環境整備の重要性

介護施設における環境整備の重要性

環境整備とは居室・洗面所・トイレ・浴室などの清掃のみに留まらず、清掃しやすいように整理整頓することも意味します。不衛生で雑然とした環境は病原体が繁殖しやすく、感染のリスクが高まります。
感染経路を有効に遮断するポイントは手指衛生を徹底することですが、手指衛生を行えば、環境整備を行わなくてよいわけではありません。環境から伝播していく病原体の存在を考慮する必要があります。

環境由来の病原体とは

病原体の中には、居室やトイレなどの環境に長期間生存し、環境を介して間接的に感染する「環境由来の病原体」が存在します。インフルエンザウイルスやノロウイルス、レジオネラ属菌などがその代表です。B型肝炎ウイルスのように、環境表面で1週間以上生存するものもあります。

病原体の一例とその生存期間の目安

病原体の一例と環境表面におけるその生存期間の目安の表。B型肝炎ウイルスの生存期間は1週間以上、インフルエンザウイルスの生存期間は1〜2日間、ノロウイルスとネコカリシウイルスは8時間〜7日間となっている。

病原体の一例と環境表面におけるその生存期間の目安の表。B型肝炎ウイルスの生存期間は1週間以上、インフルエンザウイルスの生存期間は1〜2日間、ノロウイルスとネコカリシウイルスは8時間〜7日間となっている。

病原体の一例と環境表面におけるその生存期間の目安の表。B型肝炎ウイルスの生存期間は1週間以上、インフルエンザウイルスの生存期間は1〜2日間、ノロウイルスとネコカリシウイルスは8時間〜7日間となっている。

参考文献:
Kramer A, Schwebke I, Kampf G.
How long do nosocomial pathogens persist on inanimate surfaces? A systematic review
BMC Infectious Diseases. 2006,6:130

ただ、「感染が心配だから…」ということで、すべての環境を消毒しなければならないわけではありません。
ご利用者様の生活の場である介護施設においては、環境消毒の徹底よりまず目に見える汚れを除去し、居心地のよい住みやすい環境づくりを優先するのがよいでしょう。

環境整備の基本は清掃

環境整備の基本は「清掃による汚染の除去」です。居室や浴室、トイレなどは洗浄剤を用いた湿式清掃を行いましょう。目に見える汚れを取り除き、住みよい環境作りを目指しましょう。

環境表面の消毒は低水準消毒薬で

厚生労働省の通知や米国疾病予防管理センター(CDC)のガイドラインによれば、日常的な環境表面の清掃について高レベルの消毒薬を使用する必要はないことが示されています。消毒薬にはさまざまな種類がありますが、日常的な環境表面の消毒には低水準消毒薬(塩化ベンザルコニウムなどの第4級アンモニウム塩)が最適です。

参考文献:厚生労働省「医療機関等における院内感染対策について」
CDC「Guideline for Disinfection and Sterilization in Healthcare Facilities, 2008.」

微生物の消毒薬抵抗性の強さ、および消毒薬の抗菌スペクトル

微生物の消毒薬抵抗性の強さ、および消毒薬の抗菌スペクトルを表した図。消毒薬に対する抵抗性が強い順に、細菌芽胞、ウイルス・結核菌、糸状真菌、MRSAや大腸菌などの一般細菌、カンジダ等の酵母様真菌が並んでいる。 次亜塩素酸ナトリウムなどの消毒薬は、一般細菌、酵母様真菌から細菌芽胞まで広く有効。 次に広いスペクトルを示すのは、ポビドンヨードやアルコール(消毒用エタノール・イソプロピルアルコール)で、一般細菌、酵母様真菌からウイルス・結核菌まで有効。 塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシンなどの低水準消毒薬は、一般細菌、酵母様真菌に有効。

微生物の消毒薬抵抗性の強さ、および消毒薬の抗菌スペクトルを表した図。消毒薬に対する抵抗性が強い順に、細菌芽胞、ウイルス・結核菌、糸状真菌、MRSAや大腸菌などの一般細菌、カンジダ等の酵母様真菌が並んでいる。 次亜塩素酸ナトリウムなどの消毒薬は、一般細菌、酵母様真菌から細菌芽胞まで広く有効。 次に広いスペクトルを示すのは、ポビドンヨードやアルコール(消毒用エタノール・イソプロピルアルコール)で、一般細菌、酵母様真菌からウイルス・結核菌まで有効。 塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシンなどの低水準消毒薬は、一般細菌、酵母様真菌に有効。

微生物の消毒薬抵抗性の強さ、および消毒薬の抗菌スペクトルを表した図。消毒薬に対する抵抗性が強い順に、細菌芽胞、ウイルス・結核菌、糸状真菌、MRSAや大腸菌などの一般細菌、カンジダ等の酵母様真菌が並んでいる。 次亜塩素酸ナトリウムなどの消毒薬は、一般細菌、酵母様真菌から細菌芽胞まで広く有効。 次に広いスペクトルを示すのは、ポビドンヨードやアルコール(消毒用エタノール・イソプロピルアルコール)で、一般細菌、酵母様真菌からウイルス・結核菌まで有効。 塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシンなどの低水準消毒薬は、一般細菌、酵母様真菌に有効。

参考文献:尾家重治「器材・環境消毒法」
花王ハイジーンソルーションNo.6 2004

消毒前の洗浄が肝心

消毒薬を使用する際には、事前に消毒範囲をきちんと洗浄しておくことが重要です。消毒薬は病原体に接触することで効果を発揮しますが、汚れの中に入り込み汚れを除去する働きがありません。そのため、手あかなどの汚れに覆われた病原体に対しては消毒効果を発揮できず、汚れの中の菌が温存されてしまったり、かえって汚染を拡げてしまうことがあります。

 不十分な洗浄のまま除菌作業をした場合と、洗浄してからの除菌作業を比較した図。洗浄が不十分な場合、汚れが除菌成分の働きを阻害し効果が低下してしまいます。血液や卵などのタンパク質汚れは、洗浄せずに次亜塩素酸ナトリウムを使用すると凝固してしまい落としにくくなってしまうため、洗浄することがポイントとなります。洗浄してから除菌作業を行うことで、除菌成分を菌まで届かせることができます。

 不十分な洗浄のまま除菌作業をした場合と、洗浄してからの除菌作業を比較した図。洗浄が不十分な場合、汚れが除菌成分の働きを阻害し効果が低下してしまいます。血液や卵などのタンパク質汚れは、洗浄せずに次亜塩素酸ナトリウムを使用すると凝固してしまい落としにくくなってしまうため、洗浄することがポイントとなります。洗浄してから除菌作業を行うことで、除菌成分を菌まで届かせることができます。

 不十分な洗浄のまま除菌作業をした場合と、洗浄してからの除菌作業を比較した図。洗浄が不十分な場合、汚れが除菌成分の働きを阻害し効果が低下してしまいます。血液や卵などのタンパク質汚れは、洗浄せずに次亜塩素酸ナトリウムを使用すると凝固してしまい落としにくくなってしまうため、洗浄することがポイントとなります。洗浄してから除菌作業を行うことで、除菌成分を菌まで届かせることができます。


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環境整備における清掃のポイント

 毎日の清掃を効率的に実施するためにはいくつかのポイントがあります。例えば、環境由来の病原体は主にご利用者様やスタッフ様の手指を介して拡がります。清掃の業務を見直すときは手が頻繁に触れる場所(高頻度接触部位・コンタクトポイント)と、手があまり触れない部分(低頻度接触部位)にわけて考え、高頻度接触部位を重点的に清掃しましょう。 

手が頻繁に触れる部分(高頻度接触部位)の清掃

頻繁に手が触れる高頻度接触部位(ドアハンドルやベッドサイドレール、ライトのスイッチ、トイレや洗面所、車いすのレバーなど)は1日1回以上を目安に清掃を行います。目に見える汚染は素早く確実に拭き取り、必要に応じて除菌を行います。

  • ドアハンドルのイラスト

    ドアハンドル

  • ベッドサイドレールのイラスト

    ベッドサイドレール

  • ライトのスイッチのイラスト

    ライトのスイッチ

  • トイレのレバーハンドルや手すりのイラスト

    トイレのレバーハンドルや手すり

  • 車椅子のレバーのイラスト

    車椅子のレバー

スムーズな清掃には除菌剤を配合した洗浄剤が役立ちます。通常であれば汚れを落とす「洗浄剤」と、除菌を目的とした「除菌剤」の2種類のアイテムが必要ですが、除菌剤を配合した洗浄剤なら1本で洗浄と除菌が行えます。スタッフ様の手間が省けるだけでなく、洗剤の取り間違えなどのミスも防げるため、業務効率化につながります。
 
除菌と洗浄が同時にできる除菌洗浄ペーパーを活用すると、より手軽に清掃が実施できます。

除菌剤を配合した洗浄剤や除菌洗浄ペーパーを使用して清掃をするイラスト

除菌剤を配合した洗浄剤や
除菌洗浄ペーパーを活用すると効率的

床など手があまり触れない部分(低頻度接触部位)の清掃

床の清掃は、洗浄剤を用いた湿式清掃が基本です。カーペットなどを敷いている場合は掃除機でごみやほこりを取り除きます。雑巾・モップは雑菌が繁殖しやすいため、洗浄・乾燥をしっかりと行い清潔な状態を保ちましょう。手軽で衛生的に使用出来るフロアワイパーの活用もおすすめです。
 
なお、嘔吐物や血液、排泄物などで汚染されている場合は、次亜塩素酸ナトリウム等を用いた特別な処理が必要です。詳しくは「緊急時の対処 嘔吐物処理の仕方」をご覧ください

フロアワイパーのイラスト

浴室・シャワー室の清掃

 脱衣室の清掃、浴室内の清掃、浴槽の水の交換(非循環式の場合)、残留塩素濃度の測定は毎日行いましょう。なお、残留塩素濃度は0.20~0.40mg/Lに保つことが望ましいとされています。浴室には水あかやせっけんカスなど特有の汚れがあるため、家庭の浴室と同様に浴室用洗剤を使うとスムーズに汚れを落とせます。 
浴室のカビなどが気になる時には塩素系のカビとり剤も有効です。湿気がこもるとカビの原因になるため、清掃後は必ず換気を行いましょう。 
循環式浴槽を使用している場合はレジオネラ菌の発生にも注意が必要です。1週間に1回以上ろ過器を逆洗し消毒するほか、業者へ依頼するなどして自主点検を実施しましょう。

浴室のイラスト

日常的な清掃の精度を高めるためには、清掃の基本をまとめたマニュアルを作成し、またマニュアル通りに実施できているか定期的なチェックを行うことが必要です。
花王プロフェッショナル・サービス株式会社では、介護施設様の感染対策に関する課題を解決するご提案や、オペレーション標準化の為のマニュアル制作支援、講習会・勉強会の実施、トータルコスト削減などの業務改善のご提案をいたします。

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