コラム

2021年11月22日更新

浴室が介護事故の現場に…入浴介助中の事故を防ぐ方法

入浴を楽しみにしているご利用者様が多い一方で、浴室は「溺水」や「転倒」などの事故が起こりやすい場所です。

そこで今回は、入浴介助中の事故発生を防ぐため、浴室で起こり得る事故の原因や予防法をご紹介します。

 
冬は高齢者の入浴事故が起きやすい

冬の間は入浴中の高齢者の溺水事故が発生しやすい傾向があり、入浴介助を行う際は特に注意が必要です。消費者庁の発表によると、高齢者の入浴中の溺死または溺水による死亡事故は、1月をピークに11〜4月の間で多発しています。

寒い季節になると脱衣室と浴室・浴槽の温度差が大きくなることから、体調が変化しやすくなり事故につながってしまうのです。

1年間の死亡者数も毎年高い水準で推移しており、2019年は4,900 人もの高齢者が浴槽での溺水によって亡くなりました。2008年の 3,384 人 と比較すると、約 10 年間でおよそ1.5 倍に増加しています。

入浴は身体を清潔に保つだけでなく、日々の楽しみの一つとして捉えている方も多くいらっしゃいます。ご利用者様が安心・安全に入浴できるよう、冬を迎える前に事故が発生する原因や対策を知っておくことが大切です。

 
浴室で注意すべき事故・けがの種類

ご利用者様の入浴中に起こる主な事故の種類は「溺水」「転倒」です。また浴室では「外傷」や「熱傷」のけがが起きやすくなってしまいます。それぞれどのような原因によって発生するのでしょうか。

浴室で起きやすい事故

まず、浴室で溺水・転倒が発生する主な原因について解説します。

溺水

高齢になると血圧を正常に保つ機能が低下するため、寒暖差により急激な血圧の変動があると脳内の血流量が減り、意識を失うことがあります。これが浴槽内で起こると溺水事故につながる可能性が高くなります。また、水中では身体のバランスを取りづらいことから、姿勢が崩れたまま入浴を続けることで溺れてしまうケースもあります。

転倒

脱衣室や浴室は床が濡れていることが多いため、普段の生活では足腰に不安がない方でも足を滑らせて転倒してしまうことがあります。スタッフ様や他のご利用者様など大勢が集まることで混雑し、人や物にぶつかって転んでしまうケースも珍しくありません。また、脱衣室と浴室、浴室と浴槽などを行き来する際に温度差が激しいと、めまいや立ちくらみなどが起こり、体調の変化から転倒につながることもあります。

浴室で発生しやすいけが

次に、浴室で外傷や熱傷が発生する主な原因について解説します。

外傷

高齢者の皮膚は表面が薄く弾力性に乏しいことから、入浴するとふやけて皮が剥がれやすい状態になります。さらに入浴中は衣服などの身体を保護するものがないため、わずかな接触によって怪我を負うことがあります。

熱傷

外傷の中でも、浴室という場所で起きやすいのが熱傷です。高齢者は温度に対する感覚が鈍いため高温の湯でもつかってしまい、身体の広範囲に熱傷を負ってしまう場合があります。また、熱さを感じても突発的に身体を動かすことが難しく、熱湯に触れる時間が長くなってしまうことも熱傷を負う原因の一つです。

 
入浴介助時の事故を防ぐには

浴室は、食堂や居室などと比較しても特殊な環境であることを踏まえ、相応の事故対策を講じる必要があります。入浴介助時は人数配置や環境整備などあらゆる面から対策を講じ、事故が起こるリスクを少しでも減らすことが大切です。

常に1人以上のスタッフ様がご利用者様を見守る

まず大前提として、入浴準備から入浴後にかけてご利用者様から目を離さないようにしましょう。数分でも他のことに意識を取られると、その間にご利用者様の体調が変化して事故につながる危険性が増します。

例えば、スタッフ様がご利用者様から離れる要因としてよくあるのは「入浴に必要な物を忘れてしまい、居室などに取りに帰るため」です。この場合は、ご利用者様を脱衣室に連れていく前に忘れ物がないか確認する仕組みを作ることが重要でしょう。

脱衣室・浴室の環境整備

床が滑りやすくなっている、手すりが十分に設置されていないなど、脱衣室や浴室の環境が原因で事故が発生することもあります。まずは、ぬめりによって転倒しないように脱衣室や浴室をしっかり清掃するなど、事故防止のためにできることを行いましょう。さらに以下のように入浴設備を改善することも事故のリスク軽減につながります。

  • 脱衣室を広くする
  • 着脱用の椅子を設置する
  • 浴室と脱衣室の段差をなくす
  • 浴槽をまたぎやすい高さにする
  • 床を滑りにくく加工する
  • 手すりをつける
  • 使いやすい水栓金具をつける

入浴前の対策

入浴前は血圧や体温などご利用者様の体調を念入りに確認しましょう。もし体調が悪いときは入浴を見合わせます。空腹時や食後すぐの入浴も貧血や体調不良を招くため、控えてください。脱水予防として水分補給を促すことも大切です。

また、室温差による血圧の激しい変化を防ぐため、あらかじめ脱衣室と浴室を同程度の温度にしておきましょう。さらに、入浴後に必要な着替えやクリームなどをセットしておくと、湯上がり後に暑い脱衣室に長居しなくて済み、転倒や外傷などのリスクを減らすことができます。

入浴中の対策

入浴中は転倒防止のため、身体を動かすときはご利用者様に声がけするようにしましょう。シャワーや浴槽のお湯の温度はスタッフ様が先に手で確認するようにし、ご利用者様が熱傷を負わないように気を付けることが大切です。さらに溺水を防ぐために、お湯は浴槽いっぱいに張らず、10分以上の長湯はしないようにしましょう。入浴時間が長くなるとのぼせの原因になります。身体を泡洗いするなどして時短を心掛けることも大切です。

泡タイプの全身洗浄料の例

機械浴の場合はストッパーを点検した上で車輪が固定されているか確認し、身体を横向きにする場合には必ず側面の安全柵を立てるようにします。シャワーキャリーを使用する際も、安全ベルトの点検を欠かさずに行いましょう。

入浴後の対策

湯上がり後は、入浴前と同様にご利用者様の気分や顔色をチェックし、異常がないことを確認した上で水分補給を行いましょう。入浴によって乾燥しやすくなっている皮膚はクリームなどで保湿し、しっかり保護してください。

入浴後のスキンケア
ボディローションの例

 「ソフティ 薬用ミルクローション」の商品画像。セラミド機能成分配合。

入浴介助は日常的に行うケアですので、業務に慣れるとつい「このくらいは大丈夫だろう」と気がゆるむ瞬間があるかもしれません。しかし、少しの油断が原因で大きな事故につながってしまいます。ご利用者様に安心して入浴を楽しんでもらうために、スタッフ様による日々の心がけと設備・仕組みによる対策を行うようにしましょう。

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