2020年10月6日更新
介護施設がオンライン面会を取り入れるメリットとは 始め方も紹介
新型コロナウイルス感染防止策として、ご家族との面会を制限している介護施設様が多いのではないでしょうか。ご家族に会えず、健康・精神状態が不安定になっているご利用者様もいらっしゃるかと思います。こうした状況下で、令和2年5月に厚生労働省がオンライン面会の導入を促す通知「高齢者施設等におけるオンラインでの面会の実施について」を発出しました。
本記事では、オンライン面会を行うメリットや始め方、留意点をご説明します。導入事例もご紹介しているので、オンライン面会の導入を検討されている介護施設様はぜひご覧ください。
事例から見る、オンライン面会のメリット
ここでは、すでにオンライン面会を導入している介護施設様の事例をご紹介します。
今回は「介護老人福祉施設エクレシア南伊豆様」「一般財団法人 育生会 介護老人保健施設ユトリアム様」に取り組み状況と効果をヒアリングしました。オンライン面会の実施状況をイメージする材料にしてみてください。
介護老人福祉施設エクレシア南伊豆様の場合
平成30年3月にオープンした介護老人福祉施設エクレシア南伊豆様は、全国初の自治体間連携による特別養護老人ホームです。オープン当初よりICT活用の一環として、杉並区のご利用者様とご家族に向けてオンライン面会を実施しています。
オンライン面会導入による効果
新型コロナウイルス感染拡大の影響で令和2年3月より面会が実施できなくなり、全てのご家族にオンライン面会をご案内したところ、オンライン面会の登録者が増加。ご家族は、画面越しにはなるもののご利用者様の様子が分かり、喜んでおられるそうです。ご利用者様の中には、ご自宅の様子をご覧になり、懐かしまれたりする方やお孫さんやひ孫さんと会話され、表情が明るくなった方もおられるとのことです。
【取り組み状況】
▼開始時期
平成30年3月5日
▼オンライン面会が可能な日時
【平日】9:00~17:00
▼オンライン面会を行っている場所
共有スペース一画と個室
▼工夫していること
ご利用者様とご家族双方に見えやすいようにカメラの位置を考えています。ご利用者様1人での面会は難しいため職員が付き添うようにしており、その際に施設でのご利用者様の様子をお伝えしています。
一般財団法人 育生会 介護老人保健施設ユトリアム様の場合
令和3年4月に開所25周年を迎える一般財団法人 育生会 介護老人保健施設ユトリアム様。包括的なケアサービスやリハビリテーション、医療的な療養が一体化された複合施設で、近年需要が高まっている「ターミナルケア」や「看取り介護」の対応も行っています。
オンライン面会導入による効果
同施設は新型コロナウイルス感染拡大を受け、県の指導に基づき面会を規制していました。しかし、「ターミナルケア」や「看取り介護」を受けているご利用者様やそのご家族などから面会の希望が多く集まり、オンライン面会を導入。ご家族やご利用者様の評判は大変良く、オンライン面会時の双方の笑顔が印象的とのことです。スタッフ様もその結果に喜んでいらっしゃるそうです。
【取り組み状況】
▼オンライン面会の開始時期
令和2年5月中旬
▼オンライン面会の方法
【月曜日~土曜日】10:00~16:00
▼オンライン面会を行っている場所
ご利用者様は個室・談話室などの専用スペース。ご家族が来所される場合、ご家族には1階玄関近くにある会議室・応接室で行っていただいています。
▼工夫していること
通常業務に支障をきたさないよう、オンライン面会は1日3組、1組の所要時間は約10分と制限させていただいています。導入直後は、支援相談員・施設ケアマネージャーが中心となって行っていましたが、特定の職員の負担軽減を図るために現場職員にも協力を求め、施設全体で取り組んでいます。
オンライン面会を始めるには? 留意点も
では、実際にオンライン面会を始めるには何を用意すると良いのでしょうか。ここでは、オンライン面会を実施する上で準備したいことと留意点をご説明します。
機材・ツールなどを準備する
オンライン面会を始めるには、まずパソコン・タブレット・スマートフォンといった端末と、ビデオ通話機能が搭載されたツールの用意が欠かせません。
端末については、施設で保有しているもの、スタッフ様専用のもの、ご利用者様専用のものなどがあるかと思います。スタッフ様やご利用者様の端末を使用する際は、所有者に同意を得るようにしてください。パソコンやタブレットの場合、ご利用者様・ご家族の顔が比較的大きく見えるため、スマートフォンと迷っている方はディスプレイが大きいものを利用すると、より喜ばれるかもしれません。
オンライン面会で使用する端末が決まったら、ビデオ通話機能が搭載されたアプリやビデオ電話システムを用意しましょう。中には、無料で使えるものもあります。自施設にとって使いやすいツールを選んでください。
環境を整える
オンライン面会は他のご利用者様・スタッフ様の声や生活音などが入りやすいため、実施する場所によっては声が聞こえづらくなることがあります。他のご利用者様が大勢いらっしゃる場所や人通りが多い場所といった雑音が入りやすい部屋は避け、静かな環境を用意しましょう。難聴のご利用者様がオンラインで面会される場合は、パソコンに接続できるスピーカーを使用すると、よりスムーズにご家族との会話を楽しめるでしょう。
また、ご利用者様の表情が画面によく映るよう、暗い場所や逆光は避けてください。通信環境が悪いと、顔がはっきり映らなかったり、声が途切れたりすることもあります。「有線LANケーブルを使う」「ルーターの近くで行う」など、安定した通信環境をつくることも大切です。
オンライン面会のマニュアルを配布する
オンライン面会を初めて利用される方が迷わないよう、あらかじめオンライン面会のマニュアルを作成し、配布しましょう。マニュアルは「スタッフ様用」「ご利用者様とそのご家族用」の2つを用意すると、親切です。
【マニュアルに記載したい内容例】
オンライン面会を行う際にご家族が使用する端末は、ご家族に準備していただくのか、施設所有の端末を貸し出すのかを決めておくことも重要です。インターネット接続が可能な端末を持っていないご家族もいらっしゃるため、ご家族の端末の使用を前提に進める場合は、あらかじめご家族に「ご自身でインターネット接続が可能な端末をご準備いただける方に限ります」といったおことわりを入れておきましょう。
感染対策を行う
新型コロナウイルスなどの接触感染を防ぐため、タブレットなどの端末に触れる前には手指消毒を行います。また、端末の消毒もしっかり行いましょう(※)。
ご利用者様にスタッフ様が付き添う場合は、飛沫感染防止のため、1メールほど距離を空け、画面の方向に向かって横並びに座りましょう。マスクも忘れずに着用します。
プライバシーを守る
他のご利用者様・スタッフ様に会話内容が聞こえないよう、個室で行う、共有スペースで行うときはパーテーションで仕切るといった配慮が大切です。
スタッフ様がご利用者様に付き添う場合はご利用者様とご家族の会話を聞くことになるため、個人情報保護の観点から、あらかじめご家族に同意を得ることをおすすめします。ツールによっては、セキュリティやプラバシーの問題が発生しているものがあります。万一の情報漏えいリスクを考えて、ご利用者様とそのご家族に確認を取っておきましょう。
自治体によっては補助金交付も
自治体によっては、新型コロナウイルス感染症対策としてオンライン面会を導入した介護施設様に対して、補助金を交付しています。ただ、補助金交付の対象となる施設・経費や補助率、補助限度額などは自治体ごとに異なります。くわしくは各自治体のホームページをご覧ください。
例えば、鳥取県の場合は以下のように決められています。
対象高齢者施設
介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、認知症対応型共同生活介護、
有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、軽費老人ホーム、養護老人ホーム
補助対象経費
タブレット端末・スマートフォンなどのハードウェア、ソフトウェア、マイク・ヘッドホンなどの購入費、Wi-Fi環境を整備するために必要な経費(配線工事、モデム・ルーター、アクセスポイント、システム管理サーバー、ネットワーク構築など)、施設内にオンライン面会コーナーを設ける場合にはパーテーション設置費など、オンライン面会を実施するために必要な経費(消費税及び地方消費税は除く。)
上記補助対象経費に対応した経費(消費税及び地方消費税は除く。)
(申請年度に支出する経費に限る)
補助率
10/10
補助限度額
1施設あたり10万円
ちなみに、記事の冒頭で触れた厚生労働省の通知文によると、地域医療介護総合確保基金のICT導入支援事業(介護施設・事業所を対象)により導入した端末をオンライン面会に使用しても問題ないようです。ICT導入支援事業についてくわしくは、各自治体にお問い合わせください。
オンライン面会を始めるとなれば、端末やツール、環境の準備などが発生します。通常業務との兼ね合いを考慮しつつ、本記事で紹介した内容も踏まえて、オンライン面会の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
執筆:花王プロフェッショナル業務改善ナビ【介護施設】編集部
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