コラム

2022年2月15日更新

介護現場のためのハラスメント対策~相談しやすい環境のつくり方

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監修者プロフィール/種市 康太郎(たねいち・こうたろう)
桜美林大学リベラルアーツ学群教授、領域長(人文)
早稲田大学第一文学部心理学専修を卒業後、同大学院に進学し、博士(文学)。早稲田大学文学部助手、聖徳大学講師・准教授、桜美林大学准教授を経て、現職。専門分野:臨床心理学、産業精神保健、産業ストレス研究。日本公認心理師協会常務理事、日本産業ストレス学会常任理事、日本産業精神保健学会理事。東京医科大学客員講師、静岡大学大学院および大妻女子大学大学院非常勤講師。臨床心理士、公認心理師、精神保健福祉士、キャリアコンサルタント。約25年以上前から企業のストレス調査、カウンセリング、メンタルヘルス研修、復職支援等を担当。著書に、『産業保健スタッフのためのセルフケア支援マニュアル―ストレスチェックと連動した相談の進め方―』(共編、誠信書房、2016年)、『人事のためのジョブ・クラフティング入門』(共著、弘文堂、2021年)。

令和3年度介護報酬の改定内容に「ハラスメント対策の強化」が挙げられていることから、これからハラスメント対策への取り組みを強化しようとお考えの施設様も多いのではないでしょうか?コラム「弁護士が解説!介護施設のこんなトラブルにご用心【第3回】介護現場でのセクハラ・パワハラとその防止について」では、ハラスメントの前兆を早期に発見する仕組みが重要とご説明しました。厚生労働省が公開している「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」では、ハラスメント対応として事業者が取り組むべきことの一つとして「報告・相談しやすい窓口の設置」が挙げられており、スタッフ様が相談しやすい環境をつくることが重要視されています。
 
そこで今回は、厚生労働省の令和2年度「職場のメンタルヘルスシンポジウム」*1の基調講演の内容を参考に、同シンポジウムで基調講演をされた種市康太郎氏監修のもと、相談しやすい組織体制を整えるための方法についてご説明します。

介護報酬改訂での「ハラスメント対策の強化」とは?

2021年度の介護報酬改定では、すべての介護サービス事業者に対して、男女雇用機会均等法などにおけるハラスメント対策に関する事業者の責務を踏まえハラスメント対策を求めると規定されました。
 
職場におけるセクシュアルハラスメントについては男女雇用機会均等法で、パワーハラスメントについては労働施策総合推進法で、事業者の方針などの明確化や相談体制の整備などが義務付けられています(パワーハラスメントについての義務付けは、中小企業の場合、2022年4月1日から施行)。

介護施設で起こるハラスメントの例

介護施設の現場では、どのようなハラスメントが起こるのでしょうか。スタッフ様間のハラスメントとご利用者様やご家族からのハラスメントに分けていくつか例をご紹介します。

スタッフ様間で起こるハラスメントの例

  • 雇用契約の範囲を超えた大量の仕事を任される
  • 仕事のミスについて長時間叱責される
  • ご利用者様や他のスタッフ様に、自分に関する根拠のない噂を流される

ご利用者様やご家族によるハラスメントの例

  • 頭や腕を叩かれる
  • 「この程度はできて当然」と理不尽なサービスを要求される
  • 入浴介助中にあからさまに性的な話をされる

ハラスメントを受けたスタッフ様は、誰でもすぐ管理者様に相談できるわけではありません。「自分さえ我慢すれば事態が収まる」「自分が未熟だから仕方ない」と考えて、一人で問題を抱え込む場合もあります。そのため、ハラスメントを受けてもすぐに相談できるような職場の雰囲気をつくることが大切になります。

相談しやすい職場環境をつくる重要性

ハラスメントに関して悩みを抱えた際の相談先としては、カウンセラーや産業医、行政の相談窓口など多数ある中で、なぜ職場内で相談しやすい環境をつくることが重要なのでしょうか。その背景について解説します。

悩んだときに専門家に相談できる人は少ない

悩みを抱えたときに直接カウンセラーや産業医に相談する人は少数派です。厚生労働省の調査*2によると、ストレスを相談できる相手としてよく挙がっているのは「上司・同僚」と「家族・友人」です。悩み相談やメンタルケアの文脈では「困ったら専門家に相談してください」とよく言われますが、些細な悩みは相談しにくいと感じるなど、ハードルが高く感じられてしまうことも多いでしょう。

心理的な事情でSOSを出せないこともある

もともと、自分の弱みを素直に吐くことが苦手で周りに相談できない方がいます。問題が深刻になりすぎて相談する気力すらない場合や、悩みを話すことで自分の非を責められるのではないかと不安に感じている場合もあります。また、ハラスメントを受けて強いストレスを感じ、相談先を探すエネルギーすら残っていない場合もあります。だからこそ悩みを抱えている方に行動を促すだけでなく、あらかじめ職場で相談しやすい環境をつくりSOSを出しやすくすることが重要です。

相談しやすい環境をつくるには?

では、相談しやすい職場環境をつくるためにはどうしたらよいのでしょうか。相談をためらう心理を考慮した上で大切なポイントをご紹介します。

相談の仕組みをつくる

スタッフ様がハラスメント被害を報告しやすくなるためには、「ハラスメントを受けたら相談しましょう」と発信するたけでなく、相談の仕組みをつくって話し出せる機会を増やすことが重要です。例えば、以下のような取り組みが役立ちます。

  • 定期面談を設ける
  • メンター制度を導入する
  • ハラスメントに関する研修・教育を行う

また、ハラスメントの未然防止策や発生時の対応をまとめたマニュアルを整備することも仕組み化の一つです。マニュアルは、ハラスメントの状況を把握するためのアンケートなどを実施し、その結果を活用して定期的に内容を改善しながら運用しましょう。

管理者様・リーダー様のマネジメント力を鍛える

悩みを抱えたスタッフ様が自発的に相談できるようにするためには、ユニットリーダーや介護リーダー、フロアリーダーのマネジメント力を鍛えることが重要です。管理者様・リーダー様自身が適切な部下対応の仕方を身につけることがハラスメントの予防に繋がります。
 
まずは、相談しやすい雰囲気をつくるために管理者様やリーダー様がしたほうが良いこと、してはいけないことを確認してもらいましょう。

〈したほうが良いこと〉

  • 聴く姿勢を作る
    仕事の手を止めて相手の方向に体を向ける
  • 最後まで聴く
    相手の話しを遮らずに最後まで聴く
  • 問いかける
    リーダーの意見ばかり言うのではなく、「○○さんはどう思う?」と問いかける

〈してはいけないこと〉

  • 具体的な対策をとらない
    スタッフ様に明らかに負担がかかっている状況で、話を聞くだけで行動を起こさない
  • 責任を問い詰める
    「なんでできないんだ」と責任を求めるばかりで、助け舟を出さない
  • 指示があいまいで、よく変わる
    「適当にやっておいて」と言って、適当にやると怒る

また、施設内で部下の指導について話す機会はあまりないため、管理者やリーダーとして部下にどのような良い行動をしているか、他のマネジメント職の方と話して情報交換できる機会を設けることも大切です。

職場全体のコミュニティ力を高める

スタッフ様が一人で悩みを抱え込まないようにするためには、管理者様やリーダー様だけがハラスメントメント対策の負担を背負うのではなく、職場全体で相談しやすい雰囲気づくりに取り組むことが大切になります。メンター制度を導入する、健康推進チームを作るなどして、スタッフ様を巻き込んだハラスメント対策を行いましょう。
 
ハラスメントの行為者とされる側も多忙な状況で負担やストレスを抱えている場合もあります。職場全体が支え合う仕組み、人を育てる仕組みを計画的に作ることも大切です。

ハラスメントを洗い出していく動きも大事

相談の仕組みをつくったりマネジメント力やコミュニティ力を高めたりしても、相談する勇気や気力が持てないスタッフ様も少なくありません。そのような場合であってもハラスメントを見逃さないためには、職場で実施したアンケートの結果などを参考に管理者様やリーダー様から悩みを抱えていそうなスタッフ様に声をかけて、ハラスメントの実態を洗い出すことも重要です。

まとめ

スタッフ様が悩みを打ち明けやすい職場にするためには、職場全体で課題を解決していける雰囲気づくりを行い、相談するハードルが下がるような考え方を浸透させることが大切です。

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