に注意しているかが、教育時の重要なチェックポイントです。
着脱時の確認
□脱衣場への移動・誘導の際に、転倒・ふらつきがないか確認している
□浴室・浴槽への出入りは、危険がないように特に注意し、動作を観察・援助している
□衣服の着脱は、健側から脱いでいただき、患側から着ていただいている
□全身の皮膚の状態を観察している
□着脱の際、手摺りを使用し、転倒には十分に注意している
洗身時の確認
□洗身前、職員が必ずシャワーの湯温を確認、ご利用者様にもお声がけしている
□床や椅子など、肌が触れるところにお湯をかけて温めている
□自立支援の観点からご利用者様ができる洗身は見守り、不十分なところの洗身援助を行っている
□転倒に気を付け、細かい部分の洗身援助を行っている
□洗身の際、必ずお声がけしてから、足元から掛け湯をしている
□全身の皮膚の状態を観察している
□シャワーイスに腰掛け、足元からシャワーをかけている
□血液循環を促すため末梢から中枢にむけて洗っている
□石鹸のつけすぎに注意している
□あまりこすり過ぎないようにしている
□力加減は、お客様に確認しながら行っている
□洗い忘れ、すすぎ残しがないか確認している
□浴槽をまたぐときや立ち座り、移動のときはご利用者様がバランスを崩した場合に備えて手の平で腰部を支えている
入浴中の確認
□冬場は浴室に入る際、かかり湯にて身体を十分に温めている
□浴槽へ入浴する際、必ず手摺りを持っていただき、後方から介助している
□入浴中に表情や気分など変化がないか注意している
□心臓への負担を軽減するため、極力心臓より下の位置で湯船につかるようにしている
□入浴中には会話を持つなど、常に声掛けしリラックスできるようにしている
□湯船に入る目安時間は5分くらいにし、のぼせに注意している
□ご利用者様にあった入浴を心がけ、時間をとって行っている
□適切なお声がけでご利用者様に温まったかをお声がけで確認している
□入浴を終える前に上がり湯をかけている
シャワー浴の場合
シャワー浴の場合には、浴室内の温度管理や浴室・浴槽への出入りは、危険がないように特に注意し、動作を観察・援助することが重要です。冬場は浴室に入る際、かかり湯にて身体を十分に温めていただくなどのチェックポイントが挙げられます。
着脱時の確認
□脱衣場への移動・誘導の際に、転倒・ふらつきがないか確認している
□浴室・浴槽への出入りは、危険がないように特に注意し、動作を観察・援助している
□衣服の着脱は、健側から脱いでいただき、患側から着ていただいている
□全身の皮膚の状態を観察している
□着脱の際、手摺りを使用し、転倒には十分に注意している
洗身時の確認
□洗身前、職員が必ずシャワーの湯温を確認、ご利用者様にもお声がけしている
□床や椅子など、肌が触れるところにお湯をかけて温めている
□自立支援の観点からご利用者様ができる洗身は見守り、不十分なところの洗身援助を行っている
□洗身時は身体が冷めやすいので、適時掛け湯を行う、桶等を準備して足を入れていただき体温低下を防ぐようにしている
□転倒に気を付け、細かい部分の洗身援助を行っている
□シャワーイスに腰掛け、足元からシャワーをかける
□血液循環を促すため末梢から中枢にむけて洗っている
□石鹸のつけすぎに注意している
□あまりこすり過ぎないようにしている
□力加減は、お客様に確認しながら行っている
□洗い忘れ、すすぎ残しがないか確認している
シャワー浴中の確認
□入浴中に表情や気分など心身状態に変化がないか注意している
□適切なお声がけで、体が温まったかをご利用者様にご確認している
□立ち座り、移動のときは、ご利用者様がバランスを崩した場合に備えて手の平で腰部を支えている
機械浴は、機械の操作方法を誤ったり、確認を怠ったりすると、予想外の事故につながる危険性があるため、事故防止の観点からの指導が特に重要です。
着脱時の確認
□脱衣場への移動・誘導し、チェアー・車椅子のブレーキを確認している
□衣服の着脱は、健側から脱いでいただき、患側から着ていただいている
□着脱の際、手摺りを使用し転倒には十分に注意している
□浴室内の車椅子上で脱衣を行っている□全身の皮膚の状態を観察している
□浴室へご移動し、チェアー・車椅子のロックを確認している
洗身時の確認
□必ず2人介助でチェアーへの移乗を行っている
□洗身前、職員が必ずシャワーの湯温を確認、ご利用者様にもお声がけしている
□洗身の際、必ずお声がけしてから、足元から掛け湯をしている
□自立支援の観点からご利用者様ができる洗身は見守り、不十分なところの洗身援助を行っている
□転倒に気を付け、細かい部分の洗身援助を行っている
□洗い忘れ、すすぎ残しがないか確認している
入浴中の確認
□お湯の温度を自身で確かめてから、ご利用者様にも確認してもらっている
□肌が触れる機械部分にお湯をかけて温めている
□経鼻栄養チューブやバルーンカテーテルを使用している場合は身体に固定している
□機械のストッパーがかかっているか、身体が挟まれる位置にないかを確認している
□浴槽に入るときは、身体が浮かないようにベルトを絞めている
□冬場は浴室に入る際、かかり湯にて身体を十分に温めている
□ストレッチャーの場合、ご利用者様の顔や耳に水が入らないようにしている
□入浴中に表情や気分など心身状態に変化がないか注意している
□心臓への負担を軽減するため、極力心臓より下の位置で湯船につかるようにしている
□入浴中には会話を持つなど、常に声掛けしながらリラックスできるようにしている
□湯船に入る目安時間は5分くらいにし、のぼせに注意している
□適切なお声がけでご利用者様に温まったかをお声がけで確認している
□入浴を終える前に上がり湯をかけている
入浴後
入浴後は転倒防止のためにまず足の裏の水分を丁寧に拭き取り、その後湯冷めを防ぐためにあら拭きができているかを確認します。入浴後に起こる体調変化の危険性を伝えたうえで、十分な水分補給と入浴後の体調確認についても指導を行う必要があります。
□バスタオルで水気を十分にとり、身体が冷えないようにしている
□清潔なタオルを使用し、軽く押し当てるように水気を取っている(ゴシゴシとこすらないように注意している)
□拭き残しが無いように全身を確認している
□ふらつきがあるご利用者様には、用意した椅子に座っていただいていから介助している
□ご気分が悪くないかなどのお声がけで、ご利用者様に確認をしている
□状態の変化があれば、速やかに上長に連絡している。
□身体が冷えないように、すみやかに更衣介助を行っている
□入浴後、ご利用者様に水分補給をしていただいている
□ケアプランを確認し、保湿剤や軟膏を塗っている
□ご利用者様に整髪のお声がけをしている
□ドライヤーで髪の毛を乾かす際には必ず温度を確認し、常にご利用者様にも熱くないかのお声がけをしている(火傷防止のため)
□ドライヤーを頭部に近づけすぎないよう注意し、髪から30cmくらい離してかけ、顔や耳に直接熱風がかからないようにしている
□ご利用者様に体調を確認し、十分に水分補給できるようお声がけしている
□介護記録を入力もしくは記載している(自立支援の様子、ご本人の入浴前後の様子など)
効率的な新人教育のために
ご利用者様に安全で快適な入浴時間を過ごしてもらうためには、幅広い観察力やコミュニケーション力を含めた介護スキルが必要です。新人介護職員様が基本的な入浴介助スキルを正しく、ポイントを押さえて習得し、介護場面に応じたより良いケアを提供できるようにするためにも、新人教育チェックシートの活用をおすすめします。
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